手のひらに載せられる小さな包み

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気温は下がったはずなのに、湿度の高さにうんざりする夜。

エアコンの除湿を点けると寒いし、どうしたものやら…

寝不足が仕事に悪影響を及ぼすのを持て余しながらも、夜は更けていきます。

 

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いわゆるクレーマー対応をしている患者さんの部屋で、本来ならモップで水拭きをしない

ベッド下の床を拭かなければならなくなって、数日が経ちました。

 

別の患者さんのゴミ箱がジャングルになっているのもあり、本来の作業時間を

15分以上はオーバーしている状態が続きます。

 

残業代は出ません。

だから先輩のパートさん達も時間内で終わらせることに必死で

仕事が終わると、人の気配の無くなった休憩室にトボトボと戻ります。

 

知らず、ため息が漏れるような日々を送っていたところ

件のクレーマーの女性の態度が、少し変化してきたような気がします。

 

昨日、ベッド下を拭き終わって

失礼しました

と部屋を去ろうとしたところ、作業中はずっと無言だったその女性が

ちょっと待って

と呼び止めました。

 

そして傍らにあるテーブルに載っていた袋に手を突っ込み、掴んだものを

これ

とだけ言って、私の前に差し出しました。

 

受け取ってみると、それはべっこう飴が3粒。

 

それ、中身が紙にくっついちゃって、面倒だからあげるわ

そう言うと患者さんは、再び背を向けてごろりと寝返りを打ちました。

 

態度は素っ気ないのですが、明らかに最初にクレームがあったときより

軟化しているような気がするのです。

最初の頃はいかにも怒りを買っている雰囲気があって、長居するのが辛かったのですが…

 

その後、休憩室で飴を舐めようと、包んであるセロハンを開こうとしたところ

本当にくっ付いていて、なかなか剥がれませんでしたが。

 

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最後まで読んで下さって、ありがとうございました

 

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