時間の陥穽337
20世紀を迎えて物理科学では相次ぐ発見、其れを踏まえての、新しい物理理論が展開されます。其れまでの「真空」の概念であった、空間にあって何ものも無い「真空」の概念が、古史の唯物観から近代物理学、17世紀にトリチェリらによって発見された真空。何もない無(ゼロ)の世界の真空が、イギリスの物理学者P・A・M・ディラックは「ディラック方程式」とよばれる、電子を記述する新しい相対論的運動方程式を導き、真空が電子の充満した負エネルギー状態であることを導き出します。此れは真空に外部からエネルギーを注入しさえすれば、電子が正エネルギーに励起され飛び出してくることを意味します。負電荷の電子が飛び出した後には正電荷の穴があく。まさにこれが陽電子なのです。喩え宇宙が仮相のエントロピー飽和「真空」なのだとしても、何某らの、力の作用があれば電子が正エネルギーに励起され飛び出してくることを意味します。負電荷の電子が飛び出した後には正電荷の穴があく。まさに、これが陽電子なのです。何もない無(ゼロ)の世界の真空が、20世紀の物理科学は、其れまでの通念、空間にあって何ものも無い「真空」も驚くべきことに、実は外部エネルギーを注入することで粒子を生み出すダイナミックな世界、詰まりは、「時空」であることが解ったのです。此のことから導かれるのは、大凡、此の宇宙世界において。何も無い空間はなく、空間ある限り何らかのエネルギーに満たされていることになります。仏教哲学に云う「空」を想わせます。
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