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カテゴリ:SF小説
奇跡の4B 文字が消えて 8人の目が大きく見開かれた! 「文字が・・・」口火を切ったのはバッハだった。その先を続けたのはブルックナーだった。 「光って・・・どんどん消えていく・・・」 ウェ―ルズ国王が、ブルックナーの言葉を肯定して言う。 「そう、方程式の数字や記号が光って消えていく。それでいいんだ・・・池の水に「願いの紙」を浸した時、書いてある文字が光って、そして消える。それこそ願いが叶う証なのだからね」 思いもよらない言葉に、全員が目を見開いて国王を凝視した。それはモーツァルト侍従長でさえ知らなかった王家の秘法なのであるから、誰もが驚くのは当然の反応だった。 一番驚いたのはモーツァルト侍従長なのかも知れない。 (そのような王家の秘法を我々の前で明かしてよいのですか?・・・ウェ―ルズ国王はそれほどまで我々を信じて胸襟を開いてくださったのか!) 「さあブルックナー君、すべての文字が消えてしまった紙を残らず拾い上げてくれないか」 そう言ったのはウェ―ルズ国王だと、気付いたブルックナーは慌てた。ウェ―ルズ国王に直接声をかけられるのは初めてのことであるし、その上、用を言いつけられることも初めてのことなのだから慌ててしまうのは仕方のないことだ。 ブルックナーは、たった今国王から直に聞いた王家の秘法を我知らず頭の中で反復させて聴いている。理解できたのか、そうでないのか?自分自身に問い続けているのだ。 それでもちゃんと身体は動いている。国王に指示された事、池の中で文字が全て消えてしまった紙から順に拾い上げていく。いつの間にか側に来ていたバッハたちが手渡しでブルックナーの手から紙を受け取り、国王の元へ運び届けている。 国王は、それらを笑みを浮かべて受け取りながら、紙面を確認している。 やがて最後の一枚が王の手元へ届き、確認された。 王は満足げに大きく頷き、束ねられた紙を右手に掲げた。 「全ての文字が消えている・・・我が王家に伝わる『願いの叶う方程式』は、膨大な量である。従って間違いがあってはならない。悪しき欲望が潜んでいてはならない。 この池の水は、そのような間違いを見つけ防ぐ役を果たす。つまり、地上において利用されているインターネットのセキュリティと同じようなものだ。 今、ここにある紙は、どれも全ての文字が消えている。全ての方程式に間違いは無かったということになる・・・さあ、君たちの姿を池の水面に映してみてご覧・・・今、私が言ったこと、それはこの度の『奇跡の旅』の準備が、本当に整ったのか?ということ。それが分かるはずだよ」 アメリアをはじめ、全員が恐る恐る池の淵に集まって水面に映る我が姿を覗き込んだ・・・。 今日の好きな曲は、 The Beatles - While My Guitar Gently Weeps. Thank you TheBeatles♪for up this song. いつも応援ポチをありがとうございます。 今日もどうぞよろしくお願い致します♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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