【本】FIRE 最速で経済的自立を実現する方法/グラント・サバティエ(朝日新聞出版)

投資・マネー

正月に購入して以来、その面白さにむさぼるように読み、ほかの積読が溜まっているにも関わらずすかさず2順目に突中するなど、久しぶりに夢中になった一冊をご紹介します。

「FIRE」・・・Financial Independence(経済的自立)とRetire Early(早期リタイア)の頭文字で、雇われ仕事をすることなく不労所得だけで毎年の生活費を賄えるよう貯蓄と節約に励み、できるだけ曽早くリタイアしようとする考え方。お金の悩みから解放され、お金のために働く必要が無くなること。

(本書イントロより)

若者(多くは20代)があらゆる支出を切り詰めて可能な限りの倹約に努め、収入の大半は投資に回し、20代後半から30代前半での早期リタイアを目指すFIRE。

定年まで勤め上げ(大半は60代以降)、その後は退職金と年金で悠々自適な老後生活を過ごす、という従来型の人生設計やリタイアの概念を持つ人には奇異に映り、到底受け入れ難い生き方に思うかもしれません。そしてこうも思うでしょう、「そんなこと実現不可能だ」と。

しかし、これは海外に限った話ではなく、最近ではブログ「三菱サラリーマンが株式投資で早期リタイア目指してみた」で著名な三菱サラリーマンさんがまさにFIREを実現され、会社を辞めました(三菱サラリーマンさんは7,000万円の金融資産を築き、実際に30歳で会社を退職されました)。

日本でもFIREは決して実現不可能な”夢”なんかではない証左です。

人はお金と引き換えに限りある人生の時間を切り売りして生きています。彼らが目指すのは、1日も早い経済的自由の獲得であり、誰からも搾取されず、ひいては束縛を受けない自分だけの時間の獲得です。

FIREの要点は、①如何にして収入を増やすか(収入の最大化)、②支出をどのように切り詰めるか(支出の削減)、そして ③どう運用するか(資産運用)の3点だと思いますが、この本の中では、特に ①収入の最大化 と ②支出の削減 に多くのページが割かれています。

しかし、それ以上に心に深く残るのはFIREに対する根底の考え方です。

3ドルのコーヒーで自由までの時間が16分40秒早まること、30ドル貯めるたびに経済的自由が1時間手に入ることなど、トレードオフの関係とお金と時間を相互に換算して、その物事にそれだけの価値があるかを読者に問い掛けます。

また、買う前に意識すべき11項目についても大変有用です。人は安価なモノほど意識せずに購入する傾向にあります。目を通すだけですっかり衝動買いをしたいとは思わなくなるでしょう。

  1. この買い物はどれほど私を幸せにしてくれるのか?
  2. これを買えるようになるには、いくら稼がなければならないのか?
  3. これを買えるようになるために、人生の何時間を差し出しているのか?
  4. それを買う余裕があるのか?
  5. %で見ると価格はどれくらい違うのか?
  6. 安く仕入れたり、自分のものと交換して手に入れられないか?
  7. 便利さと引き換えに、いくらお金を払っているのか?
  8. 毎年、もしくは亡くなるまでに、これに係る費用はいくらか?
  9. この商品の1回あたりの費用はいくらか?
  10. そのお金は将来、どれくらいの価値になるのか?
  11. この貯蓄によって未来のどれくらいの時間(自由)を買っているのか?

コーヒー、ファストフード、ファストファッション、ジムの会費・・・、果たして人生の貴重な時間と引き換えにお金を費やすだけの価値が果たしてあるでしょうか。

また、FIREを目指す人は、複利のメリットをよく理解しています。老後への備えとして必要とされるお金も、若いうちから蓄え始めればずっと少ない額で済みます。なぜなら毎年複利効果でどんどんと増えていくからです。

彼らは72の法則で、株式に投資をすれば(インフレ調整後の期待リターンは7%)10年で倍になることを知っています。そのため、1ドルでも多くの現金を得て、無駄に浪費することなく投資に回し、少しでも多くの収入を得て頻繁に投資をしているのです。

こうして著者は、2010年(当時25歳)に所持金2.26ドルからたった5年で125万ドルの資産を築き、経済的自立を手に入れました。

信念と小さな積み重ねが資産を加速度的に増殖させて達成しましたが、些細なお金も時間に換算することで理論的に考えることで大きな後ろ盾にしていたことでしょう。

ちなみに、③資産運用 に関する手法についてはあまり触れられていません。具体的な銘柄選定方法などもなく、インデックスファンドに投資することを推奨し、余計なリスクや時間をかけずにどんどん投資に回していくべきと説きます。

つい成功者の投資手法が気になってしまいますが、インデックスファンドで十分FIREを達成できることを体現しており、FIREに小手先の投資テクニックなどは不要であること、FIREは誰にでも実現可能であることを証明しています。

一方、テクニカルな手法での投資運用による資産の増大や、節約・倹約による支出の切り詰めではどうしても限界があり、FIRE達成には収入を最大限に増やすことが最も重要であることを実感します。これが一番難しいのですが・・・。

既に人生の中盤、もしくは折り返しを迎えた人が読んだら、拒絶反応を起こすかもしれません。40歳手前の自分が読んでも、これまでの既成概念を崩されると共に、もっと早く読みたかったと思わずにはいられませんでしたから。

20代にこの本に巡り合っていれば、また違った風景が見えたかもしれません。

ただ、早期リタイアとはいかずとも、随所に生活を見直すきっかけが散りばめられており、読む価値は大いにあります。そして何より、自分が今生きているこの時間は有限であり、誰からの搾取も許すべきではない尊い時間であることを再認識するはずです。

「定年前の早期リタイアなんて若い頃から必死で貯め込んだ小金持ちの道楽」そんな風に斜に構えていた人も、この本を読めば急に現実味を帯びてきて、自分もやってみたいという気にさせてくれるでしょう。

自分はこれを読んで、死ぬ瞬間に「他人が期待する人生ではなく、自分自身に正直な人生を送る勇気を持つべきだった」なんて思わないように自問自答しながら生きたいと思いました。

いずれ息子にも読ませたい一冊。これから働き始める若い人にはどうか自腹を切って買って読んでもらいたい。きっと常にそばに置いて繰り返し読みたいと思える、人生のバイブルになるはずです。

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