「今のわたしだけ見たら、

　ものすごく恵まれていると

　思っているでしょ」

 

 

 

美人な彼女は、

ちょっと目を潤ませて

そう言った。

 

 

彼女が言うように、

経営者のご主人が相当稼いで、

その横でお小遣い稼ぎを

しているものと思っていた。

 

 

 

「うちの旦那は高卒で、

　わたしが高卒の人と結婚するなんて

　夢にも思ってなかったし、

　結婚した当初、

　彼は工場で働いてたの」

 

 

 

 

もちろん高卒や、

工場で働くのが悪いという

訳ではない。

 

しかも、彼女はそういうことを

人前で言うタイプでもない。

 

 

 

ただ、少しお酒が入っていたのと、

隣に幼馴染がいたので、

そういう言葉がポロッと

出てしまったのだろう。

 

 

 

「でも彼には自分で経営するっていう

　夢があったから、

　わたしもその夢を応援しようと

　思って結婚したの」

 

 

 

言葉だけを聞くと、

気の強い女性を

イメージしたかもしれないが、

30歳を少し過ぎた彼女は、

癒やし系の美人だ。

 

 

 

「でも結婚しても

　一向に独立しようとしないので、

　お金のことは心配しないでいいから、

　早く夢を叶えてって背中を押したの」

 

 

 

聞けば毎日、

褒めて、

励まして、

笑顔を見せたらしい。

 

 

 

一方で、

起動に乗るまでは、

ご主人は営業で外食しても、

彼女はしょうゆ飯を

食べていたそうだ。

 

 

 

 

そんなことは、

当然と言えば当然だし、

特筆すべきことでは

ないのかもしれない。

 

 

 

 

恐妻家を持つ成功者も

もちろんいるが、

私の尊敬する経営者の横には、

こういう女性がいらっしゃることが多い。

 

 

 

 

ちょっと「あげまんの法則」を

研究してみたくなった。

 

 

 

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