ぶらぶら★アフリック

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スタジアムに響く「マシナボテ〜!」・・・コンゴ大統領選挙を理解するキーワード

2018-10-17 08:30:00 | アフリカ情勢
去る10月13日(土)、コンゴ民主共和国の首都キンシャサのマルティス・スタジアムはアフリカカップサッカー2019の予選。ジンバブエ戦の最中、サポーターのテンションも上がる。そして大合唱がスタジアムに響き渡った。

マシナボテ〜!!

Voice of Congoツイッターより)


マシナボテー、口々に叫んでいる。ん?「ンボテ」とも似ている?リンガラ語?選手の名前?

いやどれも違う。実は彼らが叫んでいるのは、
Ehhh, Toboyi, machine à voter !!

マシナボテーって、コンゴ人が口にするとすごいリンガラ語っぽい響き。でも実はフランス語。machine à voter=「自動投票機」を意味する。

トボイ〜、は?コンゴ人に早速ググってみた。彼女によれば、'toboyi'は、リンガラ語で「拒絶する、否定する」を表す動詞'koboya'の一人称複数一般現在形。つまり'Toboyi, machine à voter !!'とは、「俺たちは自動投票機を拒絶するぜ〜!!」っていう意味だ。サッカー場で何万人のサポーターが、「自動投票機ハンターイ」って、それにしても滑稽な光景だ。実はこの「マシナボテ」が今後の選挙の一つの大きなキーワードになっている。


大統領選挙が12月23日に迫るコンゴ民主共和国。その政局のゴタゴタは本ブログ『ぶら★アフ』特集したとおり。
歴史から見るコンゴ民主共和国・大統領選挙2018の行方(5)〜結末は闇の奥・・・


独立選挙管理委員会(Céni)は、この大統領選挙に'machine à voter'を導入することを決定した。一体どんなものなのか?

メディアに紹介されている実物は、パソコンのタッチパネルのようなもの。画面にタッチすると画面が進行し、投票用紙の画面の進む。
すると候補者の顔がずらっと現れる。そしてタッチ。大統領選挙、州知事選挙、国民議会選挙と画面を推移。最後に投票用紙プリントアウト、投票箱に入れて完了となる。

Afrique la libreウェブサイトより)


「もし候補者の番号を事前に把握していれば、30秒間に3回の投票が可能となるだろう。」独立選挙管理委員会。自信の説明。「故障が起きたらどうするの?」・・・各投票所には予備機が設置され、また技術者が常駐するという。「ええ?電気もまともに通ってない国に?」・・・「10時間の内蔵バッテリーに、24時間の外付けバッテリーを完備。お墨付きですよ。」とCéni。

コンゴの選挙を議論するときに重要な視点は、その広大な国土と、想像を絶するアクセスの悪さだ。なんせアフリカで唯一時差のある国。その国がまともに道路ですら結ばれていない。わずかに整備された幹線道路ですら、国土を一つにつなげていない。その先は、20キロ進むのに1日かかったりする。未開のジャングルの中に暮らすピグミーたち、また東部の紛争継続地帯に身を置く有権者も少なくない。そんな中で、投票所を確保し、いく通りもの選挙に向けた投票用紙を用意し、配置して、回収する。想像を絶するロジスティックオペレーション。金、時間、労力と体力。膨大なエネルギーが必要だ。こういったことから、独立選挙管理委員会'machine à voter'の導入は「今回の選挙スケジュールの通りに選挙を実施する上で、導入は不可欠」と主張する。


他方、大きな危惧が野党、選挙監視団体、そして有権者から挙がる。一体この機械がきちんと作動するのか。票の操作が行われることにつながるのではないか。UDPC、MLC、UNC・・・野党は自動投票機導入の差し止めを厳しく追及する。

そもそも自動投票機導入は突然浮上した話、そして納入するのは韓国企業だが、この選定・調達プロセスの透明性、妥当性を巡っても疑問が渦巻いていた。

人々は「マシナトリシェ?(Machine à tricher: 自動だまし機)」、「マシナボレ?( machine à voler: 自動盗難機)」と大いに揶揄。そして有権者の疑心暗鬼が晴れない夜空に、スタジアムの大合唱「トボイ〜、マシナボテ〜!!」がこだまする。

(つづく)


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