旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

地図のない旅

2019年11月28日 | 旅行一般

地図のない旅

先週、スーパーカブで旅するタイ北部から帰国しました。

 実は今回、いつになくあわただしい出発となったおかげでいくつか忘れ物をしてしまいました。とはいえパスポートや国際免許証は忘れなかったのであとは現地で購入すればよいわけですが、今回、自分にとって案外重要なものが現地では手に入らず少し困惑させられたのでした。

 それは何かというと”地図”であります。
 
 幸い、チェンマイ到着翌日の朝食時に地図を忘れた事に思い至った私は、レンタルバイクの手配に行くついでに今まで地図を買いに何度も立ち寄っている書店へ出向いて地図を買うことにしたのでした。

 ところが書店で探してみても、もはや地図は売っていませんでした。売っているのはどうやら売れ残っているらしいタイ南部の地図や、中国の地図などで、私が必要とするエリアの地図は一切入手できなかったのです。理由は不明ですが、もしかするとデジタルツールの発達で地図の需要がなくなったということなのでしょうか。

 その後も旅を進めていく途中で、ガソリンスタンドに併設のコンビニエンスストアなどで地図を探してみたのですが結局最終日まで満足な地図を見つけることはできませんでした。

 もちろん、非常時に備えてスマートフォンに地図アプリはインストールしてありますし、データ通信が使えない場所でも使えるように必要なエリアのデータはダウンロードしているわけですが、それでできることは目的の行き先へ行くという作業に過ぎません。私の場合、朝、出発前に今日の行程を確認したり、お客様に説明したりするために地図を使う以外に、行程途中で寄り道してみようと思うような場所を見つけたり、あるいは旅先で出会った人に教えてもらったりする時にはより広い視野で全体を眺めるために地図を活用しているので、地図がないと一気に”視野が狭くなった”不便さを感じさせられます。

 スーパーカブで旅するタイ北部を始めてから10年前後になるでしょうか。これはタイだけでなくほかの国でも、日本国内でも、1日の行動を地図でチェックして、暗記して走るスタイルなので、結局はほとんどのルートを暗記しています。それにスマートフォンの地図もあります。だから移動には不自由はありませんが、とにかく視野が狭いのです。私が求めている情報は移動のためのものではなくて旅するための情報。

 思えばスーパーカブで旅するタイ北部も第1回と比べるとルートには大幅な変更が加わっています。その変更も、現地で地図を眺めていた時の発見や現地の人とのコミュニケーションからのルート変更を後のルートに加えて出来上がっています。これはスマートフォンの地図アプリやGPSナビゲーションでは得られない情報です。なぜかというと単純に画面が小さすぎるからです。地図を広げた時に得られる全体像としての情報量は大画面テレビを持参しても実現できない大きさです。

 A地点からB地点へ効率よく移動するうえではデジタルツールは便利ですが、その周辺に散らばっている雑多な情報を入手するうえでは役に立たないということを今回の旅で痛感した次第。そして、デジタルツールは決して地図の代用にはならないということも断言できます。

 仕事であれば効率よくこなすことが何より大事かもしれませんが、旅はそこに至るストーリーが大切だと思うのは私だけではないと思います。地図上に散らばる、自分の目的とは脈絡のない雑多な情報が結局は自分のその時の旅を形作っていくものだということは経験を積めば感じるようになると思います。デジタルツールは自分の必要としている情報、例えばおすすめのレストランとか宿とか、そういうものを多くの情報から検索する機能や、自分が興味を持っている事に対しておすすめしてくれる機能としては年々進化を遂げているのですが、旅というのはそれとは少し違って、自分が今まで興味を感じなかったことに対して新たに興味を持つきっかけを与えてくれたり、思いもよらない出来事との遭遇などが大きな要素を占めるものですから、今の時点でのデジタルツールでは必要な情報を得ることができないというのが私の考えです。

 今までGPSナビゲーションを頼りにしていたツーリングライダーや、その他旅を楽しんでいる方に、やっぱり自分の旅するエリアの地図を手に入れて、旅の途中で時々眺めてみることをお勧めします。そして地図で調べるのではなくて地図を”眺める”事を楽しんでみてください。今日のルートを復習するのもよいですし、明日のルートを予習するのもよいでしょう。そしてその周辺を漠然と眺めてみてください。そこで発見した妙に興味を惹かれる湖や滝や小さな町に足を運んでみてください。そうすればあなたの旅は今までになくオリジナルな旅になります。そういう旅を覚えてしまうと、地図の持つ”視野の広さ”の魅力に気づかされることは間違いありません。

2019年2月&5月スーパーカブで旅するタイ北部参加者募集中







最新の画像もっと見る

コメントを投稿