旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

不便である事の自由

2019年08月20日 | ライフスタイル
 小学校高学年の頃だと思います。実家で飼っていた犬の散歩係だった私。犬と言っても大型犬、本気を出せば小学生くらい簡単に引きずり倒せるパフォーマンスを持った犬だったのに、私本人を含めて誰も子供に散歩させることに不安を覚えていなかったので、それなりに頭の良い犬だったのだと思います。

 春先や秋口、季節の変わり目になると犬の体毛が抜け替わる時期があります。気候に適した衣服に自然と衣替えするだけで冬になっても夏になっても自前の”毛皮”だけで外気の中で生活している犬の姿をみて、常々私は”便利なもんだな”とうらやましくのでした。

 私たち人間はたとえ夏場でも何か着るものが必要ですし、季節の変わり目には片付けてあった衣類を出したり、今まで着用していた衣類を片付けたり、人数分の衣類の入れ替えを行う母親は大忙しになります。犬にはそんな心配は一切ありません。汚れた服を洗濯したりする面倒もありません。お風呂に入るのと洗濯するのは完全一致です。

 ああ、どうして人間はあの便利な自前の”毛皮”を持っていないのだろうか。
 技術が進歩したら、全身に毛が生えて服なんて着なくてよい時代がやってくるんじゃないだろうか。

 そんな事を考えた事もありました。

 もう少し年齢を経て、世界を旅するようになると人間の生息域の広さに驚くようになりました。日本で生活しているうちにはお目にかかれないような自然環境、例えば熱帯のジャングルや、砂漠地帯、北極圏など、確かにそれぞれに何らかの生物は生息してはいますが、それらを跨いで生息しているのは人間を除いて思い当たりません。

 取り巻く環境に自前の”毛皮”で対応できる動物たちに対して、人間は圧倒的に不利なはずなのに結局は広範囲の環境を克服している事実は興味深く思えるではありませんか。

 そんな事を少し考えていて気付かされるのは、もし自前の”毛皮”を持っていたら、その対応範囲に人間の生息範囲も限定されていたのではないかという事です。寒さに対応したホッキョクグマは熱帯の暑さには耐えられないでしょうが、人間の場合は日光を遮る程度の衣類にして生息できます。寒い地域なら温かい衣類を沢山着て自前の”毛皮”が無いことをカバーできます。

 きっと、人間には自前の”毛皮”が無いという不便さのおかげで広範な環境に対処する能力を手に入れたのではないでしょうか。

 人間はそのほかにも日々の不便を解消するための様々な発明や発見を積み重ねて便利な生活を手に入れてきて現在に至っています。便利な生活の中で生まれて育った私たちにとっては日々の便利さは当たり前の事になっていきます。

 日々の生活を離れて、キャンプなどのアウトドアを楽しもうとすると、日々の便利さに依存しきっている自分に気が付かされる事もあります。

 日々当たり前のように周囲の便利さに”依存”している事は、もはや毛皮を持たない人類の自由さを失って、その便利さを享受できる範囲内に自分の生息域を縛り付ける事に結びついてしまってはいないでしょうか。

 便利さがあなたの”自前の毛皮”となって生息範囲を縛ってしまうのか、”重ね着する衣類”となってあなたの生息範囲をもっと広げてくれるものになるのかは、どれだけそれに”依存”しているかに関わっているのだと思います。

 日々の便利さへの執着を一度捨ててみればその便利さに縛られるのではなくて”使いこなす”事につながるのではないかなと思います。一定の期間、あえて日々の便利さに背を向けてみるには旅は一つのとても気楽なチャンスになると思います。

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