『夢想と薔薇の日々 (Days of Rêverie and Roses)』は、あくまでもフィクションであり、実在する人物や事件とは一切無関係です。「夢想」は個人が有する自由な権利ですが、現実は現実としてきちんと区別なさったうえでお読みください。くれぐれも混同されないよう、よろしくお願いいたします。尚、当ブログ内の文章や作品の、無断転載・引用・コピーを固くお断りいたします。


No.1side トシ

「先輩、昼メシ……お忍びでマック行きません?」


いきなり呼び止められて驚いた。


「マック?マクドナルド?」

「はい!」

「何、急に?」

「あ、今日からてりやき系、新メニュー出てるんですよ!」

「へぇー。。。」

マックは特別行き付けというわけでもなかったけれど、『てりやき系の新メニュー』に惹かれた。
期間限定かな。

俺、てりやきはなかなか好きなんだ。

「オーケー、行こうぜ」

後輩クンにこう返事をすると、なんだか心が弾んだ。









ドライブスルーの方が便利だったなと思いつつも、最強に目立たない格好でふたり、混雑する店内に入った。


「何がどうなってるって?」

俺は後輩クンに問いかける。

「えーっと、あれですね、てりやきマックバーガーセットがぁ、普段640円のところ500円になってる

「500円!?」


安っ。


「あとは、旨辛てりやきバーガーっていうのと、卵が入った親子てりやきバーガーっていうのがあるみたい」

「んー、ほんとだ。じゃあ、俺、、、。」


迷った末、無難にてりやきバーガーセットにした。
まずは王道を行くのがいいでしょ。


「これで500円ね。お得感あるな」

「ですね」

「そっちの旨辛っての、どう?すごい辛いの?」

「あ、いや。いい感じの辛さですよ!」

「そっか……」

後輩クンの答えを聞いて、いいことを考え付いた。
旨辛バーガーをヨシキに買っていってやろうって。

あれだけ激辛カレーパンが好きなヨシキのことだ、喜んでくれるだろう。
俺は親子てりやきの方。
俺だけ2食続けてマックになっちゃうけど、まあこんな日があっても、いいよね。
ワクワク、してきたぞ。





No.2side ヨシキ

午後──何時ごろだったかな、もう夕方になりかけの頃。

家の近くのドラッグストアで、トシに頼まれた買い物(別にヘンなものじゃないよ!←ヘンなものって何だ?💦💦)してたのね。
そしたら突然、着信あって。

おれの電話なんて、トシからしかかけれないように設定してあるもん、すっごいうれしかったんだけど、そのときは心臓飛び出るほどビックリしちゃって。

なんでかっていうとね。
これ、トシには内緒だよ?
絶対ね!

おれ、着信音をトシの新曲にしてたんだ。
今日から配信始まった、『残酷な天使のテーゼ』。
それがバーンって初めて鳴ったから、もう驚いちゃって。

「もしもし!ヨシキです♡」

顔がにやけちゃう。

…あ、ヨシキ?何浮かれた声してんの?

「え~~?浮かれた声?残テが初めて…じゃなくてぇ、にゃははは。」

…何をゴニョゴニョ言ってるんだよ?

「ごめん、何でもないの。買い物の途中だから慌てただけ」

…まだ外にいるの?寒いっしょ、早く帰りな。

「うん、もうレジ行くよ」

…今夜ね、ヨシキの好きそうなもの夕食に買ってくよ。お菓子とか食べちゃわないで待ってて。

「わかった!」

…じゃあね。ほんとに早く帰りなよ?風邪引かないように。

「うん……、ありがと♡」

電話を切っても、まだドキドキしてた。
ひとりで笑っちゃってしょうがない。
トシの『残酷な天使のテーゼ』、すっごくすっごく、イイ!
どこを取っても申し分ないよ~、あはは♪

それにしても。
トシが夕ごはん買ってくるなんて、珍しいな~。
なんだろ?
トシも当然いっしょに食べれるんだよね?

風は冷たいけど、携帯の入ったお尻のポケットがポカポカしてて、心はウキウキしあわせだった。
おれはルンルン気分で、家への道を急いだ。

今日はトシの新曲リリースもあったし、本人から電話来ちゃうし、ワンダフルな日だ。
早くトシに逢えますように。



No.3
sideトシ

すっかり遅くなってしまったけど、俺は今にも歌い出さんばかりに上機嫌だった。

帰り際、家にいちばん近いマックに寄った。
今度はぬかりなくドライブスルーで。
ヨシキの旨辛てりやきバーガーと、自分のための親子てりやきバーガーを、それぞれバリューセットで注文した。

俺がこんなファーストフードを夕食にするなんてことはめったにない。
でも何故か、今日はやけに気分が乗っていて。

電話越しのヨシキの声が、とても明るかったからか。
それとも昼間のてりやきバーガーが思いの外美味だったからとか?

もうすぐヨシキに逢える。
俺の金髪の天使。

マクドナルドの袋を渡したら、彼、どんな顔するかな。
思いっきり抱きしめて、キスの嵐にしてやる。

ハッピーな期待に胸踊らせて、俺は家に続く道の最後の角を曲がった。







空は曇っていて、月も星も見えない。


だけど、そのとき俺の心の中には、月よりも星よりも明るく、ヨシキの笑顔が浮かんでいたんだ────。










《END》残テ聴きながらマック食べよう!

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ありがとうございました(*´∀人)