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2024/04/20 04:32 |
第98回 2001年以降の10本はコレだ!21世紀外国映画ベストテン 文学に関するコラム・たまたま本の話
第98回 2001年以降の10本はコレだ!21世紀外国映画ベストテン 文学に関するコラム・たまたま本の話

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クリント・イーストウッドとウディ・アレンとテオ・アンゲロプロスを外して21世紀外国映画を語ることができるか? そしてデイヴィッド・リンチもロマン・ポランスキーもクリストファー・ノーランも枠外に置いて。独断と偏見で選ぶ2001年以降の10本(順不同)。

①わたしを離さないで
監督:マーク・ロマネク 製作:2010年、アメリカ、イギリス
ノーベル文学賞作家、カズオ・イシグロが2005年に発表した同名のSF小説が原作。同じくノーベル賞を受賞したips細胞による先進医療が話題となっている現在、クローン人間による再生医療というテーマはやや古びたか? 否――ここには人間以上に人間らしい心を持ったクローン人間たちによる人類愛という永遠の主題が息づいている。

②ナイトクローラー
監督:ダン・ギルロイ 製作:2014年、アメリカ
1970年代、テレビの過熱する視聴率競争を描く「ネットワーク」という映画が話題になった。現アメリカ大統領が一部メディアを「フェイクニュース」と名付けたように、21世紀ネット社会の報道競争はさらに過激になっている。事件や事故を追って一線を超えるジャーナリスト、ジェイク・ギレンホールの怪演はまさに必見。

③幸せなひとりぼっち
監督:ハンネス・ホルム 製作:2015年、スウェーデン
かつてスウェーデン映画は「神と悪魔」の問題を扱うことが多かった。この映画は、妻を亡くし職も失って、生きる希望をなくした59歳の偏屈で孤独な男の人生を描く。近所に越してきたのはイラン人女性とその家族。完全福祉国家と言われ、社会保障の充実していたスウェーデンも、産業民営化と移民受け入れでずいぶん変貌していることに驚く。

④チェイサー
監督:ナ・ホンジン 製作:2008年、韓国
とてつもない暴力描写と、残虐シーンが続出するナ・ホンジン監督の長編デビュー作。2004年に韓国で起こった連続殺人事件をベースにしている。かつての儒教思想の国、韓国でも観客動員数が500万人を超えるヒット作になったという。21世紀の韓国映画には、他にも「息もできない」(2008年)など、あまりにも過激な秀作が多い。

⑤別離
監督:アスガル・ファルハーディー 製作:2011年、イラン
「コーランに手を置いて真実を述べよ」という映画の中の言葉が、イスラム教徒でない我々にも重く重く響いてくる。本作で第84回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した監督は、第89回アカデミー賞でも「セールスマン」で同賞を再び受賞した。2回目の受賞では、アメリカの移民政策に抗議するため、主演女優らとともに授賞式への出席を見送ったのは記憶に新しい。

⑥バタフライ・エフェクト
監督:エリック・ブレス 製作:2004年、アメリカ
近年のカオス理論のひとつに「バタフライ効果」というものがある。力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の状態が大きく異なってしまうという現象。まさにブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こすようなストーリー展開に圧倒される。練り込まれた脚本が光る。

⑦わたしは、ダニエル・ブレイク
監督:ケン・ローチ 製作:2016年、イギリス、フランス、ベルギー
この映画を見ると、往年のアメリカン・ニューシネマの「怒れる若者たち」が、50年後の現在は「怒れる老人たち」になっていることに気づく。社会派の大ベテラン、ケン・ローチが「どうしてもこれだけは撮っておかねばならない」の思いを込めて作った1本。腕の良い大工が心臓病と認定され、仕事ができないつらさは、日本の労働者である我々も身につまされる。

⑧おみおくりの作法
監督:ウベルト・パゾリーニ 製作:2013年、イギリス、イタリア
ヨーロッパ版「おくりびと」と言えばいいだろうか。監督、脚本のウベルト・パゾリーニがガーディアン紙に掲載された「孤独死した人物の葬儀を行う仕事」に関する記事から着想を得て、ロンドン市内の民生係に同行し、実在の人物や出来事について取材を重ねた末に誕生した作品である。ここでは詳しく書けないが、奇跡のように美しいラストシーンに息を飲む。

⑨その土曜日、7時58分
監督:シドニー・ルメット 製作:2007年、アメリカ
多くの名作を撮り続けたシドニー・ルメットの遺作だが、遺作と呼ぶにはあまりにもエネルギッシュでバイタリティーにあふれた1本となった。父の愛情をめぐる出来の良い兄と、出来の悪い弟のその後のドラマ。一口で言えば21世紀版「エデンの東」である。麻薬に溺れるフィリップ・シーモア・ホフマンの熱演は、やがて彼に実際に訪れる薬物中毒死を暗示していた?

⑩ファイナル・デスティネーション
監督:ジェームズ・ウォン 製作:2000年、アメリカ
最後にズルをする。本作は20世紀の製作だが、日本公開が2001年初頭なのでご容赦を。凄惨な飛行機事故を予知して搭乗を取り止め、いったんは死を回避した若者たちが、逃れられない死の運命に次々にさらされていく。「X-ファイル」「ミレニアム」の脚本家、ジェームズ・ウォンの劇場映画監督デビュー作。(こや)




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2019/02/20 13:37 |
コラム「たまたま本の話」

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