意識と組織の革新性が必要とされる件 | ヤモリのつぶやき

ヤモリのつぶやき

日々のニュース解説等をつぶやきます......

 昨年の話なんだが、産業革新投資機構でドタバタの辞任劇があった。
 かなり盛大に報道されたのでご存知の方も多かろう。
 なんだかよくわからない内にお隣のアホな話とかで目先がそちらに移ったため、すっかり放置されている案件だ。
 話を掘ってみると相変わらずの馬鹿な話だった。
 日本の政治の問題点の根幹を知るのには非常に良さそうな話だったので、まとめてみた。
 
 まず、産業革新投資機構というのはこういったものだ。
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産業革新機構(読み)サンギョウカクシンキコウ
https://kotobank.jp/word/%E7%94%A3%E6%A5%AD%E9%9D%A9%E6%96%B0%E6%A9%9F%E6%A7%8B-513156
以下抜粋
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
産業革新機構
さんぎょうかくしんきこう
先端技術の事業化や国際競争力向上につながる企業支援に公的資金を使う官民出資の投資ファンド。英語名はInnovation Network Corporation of Japan、略称INCJ。リーマン・ショック後の金融危機で先端技術分野へ投資マネーが回らなくなっている状況を改善するため、改正産業再生法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法、平成11年法律第131号)に基づき、2009年(平成21)7月に発足した。存続期間15年という時限措置つきの株式会社である。

------------以下ソース
産業競争力強化法(読み)さんぎょうきょうそうりょくきょうかほう
https://kotobank.jp/word/%E7%94%A3%E6%A5%AD%E7%AB%B6%E4%BA%89%E5%8A%9B%E5%BC%B7%E5%8C%96%E6%B3%95-1611938
安倍晋三(あべしんぞう)政権の経済政策「アベノミクス」の成長戦略を具体化するための法律。平成25年法律第98号。2013年(平成25)12月に成立し、2014年1月に施行された。日本経済の成長を妨げているとされる三つの「過」(過剰規制、過当競争、過小投資)を解消するため、規制改革、産業の新陳代謝、設備投資の活性化を実現する政策を柱としている。
--------------以下ソース
産業競争力強化法
http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/
「産業競争力強化法」の一部改正が施行されました
http://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180709006/20180709006.html

 麻生さんが総理大臣の頃にリーマン・ショック対策で作り、その後、アベノミクスの三本の矢と言われた経済振興策でテコ入れをされたものだ。
 これらが崩壊した経緯は、下記を参照いただきたい。
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世耕経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 平成30年12月11日
http://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2018/20181211001.html
異常事態。産業革新投資機構の役員退陣を新聞各紙はどう伝えたか 2018.12.12
https://www.mag2.com/p/news/379308
産業革新投資機構、「取締役9人一斉辞任」に至る全内幕 2018.12.13
https://diamond.jp/articles/-/188385
 ↑内幕と言うほど目新しいことは書いてない。
 ↓↓こうなった↓↓
株式会社産業革新投資機構連絡室の設置について 2018年12月10日
http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181210004/20181210004.html
経済産業省は、本日、株式会社産業革新投資機構連絡室を設置しました。
1.設置の趣旨
株式会社産業革新投資機構(以下「機構」という。)の新経営陣招聘のための新たな体制構築に向けた調整を行うため、株式会社産業革新投資機構連絡室(以下「連絡室」という。)を設置しました。
2.業務内容
連絡室は、新経営陣招聘のための新たな体制構築に向けた調整を行います。
また、機構の新経営陣の選定条件、報酬・ガバナンスの在り方に関して、経済産業大臣が指名する有識者で構成する第三者諮問委員会を設けるにあたり、連絡室は経済産業政策局産業創造課と連携し、事務局業務を行います。
第三者諮問委員会については、できる限り早急に人選を行い、立ち上げることとしています。

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 2019年現在、立て直しのために連絡室を作って対応していると言う状況だ。
 なお、その他問題点を指摘する向きはたくさんあるので、下記をご参照いただきたい。
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産業革新投資機構、「役員大量辞任」の衝撃
官民ファンドvs経産省で問う国の関わり方 2018/12/10

https://toyokeizai.net/articles/-/253927
何が問題、産業革新投資機構? 官民ファンドのあり方を問う(鷲尾香一) 2018/12/25
https://www.j-cast.com/kaisha/2018/12/25346610.html?p=all

報酬1億を"カネの亡者"と呼ぶ官僚の理屈
"ゾンビ企業"を助けたかった経産省 磯山友幸 2019.1.11

https://president.jp/articles/-/27243
以下抜粋
経産省幹部が手のひらを返した本当の理由
経産省の幹部が手のひら返しをした本当の理由は、おそらく、自分たち官僚のコントロールが効かなくなることを恐れたのだろう。出資者は国なので、取締役をクビにするなどガバナンスを効かせることは可能だが、いわゆる以心伝心で官僚機構の思う通りに動いてくれる「第二のポケット」にならないことが分かった段階で、ダメ出しに動いたに違いない。

-----------全文ソースにて

産業革新投資機構、民間出身の取締役が全員辞任。国策ファンドで一体何が起こっているの? 2018/12/19(水)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181219-00010002-wordleaf-soci
以下抜粋
政府は2009年、先端技術を使った新産業の創出を目的に産業革新機構というファンドを設立しました。「官民ファンド」と銘打っていますが、政府が出資する事実上の国営ファンドと考えてよいでしょう。当初は成長力の高い有望企業に投資する計画でしたが、日本国内にそうした事業はあまり見当たらないというのが現実です。民間の投資ファンドが目を皿のようにして有望企業を探しているにもかかわらず、有益な投資案件がない状況ですから、国営ファンドが取り組んだからといって状況が変わるわけではありません。
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【財投編】官民ファンド、統治不全 2018年12月18日
https://www.yomiuri.co.jp/economy/feature/CO034991/20181218-OYT8T50015.html
以下抜粋
 官民ファンドといってもJICの実態は政府系ファンドに近い。
 株式会社であるJICは、「財務大臣」が約95%を出資する。つまり実質的な大株主は財務省で、事業を認可するのは経産省という「二重構造」だ。
 残りは政府系金融機関の日本政策投資銀行や、経団連に加盟する3メガバンクやメーカーなどが少額ずつ出資する。民間に広く薄く協力を求める「奉加帳方式」でJICは生まれた。

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 上記で、問題点が現れている所を抜粋した。
 どうも、企画と実態が全く擦り合っていない。
 そもそも産業振興とか成長戦略を考えた時、国がそれを支援する手法が間違っているとしか言いようがない。
 更に特徴的なのは、元官僚の方々がこぞって批判的である点だ。
 まず、元財務省官僚のこちらの方の記事が面白い。
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産業革新投資機構の取締役に失望した 小幡績 2018年12月11日
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2018/12/post-32.php
<金融も経済も政治利用しか考えず、とりわけファンドの運用では失敗だらけの政府をなぜ信じてしまったのか>

失望というよりも驚いた、という方が正確か。
昨日の産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長の記者会見をすべてじっくりと見た。素晴らしいバンカーだ。

言っていることはすべて正しい。

そうそうたる取締役達の辞任のコメントも読んだ。

すべてもっともである。

しかし、である。

だからこそ、でもある。

なぜ、1つだけ、しかも致命的な点において、田中氏も取締役の人々も、全員同じ誤りを犯しているのか。
なぜ、彼らは、突然、日本政府が日本にとって重要な政策を実行できると思ったのか。
このような有権者の反感を買う可能性の高い政策を、これまで一度も実行していない政府が、このファンドに限って行う気概があると思ったのか。
あまりに愚かである。
しかも、官民ファンドというもっとも下手でほぼすべて失敗してきた(運が悪かったのではなく、最初から失敗することがほぼ確定していた)政策の分野で、突然、奇跡が起こると思ったのか。

-----------全文ソースにて
官製ファンドはすべて解散せよ 2018年12月06日
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2018/12/post-31.php

 ほんと面白い。
 元官僚とは思えない、いや、生粋の財務官僚とも言うべき暴論を吐いている。
 小幡氏は政治レベルが低いと指弾するが、筆者からすれば、政治レベルも官僚レベルも同様に低いと指摘せざるを得ない。
 政治家は政策素人が多くて企画先行→官僚丸投げだし、官僚は政策レベルは高くても、すぐに天下りなどの色気を出して国家・国民不在だ。
 それらを見張るはずのジャーナリズムは、左巻きの根腐れ状態で政策にも疎く、官僚の狗と化している。
 三つ巴でアホ状態で物事がうまく回るわけはないから、政治の低レベル化を嘆いても問題は解決しない。

 また、同じく元官僚のいつもの高橋氏も異口同音だ。
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何千億円もムダにしてきた「官民ファンド」失敗の歴史をご存じか?
産業革新投資機構の崩壊で再認識 髙橋 洋一 2018.12.17

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59026
■そもそも官には無理な話だ
筆者注:文字数オーバーにつき、ソースにて。

■実は30年以上前から言っていた
そもそも「官民ファンドは成立しえない」という立場からすると、こうした怪しいものに連なる経産省にも、そこに来る民間人にも、ともに「スケベ心」があるようにしか、筆者にはみえない。

産省には「不要な組織でも温存させたい」という欲望がある。つまり、それは役人の天下り先をつくるということだ。官民ファンドに来る民間人には、「公的資金で投資をしたい」という欲が見える。やるなら自分のカネか、あるいは自分で集めたカネで投資すればいいのだが。いずれも建前として「別の目的がある」ということはできるが、内心は「スケベ心」がまったくないとは言えないだろう。
そもそも「株式投資は、官でできるはずがない」ということについて、実は30年以上前に、筆者は「経産省の行う『産業政策』はありえない」という内容の学術論文のなかで書いている。

ひとことで言うなら、基本的に、官僚に産業の動向等を見通せるはずがないので、産業育成なんて無理である、というものだ。はっきりいえば、経産省の筆頭局である産業政策局の全面否定を意味する論文であった。だから、どんな経産官僚も筆者の主張は受けいれなかった。
しかし筆者は、しばしば経産官僚に対して「本当にこの国の経済を引っ張れる産業を作る自信があれば、すぐに退職して作ればいい」と冷やかしてきた。筆者は、退職して成長企業を作った官僚を知らない。評論家のようにあてにならない議論をしていただけだ。それっぽい「計画」や「案」を作ることはできても、実際に成長企業をつくることなど、官僚にはできないのだ。

■失敗ばかりの「政府の投資活動」
筆者は、ある政策を考える場合、しばしば国際比較を行う。海外の論文等・資料等を探すのだが、「産業政策」に対応する英語がなかなか見つからなかった。「industrial policy」という人もいるが、ほとんどの場合、その前に「Japanese」と付ける必要がある。つまり、産業政策とは日本独特のもので、先進国での例を探すことはほとんど困難だ、ということだ。

これが誇れることならいいのだが、外国の学者にこのことを説明すると、「政府が育成すべきターゲット産業を見つけることなんてできるわけない。日本の産業政策は政治家・役人の利益誘導のためにあるのではないか」といわれてしまう。これは至極もっともで、本質的な疑問である。
というわけで、官が行う仕事は「民ができないものに限る」という大原則があり、その中でも損失が発生する確率が低いもの、つまり安全なものに限定される。リスクは民間のほうがとりやすいので、官はやってはいけない、となるのだ(繰り返しになるが、実にシンプルな話なのである)。

これでもし、政府による投資活動が成功事例ばかりなら結構だが、実際に死屍累々、やはり失敗ばかりなのだ。せっかくなのでこれまで実施されたもので、税金がムダに終わったケースをあげてみよう。筆者が大蔵省時代に財政投融資に携わっていたころに、経験したり、見たり聞いた話だ。
まずは「基盤技術研究促進センター」。同法人は情報通信分野などの基礎的な研究を目的に、1985年に設立された特殊法人だ。原資はNTTの政府保有株式の配当金などの産業投資特別会計として、これらの資金が基盤技術研究促進センターを通じて出資、融資対象の研究開発機関や民間企業に流れていた。

ところが、その成果は悲惨なものだった。2800億円の出資のうち、最終的に8億円くらいしか回収されなかった。結局2003年4月に解散されることとなった(http://report.jbaudit.go.jp/org/h12/2000-h12-0625-0.htm)。

次に「第五世代コンピュータ」。1980年代初めから10年かけて行われたプロジェクトで、570億円が投入された。しかし、結局アプリケーションの無いマシンしかできなかった。「当初の目標を達成した」とか政府は言うが、このような言い方には注意が必要だ。そもそも当初の目標がはっきりせず、後で言い訳している場合が多いのだ。公的資金が投入されたので、誰かの人件費になったのは当然であるが、その成果が社会に有用でなければ意味がない。

最後は「シグマプロジェクト」。ソフトウェア技術者の不足に対応するため、1980年代中頃に策定されたプロジェクトだ。経産省主導のもとで、外郭団体の情報処理振興事業協会 (IPA)が音頭をとった。1990年4月にコンピューターメーカーやソフト会社50社が出資し事業会社「シグマシステム」を設立したが、95年に解散した。プロジェクトの方向性を見誤ってプロジェクトは失敗、最終的に投入された公的資金は250億円といわれている。

この種の話は、霞ヶ関では氷山の一角でしかない。ここまでひどい例はそう無いかもしれないが、会計検査院が本腰を入れて調べても、プロジェクトが終了した後なので、後の祭りだ。
失敗が明らかな時、官僚がどういう行動をするかというと、「まだ成果が出ていません」という言い訳をはじめ、責任者が表舞台からいなくなるのを待つ。予算査定や会計検査をする側も官僚だから、怪しいと思いつつも、決定的な証拠がないこともあって、そのあたりは阿吽の呼吸で深く追及できない。

こうして、いよいよどうしようもなくなった時に処理される。しかし担当者はすでにいなくなっているから、責任の所在はうやむやのまま。もちろん検証されたあとに、それを反省材料とすることもない。……というわけなので、自分のカネで投資を行わない「官」で責任を伴う投資は無理なのだ。

■あのときやめておけば…
こうした筆者の考え方からいえば、産業育成をするために株式投資を行う「産業革新投資機構」は、最も官でやってはいけない類のものだったのである。
もともとは、2009年に産業革新投資機構の前身である「産業革新機構」が誕生している。この策は、リーマンショック後の企業救済としては確かに受け入れられた。設置期間を15年と設けて、2025年には解消するというものだったが、昨年それが9年延長され、2034年までになった。
そして、今年9月からいまの産業革新投資機構が発足した。本来であれば、この延長はすべきではなかったのだ。そうすれば、産業革新投資機構も存在しておらず、こうした醜態をさらすことはなかった。

実は、会計検査院でも、今年4月に官民ファンド全般の運営状況の報告をしている(http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/30/h300413_2.html)。官民ファンド運営法人16法人に対して行われた政府出資等の額は、8000億円程度だ。2012~16年のバランスシートが掲載されている13法人についてみると、産業革新機構ではないが、11法人について出資金が欠けている状態だ。
以上は、やや理論的な考察であるが、今回のドタバタ劇は、筆者の従来の考え方が間違っていなかったことを示している事例のように見える。

産業革新投資機構の田中社長の記者会見(https://www.j-ic.co.jp/jp/news/pdf/JIC_CEO_20181210.pdf https://www.sankei.com/politics/news/181210/plt1812100008-n1.html)と、その後の世耕経産大臣の記者会見(https://www.sankei.com/economy/news/181210/ecn1812100024-n1.html)から、官民ファンド自体が成り立ちにくい、ということを見てみよう。

この二つの会見を見ると、官と民の間でまったくコミュニケーションが成立していないことがわかる。これは、技術的な話法云々というレベルではなく、官と民で寄って立つべきルールが違うことからくる「埋めがたい本質的な違い」によるものである。

問題となっている役員報酬について、田中社長は、経産省官房長から文書で示されたものを取締役会で決議したと記者会見で述べた。しかし、その後、文書で示されたものが白紙撤回されたので、政府と間の信頼関係がなくなったという。このプロセスについて、日本は法治国家なのかと疑問視している。
一方、世耕経産大臣は、経産省官房長の出した文書で事態を混乱させたことは謝罪したが、産業革新投資機構は商法に基づく株式会社であると同時に、産業競争力強化法の規制下にあるので、同機構の取締役会で決議したものを経産大臣が認可しないことはありえる、とした。

これは、世耕大臣の説明のほうがより正確だ。田中社長の説明はあくまで「商法の範囲内」としては正しいが、「産業競争力強化法」を見落としている。もっとも、これまで民間で生きてきた田中社長にとって、産業競争力強化法は別世界の話だろう。形式的には産業競争力強化法の下で産業革新投資機構があるのは知っていただろうが、肌感覚としては頭に考えていなかっただろう。

しかも、経産省官房長が田中社長に提示した文書について、田中社長に誤解があったようだ。田中社長は、経産省官房長という幹部が提示した文書なので、これが政府内で調整済みの公文書、契約書であると勘違いしたようだ。その文書は、経産省のホームページにある(http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181203003/20181203003-4.pdf)。
これは、差し出し人の記載なし、日付なし、文書番号なしの「名無し文」だ。契約書を見慣れているはずの田中氏がこのことに気づかなかったというのは考えにくい。産業革新投資機構という、国が出資した「官」の組織の社長である以上、田中氏は気がつくべきだったので、官の組織の人としては疑問符がある。田中氏は、昔はMOF担(金融機関の大蔵省との折衝窓口)をしていたので、この程度の話は知っていたはずだから、この件は本筋ではなく、別の案件で経産省とトラブったのかもしれない。

■官と民では「重視しているもの」が違う
また、田中社長が、昨年10月に経産省に設けられた「リスクマネー研究会」の「報告書」を「バイブル」と呼んでいたことも不思議だ。

経産省のサイトをみると、「第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会」(http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180629001.html)がある。田中社長はこの研究会の委員を務めている(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/daiyoji_sangyo_risk/pdf/001_03_00.pdf)。今回辞任した取締の人も委員に入っている。
ただし、この研究会に「報告書」はなく、「取りまとめ」しかない。つまり「報告書」にできないものが「取りまとめ」なのだろう。しかも、田中氏が言及していた、報酬の件はあまり書かれていない。

いずれにしても、「報告書」でも「取りまとめ」でも、その内容に役所が責任を持つべき類の文書でないことがわかる。国会答弁のために、第三者が言っているという程度のものだ。実際に執筆しているのは、担当課の課長補佐レベルだ。
その文書を田中氏は「バイブル」と呼んでいたが、この文書を絶対視するのはあまりに危険である。民間の人から見れば、役所が出した文書はどれも同じレベルに見えるかもしれないが、格の違いは形式的に明確であるので、それを見分ける能力も「官」の組織で働く上では必要なのだ。ここにも、官民ファンドの本質的な矛盾がでている。

おそらく田中社長は、民間企業では抜群の能力があったので、それをそのまま「官」の組織の中で生かそうとしたのだろう。記者会見でも「志を持ってやった」と言っており、その言葉に偽りはないだろう。
しかし、「官」の組織の中で、民間人がまともなことをしようとすると、「官」の縛りに必ず引っかかるのだ。民間の場合には、形式的な手続きよりもスピードと結果が重視される。しかし、官の場合、民主主義プロセスを重視するために、形式的な手続きがより優先されるのだ。となると、やはり官の世界では民間のよさを生かしにくいのだ。

まともな民間人が複数の民間人を引き連れて「官」の組織に来て、まともな仕事をしようとすると問題が起きることを筆者は何度も経験している。これが現実である。
このように官民ファンドには、官と民の本質的な矛盾が満ちあふれている。今回の9人の民間出身者の取締役辞任は、その本質がよく現れているのだ。ちなみに、取締役のうち、今回辞任したのは民間出身者である(https://www.j-ic.co.jp/jp/about/leadership/)。役所からの派遣(天下り)は辞めない、というか、天下りなので、自分の意思で辞められないのだ。

本来であれば、彼ら二人が政府と産業革新投資機構を調整すべきだった。経産省官房長の提示した文書が公文書でないことは、彼らには明らかだ。
もっとも、いくら調整しても、官と民の本質的な違いは克服できなかったはずだ。実際、報酬については調整できても、産業革新投資機構は政府方針からは自由にならず、政策目的は時々によって変更されるので、所詮政府の手下として活動せざるをえないのだ。結局、これでは民間人のやりたいこともできないのだ。

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 似たような話のこちらもついでに取り上げておこう。
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郵政不振の理由は「再国有化」 官民ファンドとよく似た構図 打開策は「再民営化」しかない 2018.12.22
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/181222/soc1812220006-n1.html
以下抜粋
 何より、「再国有化」により、民間から来ていた経営陣がほとんど追い出された。なにやら、今話題になっている官民ファンドに似た状況だ。
 新たに日本郵政に来ようとする民間人は、また政権次第で追い出されるのかと二の足を踏む。すると、形ばかりの民間人がきても、元官僚が実質的な経営を担うようになる。これが「再国有化」の厳しい現実だ。

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 そして、もうお一方、安倍総理ではないのっとあべさんで有名な元経済産業省官僚の方の意見だ。
 前段がアベガーで終始して面倒くさいので、肝心な所を抜粋する。
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古賀茂明「産業革新投資機構休止に騙されるな。経産省の究極の焼け太り構想とは?」 2018.12.24
https://dot.asahi.com/dot/2018122300011.html?page=6
P6以降抜粋
■「究極の焼け太り構想」を諦めない経産省
 そんな連中に多額の資金を任せるのは、国民としては、自殺行為のようなもの。絶対にやってはいけないのだが、経産省は、JIC解散など全く考えていないはずだ。なぜなら、そこには「究極の焼け太り構想」があるからだ。
JICの前身の産業革新機構ができたのは2009年。存続期間は24年度までの15年間だった。ベンチャー投資が主目的だったが、実際は、ジャパンディスプレイとルネサスエレクトロニクスという2つの負け犬連合を経産省主導で救済するために大半の資金を投資。ベンチャー支援では失敗続きだった。このため、「ゾンビ企業延命装置」と揶揄され、このままでは24年度廃止は避けられなかった。
 一方、経産省の官民ファンドでさらに深刻だったのがクールジャパン機構(CJ機構)だ。こちらはド派手な宣伝で名を馳せたが、大失敗続きでマスコミの袋叩き状態。廃止必至と思われた。

 そこで経産省が一計を案じた。産業革新機構を名称変更とともにJICに改組。そのどさくさに紛れて、JICの終期を33年度までとして、事実上の延命を図った。しかも、同じ法改正の中に、JICに他の問題ファンドを吸収する受け皿機能を持たせるという内容を潜り込ませたのだ。経産省のCJ機構はもちろん、経産省以外の問題ファンド全てを全部のみ込むこともできる。2つのファンドの大失敗を逆手にとって、利権を拡大する「究極の焼け太り構想」である。

■「休止」「解体的出直し」は世耕大臣と官僚の騙しのテクニック
 今回の騒動の責任を取った形を見せて、世耕大臣は、しおらしいところを見せた。さらに、19年度予算の要求を取り下げ、事実上の機構の「休止」宣言をした。経産省からマスコミには、「解体的出直しをする」というコメントも流れている。ファンドの専門家などでつくる「諮問委員会」でJICの運営や報酬を議論して、年内に田中社長の後任を決める方針だそうだ。
「休止」「予算要求取り下げ」と聞けば、相当程度経産省も反省しているように見える。「解体的出直し」と言えば、何か全く違ったものに生まれ変わるかのような響きもある。しかし、それは典型的な官僚の騙しのテクニック。これほどの逆風下でJICをすぐに生き返らせるのは難しい。経産省が存続の姿勢を見せれば見せるほど、世論の批判は高まる可能性がある。そんなときの常とう手段が、とりあえず「休止」してほとぼりを覚まし、「諮問委員会」という第三者に問題点を厳しく指摘してもらって、それを改善する。経産省の意見ではなく第三者が言ったとおりにしますという形をとって「解体的出直し」をするのである。

 もちろん、その本当の意味は、単に「経産省の利権は維持して再スタートする」ということだ。世耕大臣が言った、「ガバナンスに国の意向をしっかり反映」というのは、実は、経産官僚たちの「個別案件への介入利権」をしっかり確保するという意思を宣言させられたものだ。もちろん、それはそのまま世耕大臣の利権にもなる。
「産業再生機構」の経験から言って、私は、「JIC」の「官僚のおもちゃ化」がさらに進むことになると予測している。なにしろ、ノーリスクで多額の資金を動かし、ベンチャー企業や次世代技術の育成に「関わった気になれる」天下国家を動かしていると思いたい官僚にとって、こんな面白いおもちゃはない。
 高額報酬がなく、経産省が介入すると宣言してしまったJICにはもう優秀な人材は集まらない。そうなれば、「官僚のおもちゃ化」に歯止めはなくなる。したがって、JICの成功はもう不可能だ。
-------------全文ソースにて:ただし、そこかしこに過去自慢とアベガーが絡むので、フィルタリングして読む能力を必要とする。


 さて、これらに絡んでもう一つ重要な話が下記だ。
 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
財務省が、安倍政権の「参院選での敗北」を望んでいる可能性
悲願の「消費税10%」のためなら…
 ドクターZ 2019.01.13

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59296
■手段を選ばない
株価2万5000円超えも期待された2018年だったが、年末に世界同時株安の影響をモロに受け、2万円割れにまで落ち込んでしまった。
今年は消費増税という一大イベントが控え、衆参ダブル選の噂も流れている。そんななか、財務省はどのような動きを見せるのか。
増税のために手段を選ばないのが財務省だが、ハッキリ言って彼らにとって安倍政権は好ましくない存在だ。
民主党政権のとき、5%から8%、8%から10%へと二段階で増税することを法律に定めた。8%への増税はスムーズに達成したが、その後、安倍政権は再増税を延期してきた。
安倍政権と財務省の軋轢は、10年以上前の第1次政権時から生じている。
安倍首相は内閣の要である官房副長官に旧大蔵省出身者を登用したが、公務員制度改革で反感を買い、財務省が「倒閣運動」を仕掛け、政権崩壊を招いた。それ以来、安倍政権は財務省に用心して経産省出身者を重用し、政権維持を図っている。
財務省にとって一番望ましいのは、10月の消費増税を確定させたうえで、安倍政権が退陣することだ。そのため夏の参院選で安倍政権に負けてほしいと考えている。
安倍政権の後に控えているのは岸田文雄氏や石破茂氏らだが、彼らは財務省の意向に従うと見られ、10月の増税を翻意することもないだろう。
3月までは'19年度予算を通すために、安倍政権も財務省も国会では慎重運転だろう。ただし、4月以降は何があるかわからない。
4月に統一地方選があるが、そこで安倍政権が劣勢だと、財務省も動き出すかもしれない。財務省は各省に出向者を送っているため、強い情報網を持っている。マスコミにリークして、他省での問題案件を焚きつけることも容易だ。

■文科省と国交省が標的
財務省は目的達成のためなら他省など簡単に「炎上」させる。槍玉に挙げる最有力は文科省だろう。
'18年は汚職事件や事務次官辞任と文科省で不祥事が相次いだ。財務省も人のことは言えないが、国民の生活に密接する教育担当の文科省スキャンダルのほうが安倍政権批判に直結しやすい。
特に、安倍政権は悲願の憲法改正で、教育の無償化を盛り込みたいと考えている。当然これに財務省は猛反対だから、財務省の狙いどころとしてはこのあたりになる。
安倍政権にダメージを与え、憲法改正を白紙に戻し、財務省の不祥事の印象を薄くするという「一石三鳥」を狙うのだろう。
文科省の不祥事でいえば、高官が権限を使って子息を医大に不正入学させた問題があった。だがこれはいつの間にか、医大が入学試験で女性差別をしているという問題にすり替わってしまった。このあたりから、「不祥事ラッシュ」だった去年の官庁から世間の関心が離れたように見えた。
文科省以外で財務省の標的になりそうなのが、国交省だ。公共事業が復活しており、財務省としては叩きたい省庁だ。安倍政権は二階派の支持が強く、二階派が推す公共事業を批判すれば、政権の弱体化も期待できる。
教育と公共事業はこれからの日本に大切な「投資」だが、財務省にとってはマスコミに批判させたい恰好の的だ。
今年も相変わらず、財務省はみずからの省益を最優先に動くに違いない。

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 これでだいたい様相がつかめるはずだ。
 今年、参議院選挙と消費増税10%が予定されている。
 そこに財務省が殆どを出資し経済産業省が認可をして美味しい所を奪う、アベノミクスの肝いり政策があったわけだ。
 そこで、経産省は自己コントロールから外れそうだった政策を潰して寝かしてしまい、自己采配の天下り組織を得る。
 財務省は政策を潰して内閣を揺さぶり、経産省にも恩を売るというからくりだ。
 おそらくは、先日取り上げた厚生労働省の案件と同じような目的なわけだ。
 こうして各省庁の不祥事が続けば、内閣に対する支持率も下がるし、野党が国会で攻撃する材料も提供できる。
 上記引用にある「安倍政権にダメージを与え、憲法改正を白紙に戻し、財務省の不祥事の印象を薄くするという「一石三鳥」を狙う」と云うやつだ。
 反安倍派の官僚が同じように批判していることで、工作臭をより一層強くするのだ。
 ↓↓いいタイミングでこんな話↓↓
【朝日世論調査】内閣支持率46%、不支持率46% 政党:自民37%、立民8%、公明3%、共産3%、国民民主1%、社民1%、自由1% 2019年01月13日
http://hosyusokuhou.jp/archives/48828469.html
【共同世論調査】勤労統計で政府不信「信用できない」78% 2019/01/13
http://fxya.blog129.fc2.com/blog-entry-50063.html

 また、本来、こういったファンドを国家が介入する意味はない。
 減税や優遇税制をうまく使っていけば、金融緩和中でもあるし、投資は勝手にうまく回っていくものだ。
 先の引用にもあった「民間は目を皿のようにして有効投資先を探している」のに投資案件がない現状を打破する方がよほど効率が良いのだ。
 なにせ、投資先がないがために地方銀行も困っていたりするのが現状だ。
 この案件の実態は、これらを打ち破るために政権が作った抜け道を潰し、乗っ取っただけの話だ。
 そしてなにより、その犯人が財務省そのものだ。
 本来やらなければならない減税措置や財政政策を尽く邪魔をし、アベノミクスが失敗するように仕掛けてきたはずだ。
 激しいマッチポンプなのだ。

 この事は元財務官僚の小幡氏の激しい上から目線の記事でよく解る。
 政治に期待できないから財務省がその頭脳を担うとでもいいたいのだろう。
 しかし、財務省のスタイルは、失敗し続けて25年以上が経つ。
 そんな低レベルで自分らが国家盟主であると、どうして思えたのか?
 霞が関の富士山を自称する割にハニトラで金玉掴まれている隙があるなら、富士山に山籠りでもして座禅でもしたら、瞑想のおかげで迷走もとまるんじゃないか?

 今年の選挙で政権に引導を渡すべく、財務省がひたすら政局を仕掛ける、そんな昨今なのである。
 これが、日本の政治が抱える問題点なのだ。

 選挙で選ばれたわけでもない官僚が、裏で暗躍し民主主義を犯していく。

 ミスをしてもハニトラにあっても、おかしな思想であっても、公務員法に守られて幅を利かせるのだ。

 日本人の政治に対する意識を革新し、財務省という省庁を解体して革新する必要性を、より強く思う案件だった。

 了

ガンバレ!日本!!
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