●信州の群雄割拠ここに始まる 「大塔合戦」信州知られざる古戦場21 | きょうのもののふフォト列伝 ー古戦場 城 もののふ 旅ー

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熱く 燃えて 散って 逝った 我ら祖先のもののふ達 その懸命な生きざま姿を追う旅を続けています。

信州の合戦となれば、信玄・謙信の川中島、そして真田・徳川の上田城…

それが。

大塔(おおとう)合戦? なんじゃそれ? 全く聞いたことねぇよ」

と、地元の我が信州人がこうのたまうのだから、いわんや他県人をや。

というわけで、実に書きにくい

しかも登場人物は、ほとんどなじみ無し、知らない人ばかり。

さらにしかも時代は戦国時代でなく、室町時代初期

弱った、困った。

でも、タイトルは「信州知られざる古戦場」ということなので、なんとかご容赦を、ご一読いただきたく。

 

信州知られざる古戦場21 大塔合戦

小笠原長秀(守護方)vs村上満信・大文字一揆(国人衆方)

応永7年(1400) 9月

戦国時代よりさかのぼることおよそ150年前の室町時代、南北朝時代が終わったころ、将軍足利義満・義持の治世。

 

南北朝は合一されたが、動乱の余波は我が信濃においてもくすぶっていた。

幕府は信濃の平穏化をはかり、かつて守護だった小笠原一族で、将軍義満に近侍していた小笠原長秀を応永6(1399)年、新守護に任じた。

 

だが長秀は、信濃の状況をあまり把握せぬまま翌年、東北信濃を治める政庁が置かれた善光寺へ、都風の華美な旅装の行列で仰々しく下向した。

長秀この時30歳前後、都のきらびやかな威光を見せつけ、信濃の人々や国人衆の度胆を抜こうとしたのである。

 

このど派手な行列のうわさはたちまち広がり、行列を一目見ようと沿道や善光寺周辺は黒山の見物人だったという。

 

幕府の威勢を見せつけた長秀は、集まった国人衆を前に横柄で尊大な態度をもってのぞんだ。

その命令は従来の慣行や取り決めを無視した強圧的なもので、

「川中島一帯はもともと守護の支配地なり!」

などと宣言、課役および稲の刈り取りを強行するに及んだのである。

 

これを聞いた祖父の代から「信濃惣大将」と称されていた最有力国人衆の村上満信を筆頭に、「大文字一揆」と名乗る東北信の高梨・井上・海野・祢津・滋野氏、

さらに中信の仁科・三村氏などの国人衆の連合は激怒、合戦を決断した。

対する長秀方もただちにおよそ八百の精鋭を、横田城(長野市篠ノ井)周辺に配備した。

だが、「殿(長秀)、敵軍勢はおよそ四千!」の報に、長秀は仰天した。

 

長秀方はおよそ八百、対する村上満信率いる連合軍は四千、横田城を囲むように千曲川を渡って攻め寄せてきた。

横田城はあの木曽義仲が平家に勝利した横田河原の合戦で、本陣を置いたとされる地である。

「殿(長秀)、ここは一旦、塩崎城(長野市塩崎)まで引くべきかと!」

弓の名手の長秀だったが、五倍もの大軍を目の当たりにしては家臣の進言に従わざるを得なかった。

 

一方村上方は、長秀方からしばしば発せられる「我らは幕府軍ぞ、敵は凶徒の軍なり!」の大音声にたじろいだ。

だが、ついに合戦の火ぶたは切られ、村上方は塩崎城への道をふさぐように大攻勢にでた。

 

この時の主戦場ははっきりしないが、現在の長野市篠ノ井の大当(おおとう)・二柳地区あたりと思われ、簡単な城砦も作られていたようだ。

 

▼塩崎城麓から古戦場あたり一帯を望む

次々と襲来する村上勢に長秀方は押され、長秀自身も手傷を負った。

「ここはみどもにお任せあれ、殿は塩崎へ!」

と名乗り出た若武者・坂西長国などは、残った兵を指揮してその後20日近くも籠城戦を戦ったが多勢に無勢、ついに討ち死にした。

 

塩崎城は長谷寺の後方、高速道路トンネルの上あたりに築かれた山城で、比高およそ200㍍、横田城から7キロほどの地にある。

 

▼塩崎城址。左下に長谷寺が見える

 

なんとか城に逃げ込んだ長秀だったが、味方の多くが討たれ、随従する兵は少なかった。

長秀はこの合戦に中立的だった佐久の大井氏に仲介を依頼、やむなく村上勢は攻撃を中止した。

長秀は都へ逃れたが守護職を解任された。

 

この大塔合戦は、信濃の国人衆が連合して守護を追い返すという強さを示した合戦となった。

だがこれ以降、信濃国は各地に中小国人が割拠・競合する状態が生じ、後に信玄・謙信の強力な勢力に呑み込まれていくのである。

 

次回は海ノ口城の合戦。

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