デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

老優のラストメッセージ

2018-11-09 00:57:12 | 新聞・TV・映画・舞台・書籍etc.
 どなただと思いますか? 若い方はわからないでしょうね。60代より上の方には懐かしい俳優さんです。1960~70年代のスクリーンを華々しく飾りました。イケメン!なんて軽い表現では語れません。しかし美男でも(美女でも!)歳は取るんですよねぇ。

    

 暫くブログは月一ぐらいに・・・と思っていたのに、「アラン・ドロンのラストメッセージ・・・映画・人生そして孤独」(6日BS103)を視て、つい!PCに向かってしまいました。11月8日はアラン・ドロンの83回目の誕生日、さすがに歳は隠せません。

    

 この表情がまさにアラン・ドロン。4歳にして両親が離婚、各々再婚して子をもうけます。居場所をなくしたドロンは里子に出され、荒れた少年時代を経て軍に志願、すぐにインドシナ戦争に狩り出されます。甘いマスクの下に辛酸の日々が微かに窺われます。

 どこかギラギラした飢餓感を感じさせます。そのあからさまな野心と上昇志向は、たぶんドロンの生きるエネルギーだったのだと思います。微笑んでいてもどこか淋しさを漂わせ、冷徹なヒットマン(殺し屋)を演じても怖さ、凄味を感じさせないドロンでした。

         
              
    
                         映画「サムライ」で演じた殺し屋

 昨年、ドロンは「P.ルコント監督と最後の映画を撮って引退」すると表明、共演はJ.ビノシュと決まっていますが、それ以外は未定です。NHKがダメモトで申し入れたインタビューにドロンは「やりましょう」。それがこの「ラストメッセージ」です。

 ルコント監督のドロン評は「俳優としても一人の男としても非常に複雑な人間です」。その複雑さゆえかインタビューは二度にわたり延期されます。数々の女性遍歴で名高いドロンが「ミレーユ・ダルクの最期を看取り心を整理するため」に要した時間でした。

 
 ミレーユ・ダルクの旅立ちに、ドロンの語る言葉が胸を衝ちました ・・・『彼女はようやく苦しみから解放された。今は遺された者が苦しんでいる。私は、とても傷ついている。彼女はそれほど私の人生に大切な人だった』。ミレーユ・ダルク、享年79歳でした。


    

 インドシナ戦争に従軍したドロンは和平とともに除隊、パリで自堕落な生活に戻ります。しかし女性に愛されるのが彼の天分、名もない青年に当時売れっ子の女優ブリジット・オベールが惚れました。ドロンを映画の世界に誘った最初の女性が彼女でした。

 俳優になりたちまちスターダムに乗り、三作目に共演したロミー・シュナイダーと付き合います。そしてミレーユ・ダルク、ナタリー・ドロン、ロザリー・ファン・ブレーメンなど次々。ただ彼は、別れて新たに付き合うのではなさそうです。マメ過ぎです、ね。


    

 ロミー・シュナイダー・・・素敵な女優さんでした。学生時代に観た映画「夏の夜の10時30分」ではメリナ・メルクーリと競演。歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」ばりの不貞、愛憎渦巻く展開・・・素敵な女優さんでも、この映画、終わるとグッタリ・・・でした。
      ※ ロミーは、睡眠薬過剰摂取で43歳で亡くなりました。葬儀にはドロンが尽力したそうです。

    

 ドロンの映画と言えばやっぱり「太陽がいっぱい」「地下室のメロディ」かな。「太陽・・・」の監督は「禁じられた遊び」のルネ・クレマン、名匠が付いてますね。「地下室のメロデイ」、ラストのプールにぎっしり札束が浮かぶシーン、茫然と視ていました。

    
         ジャン・ギャバンとは「地下室のメロディ」「シシリアン」「暗黒街の二人」で共演。

 「太陽がいっぱい」を視たルキノ・ヴィスコンテが「ドロンを使いたい」と言い「若者のすべて」に主演。ドロンは『どうやって泣くのか どうやって笑うのか、ヴィスコンテ監督に教わった』『俳優は役を演じる!のではない、役を生きよ!と教わった』。

    
         左からチャルズブロンソンアランドロンウルスラアンドレス三船敏郎

 ドロンのCMでおなじみの「ダーバン」。ダーバンのLLサイズが私にはピッタリ!なので贔屓にしています(笑) CM出演は、映画「レッド・サン」で三船敏郎が口説いたそうです。「ブロンソンはマンダム、俺はサッポロビール。あんたもやってみろ」と。

 引退の記者会見でドロンが記者に問いました、「私が死んだらどう書くか?」と。記者はみな「サムライが死んだ」と言ったそうです。彼にとって最も印象深い映画は「サムライ」なのでしょうね。ただサムライに対する理解はステレオタイプに過ぎますが・・・


    

 ドロンの手に年齢が顕れていました。その手をもみながらドロンは語ります。
 『ある友人が、ドロンは総てに才能がある、幸福になること以外は!と言いました』
 『私はゾッ!としました、それが真実だったから』。
 『ド・ゴールが言いました、老いるということは船が難破するようなものだ、と』
 『そのように私も難破します。いずれ死にます』。
 『私は偽善を憎みます』との言葉はドロン流には『犬が好きです』と同義のようです。
 ドロン邸には35匹の犬の墓と教会があり、自らもそこに埋葬される由。


    

 或るブログに「八方美人ではいけない」「偽善によって自分らしさを失いたくない」旨が記されていました。誰しも自らを偽善者とは思っていますまい。しかしそう自戒する、しないは大きく異なります。然り!ながら・・・容易ならざることではあります。




【補遺】…022.11.6 記
  このブログ記には しばしばお訪ねがあります。
  ドロンの名で検索され ついでに?こちらも訪ねてこられるのでしょうか。
  この項に最後にコメントされたRarudoさん。たぶん同窓 それも同時期に One purpose.(笑)
  どうされているかなぁ… ていつも思っています。
  グレン・グールド「トルコ行進曲」を! … 軽快で超ハイテンポのこの曲もグレ・グールドが弾くと優しい。


 

過去ログ目次一覧
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19 コメント

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おはようございます (ふき)
2018-11-09 05:38:35
焦りました
デーさんのラストメッセージかと思いました
それにしてもデーさんの卓越した文章力 
ブログ界の『アランドロン』みたいです
人気のブロガ―さんである事うなずけます

ここに書かれてある映画も 私は殆ど観ているのではないかな
ただ若い時の私は醜男好み 今は違いますよ『美しい男』が好きです
故にアランドロンの過去も『今』も 心乱れる事はないのですが
それより
ロミーシュナイダーが好きで
『夕なぎ』はそらんじるほど観ています
ドロンとの恋は記憶にありますが
デーさんが書かれたくだりを改めて読ませて頂くと
なんか切なく素敵で胸が痛みます
Re : ふきさん (デ某)
2018-11-09 10:01:21

ふきさん
コメントありがとうございました

> 焦りました デーさんのラストメッセージかと思いました
そう言われれば・・・とタイトルを「老優の・・・」にかえました
私もブログはどんどん減らし、
一つ一つをラストメッセージのつもりで記したいのですが....

> 卓越した文章力 ブログ界の『アランドロン』みたいです
> 人気のブロガ―さんである事うなずけます
身に余り過ぎるお言葉....心臓がちぢみます
不人気をかこつブログ、自己嫌悪に陥いるほどで、あり得んドロン!かな

> ここに書かれてある映画も 私は殆ど観ているのではないかな

ふきさんが欧州をボヘミアンされていた頃、
英・仏・独・伊....映画に登場するような人々にリアルに触れてはったことでしょう。
そのあたり、ブログでもっと回想いただければと思います。

> ただ若い時の私は醜男好み 今は違いますよ『美しい男』が好きです
とうちゃんさんは その端境期?に現れた美男子であったということですね

> ロミーシュナイダーが好きで『夕なぎ』はそらんじるほど観ています
イブ・モンタンがまた渋い美男で....妬けましたわ

> ドロンとの恋は記憶にありますが・・・なんか切なく素敵で胸が痛みます

葬儀を取り仕切った後、葬儀を欠席したドロン....そこにロミーへの深い想いが見えます。
なお ミレーユ・ダルクについてドロンが語った言葉を本文に補筆しました
太陽がいっぱい (コン)
2018-11-09 10:16:59
太陽がいっぱいだけ見ました。
特に感動したわけでもなく、アランドロンて、この人か、こういうのが美男子というのが、と覚えたくらいです。

このデ某さんの日記でアランドロンの幼い日を初めて知りました。そうだったのですね。乗り越えて世界的に有名な俳優になられてよかったですね。
デ某さまへ (くりまんじゅう)
2018-11-09 13:07:11
日本のアラン・ドロン デさまこんにちわ。
歳を重ねたアラン・ドロンを私も観ました。多くの日本人が
そうだと思いますが私も 太陽がいっぱいで初めて彼を見た若い日に
仏にはなんと美しい男がいるのか 行かねば!と思ったものです。
しかしその後 安いところで手を打ったため未だに仏へは
行ってないです。リノ・バンチュラ ジョアンナ・シムカスと共演した
冒険者たち も好きな映画です。太陽が・・も冒険者もどちらも
素晴らしい映画音楽と共にいつまでも心に残っています。

ジャン・ギャバンと共演の 地下室のメロディー シシリアン
も好きな映画です。ギャバンと共演ではなぜかドロンは
軽薄な若者といった印象を受け ギャバンの存在が
大きく見えます。ギャバンの吹き替えが渋い声の
森山周一郎氏だからもきっとあります。

このインタビューでは多くの女優との数々の女性遍歴も語りました。
最後の恋人ミレーヌ・ダルクの死が 彼の年齢からも相当辛かったようですね。

彼のキャリアは ルネ・クレマン ヴィスコンティ メルヴィルなどの
優れた監督に巡り合った幸せもあると思います。
滅多におらぬほどの 美しい俳優に出会った監督たちも
創作意欲が湧いたことでしょう。デさんが載せておられる
↑歳を経たドロンの手にも注目しました。同じ時代に活躍した
ほとんどの俳優女優さん達が鬼籍に入り 健在の方たちも引退しました。

83歳のドロンを見て 太陽がいっぱいのトムを演じた
俳優さんと すぐには分からない程ですがこれも彼のキャリアの
一つとして よくカメラの前に立ちインタビューを受けてくれたと
私たちオールドファンは感謝したことでした。
アラン・ドロン (いせえび)
2018-11-09 14:29:15
こんにちは。
最初、パッと見たときは分からず、文章を読み返し、写真の目と口元でアラン・ドロンと気が付きました。
正直言ってドロンは好きな俳優ではありませんでした。
「太陽がいっぱい」などを見て、彼の美貌の奥にひそむ卑なものを感じていたからです。(やっかみもあるのでしょうね(^^))。
「地下室のメロディ」「山猫」「冒険者たち」なども、彼よりも映画の魅力で見たものです。
ミレーユ・ダルクとの映画はフランシス・レイの名曲「栗色のマッドレー」の音楽でしか知りませんでした。
この番組は知りませんでした。
83歳になった彼が、何をどのような表情で語ったのか、再放送で詳しく知りたいと思います。
マイナーなコメントなので、迷っていましたが、ポチします(^^;)。
月一などとおっしゃらず、週一で願いたいものです。
老いても男前! (pukariko)
2018-11-09 14:44:20
こんにちは。
一番最初の写真、一目でわかりました。
老いてもやっぱりきれい!です。

中学の頃だったか、
友達に「アラン・ドロン、知らないの!」とバカにされた記憶アリ。
それからは淀川長治さんの番組でせっせと見ましたが、
「太陽がいっぱい」はよかったけど、他は・・・。

男前よりはポール・ニューマンとかマックィーンのほうが好きだったなぁ。
Unknown (Anne)
2018-11-09 15:18:50
アランドロン!
多分テレビで太陽がいっぱいは見たことあるかも!
あるかも…位の印象です(^◇^;)
中学生位からスクリーンミュージックなんかを聞くようになると、CDには必ず入っていて(*^▽^*)
だから知っている感じ!
チャールズブロンソンもコマーシャルだけ知ってる(≧∇≦*)

そんなであまり関心は無かったけれど、年をとっていても素敵ですねえ( ´艸`)
Unknown (mikihana)
2018-11-09 18:54:21
アランドロンは私の世代では誰でも知っていますが
私は一度も彼の映画を見たことがありません。
CMあ懐かしくて、時代を感じます。
今日のブログに出ている俳優さんの名前を見て
むか~~し読んでいた「スクリーン」という雑誌を思い出しました。

Re : コンさん (デ某)
2018-11-09 22:08:06

コンさん
コメントありがとうございました

> 太陽がいっぱいだけ見ました。
> アランドロンて、この人か、こういうのが美男子というのが、と覚えたくらいです。

井上章一さんに「美人論」という著があります。
美人の規準は地域、時代により変容しますが、「美男」はどうなんでしょうねぇ

> アランドロンの幼い日を初めて知りました。
> 乗り越えて世界的に有名な俳優になられてよかったですね。

少年時代の鬱屈は今も!ドロンの精神世界に影響を与えているように思います。
ドロンが「乗り越え」た側面はあったでしょうが、
それ以上に「時代がドロンを求めた」のではないでしょうか。
時代の空気を敏感に嗅ぐ巨匠(映画監督)がドロンにその答を見い出したと・・・。
Re : くりまんじゅうさん (デ某)
2018-11-09 22:56:25

くりまんじゅうさん
コメントありがとうございました

> 日本のアラン・ドロン デさまこんにちわ。
じょ、じょだ~んはよし子さんで お、お願いします

> 歳を重ねたアラン・ドロンを私も観ました。

私、彼のファンではなかったのですが、番組予告から注目していました。

> 太陽がいっぱいで初めて彼を見た若い日に
> 仏にはなんと美しい男がいるのか 行かねば!と思ったものです。

女性とのちがいかもしれませんが、ドロンに「美」を感じたことは 私は一度もありません。
でもそこはくりまんじゅうさんは女性、胸ときめかれたのですね

> その後 安いところで手を打ったため未だに仏へは行ってないです。
フランスに「行かねば」との間で どのような葛藤?を経て手を打たれたのか・・・ナゾです

> 冒険者たち も好きな映画です。
> 太陽が・・も冒険者もどちらも素晴らしい映画音楽と共にいつまでも心に残っています。

60~70年代は 「サウンド・トラック」が当たり前に!注目されていました。
今の時代、音楽が印象に残る映画が意外に少ないのは なぜでしょうねぇ。

> ギャバンと共演では なぜかドロンは軽薄な若者といった印象を受け 
> ギャバンの存在が大きく見えます。

ものの見方、裏表の関係ですね。
ギャバンがドロンを引き立てる一面と、ドロンがギャバンを引き立てる一面。
そのコントラストがキャスティングの妙で、日本語の「配!役」がまさに言い得て妙です。

> このインタビューでは多くの女優との数々の女性遍歴も語りました。
> 最後の恋人ミレーヌ・ダルクの死が 彼の年齢からも相当辛かったようですね。

遍歴はあれど、交際した女性を死ぬまで愛するところがドロンのドロンたる真骨頂でしょうか。
はすっぱな印象とは裏腹に
「疎んじられていた」幼少期の愛情への飢餓感がそうさせているように思います。

> 彼のキャリアは・・・優れた監督に巡り合った幸せもあると思います。

偶々に見えつつも 監督達の時代への嗅覚がドロンを発見、発掘したように思います。
そうした「時代の必然」が解きほどかれる番組でありました。

> 歳を経たドロンの手にも注目しました。
やはり「手」に気づかれました? 首はマフラーで隠せても手は・・・
私も時々、ハンドルを握る私の手を見て・・・「老いた手になったなぁ」と(笑)

> 同じ時代に活躍したほとんどの俳優女優さん達が鬼籍に入り 健在の方たちも引退しました。
ドロンが何度も「〇〇も死んだ」「この映画に出た人で生きているのは私と〇〇ぐらい」と
生きていること、生き残っていることの寂寥感、孤独を語ったのが印象に残ります。

> 83歳のドロン・・・太陽がいっぱいのトムを演じた俳優さんと すぐには分からない
それはもう半世紀を経ているのですから・・・

> よくカメラの前に立ちインタビューを受けてくれたと 
> 私たちオールドファンは感謝したことでした

日本のスタッフだったから!かもしれません。
全盛期、とりわけ日本で人気が高かったことにドロンは格別の好意をもっている風でしたからね。

それにしても・・・くりまんじゅうさんと同世代感を共有できて嬉しかったです

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