猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

悪の偶像

2020-07-12 22:52:56 | 日記
2019年の韓国映画「悪の偶像」を観に行った。

清廉なイメージで庶民の絶大な支持を得ている市議会議員ク・ミョンフェ(ハン・
ソッキュ)の息子ヨハン(チョ・ビョンギュ)が、ある夜、飲酒運転中に人をひき殺
してしまう。しかも自宅のガレージには、ヨハンが運び込んだ身元不明の被害者の
血まみれ死体が転がっていた。事故の瞬間を誰にも目撃されていないことをヨハン
に確認したミョンフェは、思い悩んだ末、死体遺棄の罪を免れるために死体を事故
現場に戻し、車を処分した上で、ひき逃げ犯としてヨハンを自首させた。そして次
期知事の最有力候補であるミョンフェは、イメージダウンを最小限にとどめるため
の記者会見を行った。ところが、被害者は小さな工具店を営むユ・ジュンシク(ソ
ル・ギョング)の息子であり、一緒にいたはずの息子の妻リョナ(チョン・ウヒ)が
行方不明になっていることが判明する。不都合な事実が明るみに出るのを恐れたミ
ョンフェは裏社会の探偵を使ってリョナを見つけ出そうとする。一方ジュンシクは
リョナが息子の子供を妊娠していると知り、彼女を捜し出そうと心に誓う。

韓国を代表する演技派スターであるハン・ソッキュとソル・ギョングの共演による
サスペンス。ある夜起きたひき逃げ事件。それはただのひき逃げではなかった。エ
リート政治家であるミョンフェの息子ヨハンは、自分が車ではねた被害者がしばら
く息があったことを知っており、被害者を自宅まで連れ帰っていた。もしもヨハン
がまだ生きていた被害者の遺棄を謀った事実が明るみに出れば、ヨハンは殺人犯と
なり、ミョンフェ自身の政治生命も絶たれてしまう。その発覚を防ぐために裏社会
の探偵を雇ったミョンフェは、事故現場に居合わせていたに違いない"消えた目撃
者"リョナの捜索を開始する。一方被害者の父親ジュンシクも息子の妻であるリョ
ナの行方を追う。加害者の父と被害者の父はそれぞれのルートでリョナを捜索しな
がら、闇の中に足を踏み入れていく。
本来は出会うはずもなかったエリート政治家としがない労働者である2人の父親。
知的障害のある息子を溺愛していたジュンシクは、息子を死なせたヨハンに怒りを
ぶつけるが、知事選が近いミョンフェはヨハンに執行猶予がつきそうだと知って安
堵する。リョナという女性はどうして知的障害のあるジュンシクの息子と結婚した
のだろうと思っていたが、彼女は中国出身の不法滞在者で、韓国に住むために結婚
証明書が欲しかったのだとわかる。物語は中盤からこのリョナの存在が非常に重要
になってきて、ミョンフェとジュンシクの運命が変わっていくのがおもしろく、画
面から目が離せない。
とにかく物語は複雑に絡み合っていて、サスペンスだけでなく人間ドラマの側面も
あり、よくできた映画だと思った。ただ少し詰め込みすぎの感もあり、後でよく考
えないとわからないシーンもいくつかあった。ハン・ソッキュとソル・ギョングの
演技はもちろんだが、リョナ役のチョン・ウヒもすごかった。リョナの異父姉がジ
ュンシクに「リョナは怪物よ。人間の手には負えない」と言うシーンがあるのだが、
リョナはまさしく怪物である。生命力や人を恨んだり憎んだりする気持ちや復讐心
がとても強く、生きるためなら殺人もいとわない。でもこんなモンスターのような
人間は実際にいるのかもしれないと思わせるリアリティがあった。
結局ミョンフェの存在も、ジュンシクの人生も偶像であったのだと思った。そして
それを気づかせる結果になったのがリョナの行動であるというのが皮肉だと思った。
とてもおもしろかったし、久しぶりにハン・ソッキュの主演作を観られて嬉しかっ
た。




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