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今回は、血液抗凝固薬および抗血小板薬の服用と歯科治療について書きます。

いずれの薬も、血液をさらさらにする薬として、服用されている方が非常に多い薬です。

これらの薬を服用していると、出血が止まりにくい傾向があります。

主に次のような疾患の治療や予防のために服用します。
●静脈血栓症
●心筋梗塞
●心房細動
●脳卒中
●人工弁置換後
●冠動脈バイパス術後
●ステント留置後
など

以前は、歯科治療で抜歯などの観血処置(小手術)を行う場合には、術後出血を予防するために、これらの薬を休薬あるいは減薬することが広く行われてきました。

しかし、ワルファリンの服用を中断することにより、約1%に重篤な脳梗塞による死亡例を誘発する危険があることが報告されています。


日本循環器学会では2004年に「抗凝固・抗血小板療法のガイドライン」を作成しており、「抜歯はワルファリンを原疾患に対する至適治療域にコントロールした上で、継続下での施術が望ましい」としています。

ところが、歯科においては、このようなガイドラインが長年存在せず、医療現場では混乱を招いていました。

2010年に、日本有病者歯科医療学会が中心となり、「抗凝固・抗血小板療法患者の抜歯に
関するガイドライン」が策定されました。

このなかで、次のように明記されています。

●「ワルファリン服用患者で、原疾患が安定し、PT-INR が治療域にコントロールされている患者では、ワルファリンを継続投与のまま抜歯を行っても重篤な出血性合併症は起こらない(エビデンスレベルⅠ)。なお、肝疾患等の止血機能に影響を与えるような異常が存在する患者では注意が必要である」(推奨グレードA)

●「抗血小板薬服用患者では、抗血小板薬を継続して抜歯を行っても、重篤な出血性合併症を発症する危険性は少ない(エビデンスレベルⅡ)。また、十分に局所止血処置を行うことが推奨される(エビデンスレベルⅥ)」(推奨グレードB)


つまり、抜歯の際しては、原疾患をコントロールした上で、基本的に抗凝固・抗血小板薬は服用を止めずに施術するということが明記されました。

PT-INRとは、プロトロンビン時間の国際標準比のことであり、ワルファリン服用者の血液の固まり易さを調べたものです。

これが、欧米人では3.5~4.0以下、日本人を含むアジア人では3.0以下であれば、ワルファリン継続使用での抜歯が可能であるとされています。

尚、抗血小板薬についてはRT-INRは適用されません。

かなり、専門的な内容ですが、抜歯に伴う術後異常出血は、血管や顎骨の損傷によるものがほとんどを占めており、通常の術後出血は、縫合や圧迫などの局所止血で十分に対応可能であるとされています。

患者さんにおかれましては、抗凝固薬や抗血小板薬を自己判断で中断したりすることの無いように注意しましょう。

また、抜歯後の術後出血が心配な方は、遠慮せずに歯科医院へ連絡するようにしましょう。



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