とうとう、その日がやってきた...最終編 | 私のイタリア時間

私のイタリア時間

イタリアに住みはじめて、20年もの月日が経ちました。
イタリアでの何気ない日々。流れる時間の中で起こる、ふとした出来事や思い。
このブログでは、そんな日常を1枚の写真と共に書き綴っています。




いよいよ、試験に突入です。



車に乗り込むと、

身分証明書の提示を求められました。


「セッティングしてね。」とひとこと言うと、

試験官は何やら書類に書き込んでいましたが、

その間に

座席を合わせ、バックミラーを調節し、

シートベルトを締めると

「あ、その赤いボタンの説明をして!」

いきなり、試験が始まりました。


緊張する暇もありません。


試験の内容は、全部で3段階。


最初に、口頭で、

学科試験の内容を試されます。


その後、

路上となりますが

縦列駐車や方向転換、バック移動なども

合間に試されます。


「準備が出来たら、行って!」


そうして、

いきなり出発したわけです。


どこに行くのか、全く見当もつかぬまま、

言われた通りに走るわけですが、

日本の路上と確実に違うのは、

ルールを守らない人たちが

想像以上に多いこと。


予測のつかない動きを見ながら、

標識を意識し、

かつ、

ギアのチェンジやら減速やら、

やることがやたら多く、

兎にも角にも、

落ち着いてなければ、

どうにもこうにもなりません。


教習中にも、何度もやられました。


さっきまで駐車していたクルマが、

ウィンカーも出さずにいきなり発車し始める...だとか

自転車が車道を逆走してくる...だとか、

横断歩道のないところをのんびり渡る歩行者...だとか。


そんなのが無いように、ただただ祈りつつ、

車は進んでいきます。


試験官のシニョーラは、

女にというよりは、男に優しそうなタイプで、

だからというわけでは無いですが、

口答えだけはしないでおこう...と

直感で思いました。


「あ、そこを右にね!」


と言われて、

それがあまりにも急で、

減速が間に合わず、ようやくの思いでギアをチェンジし、

勢いで、角を曲がると、

「角はもっと、ゆっくりと回らなきゃ...」


ぼそぼそ、ブツブツ、

ぼそぼそ、ブツブツ...


シニョーラが言い始めました。


「ハイ!」


何も考えずに私が日本語で、こう答えると、

意外に意外で

静かになったのでした。


「何も指示を出さない時は、まっすぐね。」

「ハイ!」


「あ、ロータリーじゃなくて、右ね!」

「ハイ!」


イタリア風に、

だんだん、

「ハイ!」のHが抜けて、

「アイ!」と返事をするようになり、


「あ、そこで止まって!」

「アイ!」


「ここで縦列駐車ね。」

「アイ!」


「ついでに、方向転換して!」

「アイ!」


ここで、対向車が来て、

ブレーキを踏んだ瞬間、

エンストします。


それでも、

何くわぬ顔をして、

エンジンをかけ直し、


「あ、左折する時、右を確認した?」


見ちゃいなかったですが、

「アイ!」


エンストしたことは、

何も言われませんでした。


私は、

ただただ、

「アイ!アイ!」と答えるだけの人間と化し、

そうして、

気がつけば、

元の駐車場に戻ってきていました。


シニョーラは何も言わず、

「あ、この紙の自分の名前の横にサインして!」

それだけ言うと、

最初に渡した身分証明書が手元に渡されました。




何が何だかわかりません。




よく見ると、

手元に返されたアイデンティティカードの間に

免許証が挟まれていました。



{3E69BBC2-8D92-483F-9411-4FFA0983CB93}




奇跡      です。


「アイ!アイ!」が効いたとは思っていませんが、

その日、

私に、奇跡が起こったのでした。





長い長い道のりでした。



まるまる半年かけての

一つの大きな冒険が

こうして幕を閉じたのです。






⬇︎今日もありがとう!


最後までお付き合い、どうもありがとうございます。