国鉄民営化とは何だったのか?鉄道省から国鉄へ 第3話 ゼネスト準備にいらだちを隠せぬGHQ | 鉄道ジャーナリスト加藤好啓(blackcat)blog

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福祉と公共交通の視点から、鉄道のあり方を熱く語る?
blackcat こと加藤好啓です。
現在の公共交通の問題点などを過去の歴史などと比較しながら提言していきます。
随時更新予定です。

久々に、アップさせていただ事思います。

はじめに

今回は、GHQが公務員のスト権を剥奪し、国鉄を公社化させようとしたきっかけの一つとなった、ゼネストに関するお話をさせていただこうと思います。

ゼネスト、正確にはゼネラルストライキ

コトバンクを参照しますと、ゼネラルストライキについて書かれていましたので、引用してみたいと思います。

一産業部門,一地方または一国全体にわたり同時的,波状的に行われるストライキである。ゼネ・ストと略称される。これは単なる経済的要求をこえて労働者階級の政治的意志表示の武器として利用されるので,それ自体重大な政治問題とされる。

と有りますように、このストライキは、重大な政治問題で有り、GHQは中止に向けて積極的に説得を行いますが、上手くいかず、既に皆様もよくご存じだと思いますが、マッカーサー声明による、スト中止命令で幕を引くことになるわけです。

その辺を順次見ていこうと思います。

 

民主化の肝とした労働運動が、共産党の影響で先鋭化

 

元々、労働組合は民主化の一環として導入されたものでしたが、戦前は非合法政党として、取り締まりの対象であった、共産党が合法化され、それまで囚われの身であった、 徳田球一 ら共産党幹部が出獄、現在は否定しているようですが、 連合国軍を「解放軍」と規定 しており。

労働運動を通して、共産党は各組合にも浸透していくこととなりました。

特に、当時40万人近くの定員を擁していた国鉄にも共産党組合員は入り込み国労は当初から、共産党と共産党以外の左派、右派の玉石混淆の組織となり、その後分裂を繰り返すことになるのはご存じのとおりです。

国労では、その後2・1ゼネストでは最高責任者の一人となり、1月31日のスト中止命令でラジオでゼネストの中止を呼びかけています。

労働組合の勢力が次第に団結の方向に進むにつれ、内閣打倒・賃金値上げなどをスローガンにした2・1ゼネストを計画するに至り、今までは、組合委運動に関して干渉してこなかったのですが、国鉄に対し情勢を報告するように司令部(GHQ)側から連絡が入るようになりました。

当初は、司令部も組合自体が合法であり、民主化政策の一貫として導入したものであるからとして、情報は集めるものの積極的にそれをどうすると言うことは無かったようです。

しかし、昭和21年1月15日になり、組合がゼネストの第一段階として業務管理を行うことを宣言したことから、司令部の方でも雲行きが怪しくなってきました。

この情報を受けた第8軍側は、通信が円滑に行われなければ鉄道は円滑に動かせないとして、第8軍から総司令部に通信管理を止めさせるように正式な申し入れがあったそうです。しかし、組合側は、労働運動に関しては、GHQ内の経済科学局【ESS】の所管であるとして拒否したと言われています。

この頃の組合の勢いが如何にあったかをうかがわせる話です。

結果的には、鉄道における通信管理は行われる事はなかったのですが、いよいよゼネスト実施と言う段階なってくると、国内でも騒然としてきました。

なにせ、当時は食糧の輸送などは鉄道が握っており、言い換えれば鉄道がストップすることで物資が一斉に止まることになるわけです。

ついに、総司令部も、スト中止に動き出します。

 

ゼネスト中止を勧告するGHQと官公労
 
経済科学局のマーカット少将が1月19日に、組合の代表者を呼んで。軍としてはストライキ無しで終わることを望む、ストライキは占領下の治安を害するものとして認められないと通告しますが、組合側は文書で書かれたもので無ければ動かないと反発、マーカット少将は、文書では出さないとして、突っぱねることとなり、ひとまずは終了。
再び1月25日再訪し、ゼネスト中止は受け入れられないとして反発します。
さらに、井伊弥四郎は、要求が入れられない限り中止は出来ないし、組合員も納得しない、中止を勧告するとさらなる混乱を招くとして反発しています。
国労の委員長鈴木誠一は、スト中止の条件として
  • 政府が要求を入れること
  • 政府を変えること
  • マッカーサーが中止命令を出すこと
結果的には、ゼネストは中止しないという方向で動いていくのですが、これに対して占領地域の治安を守ることを主たる任務とする、第8軍司令官、アイケルバーガー中将は、マッカーサーに書簡を送っています。
 

第八軍が最も恐れたのは、鉄道網の破壊

 

アイケルバーガー中将は、治安維持の立場から、「100人がトンネル破壊などの行為を行えば日本占領を崩壊させることが出来る」と行った内容の書簡を送ったのでした。

第八軍が最も恐れたのは、組合員による破壊活動でした。

トンネルや橋梁などが破壊されれば、暴動が起こっている地域に軍を移動させることも出来無くなることを恐れたのでした。

こうした方針を受けて、ゼネストの中止は既定事項となり、1月26日に井伊弥四郎ら労組代表がゼネストの中止は出来ない旨を回答したところ、労働課長のコーエンは、中止しないことには収拾は難しいと言うことで迫りますが、既に議論は平行線で有り、これまでは組合の応援をしてくれていたと思われていたろう、組合は困惑することになります。

当時の組合は、共産党により介入が大きく、国鉄を1日止めると回復するのに10日以上かかるという、まして、食糧輸送などは鉄道を使って行われており、鉄道が止まればたちまち東京の生活は立ち行かなくなることになります。

司令部の中でもいよいよ、占領政策自体をひっくり返される恐れがあるとして、ストはさせない方向に固まりつつありました。

1月30日には経済科学局労働課に井伊弥四郎ら労組代表が呼ばれ、ストの中止を強く迫られますが、組合側は納得せず、同日に全逓・国労とも賛成多数でストライキに突入することを確認、いよいよゼネスト突入の火蓋は切られることになりました。

 

マッカーサー声明による、スト中止命令

1月31日、緊張が起こるなか、マッカーサーは中止声明を出すことを決定

14:30頃にマッカーサーは声明を発表しました。

マッカーサー元帥の声明は午後4時53分に流されています。

共産党も、同日午後6時半から声明を発表しています。

こうして、組合はストライキを撤回せざるを、なって仕舞いました。

 

続く

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日本国有鉄道研究家・国鉄があった時代

 

 

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