第6話 未払賃金立替制度
★店長と本部の話
吉田 規(よしだ ただし)店長は本部の担当者とバックヤードで話し込んでいた。
吉田店長が言うには昨日からオーナーと連絡がつかないという。
本来なら自分と交代で夜勤に入る予定だったのだがこなかったので自宅にも行ってみたが、留守であったと言う。
可能性のありそうな所には片っ端から連絡をとったが、誰も所在はわからなかった。
しょうがないので本部の担当者に来てもらっていたのである。
「連絡がついていないのは昨日の夜から、今日の昼間にかけてですよね?」と担当者
「そうです。でも今までこんな事がなかったので心配してるんです」と店長
「でもあの人のことなんですから、シフトを間違えて飲みに行ったまま、羽目をはずしちゃたんじゃないですか?今頃は自宅に戻ってるとか?」と担当者
「ないとは言えませんね。あの性格ですから・・・」と店長もその可能性は否定出来ない。
「でも!」と吉田店長は力強く言った。
「最近、様子がおかしかったことは確かなんです。経営がうまく行っていないことは私がよくわかっています。最近は従業員全員の給料も未払いが続いていました」
「なんですって!」担当者はビックリしている。
「それは本当の話ですか?」重ねて聞いてくる。
「はい、本当の話です」と答える店長
「ちょっと待って下さい。上司と連絡を取りますので・・・」慌てて席を外して本部に電話をかけに行った。
担当者が戻ってきて言った「未払い賃金があったのは知らなかったなあ・・・ この事を上司に報告したらとても驚いていました。実は本部からもオーナーは借金していたのですよ・・・ご存知でしたか?」
「え! 今、初めて知りました。未払い賃金が続いていたので苦しいとは思っていましたが・・・」
担当者「どうしてもっと早めに相談してくれなかったんですか?」
「オーナーに毎月、給料の事を催促するたびに、今、本部と相談中だから待ってくれと言われてしまって・・・ 本部が知っているものだとずっと思っていました」と店長
「本部と相談した結果、夜逃げした可能性が高いと私達はみています。我々の方でもオーナーを探しますが、ご協力していただけますか?」
「もちろんです。でもお店はどうしたら良いでしょうか?」
「お店は続けていて下さい。本部からも応援を送るように手配します。早めに連絡がつけば良いのですが・・・」
こうしてオーナーが失踪した中、吉田店長は営業を続けることとなった。
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