★コスモスの揺れ返すとき色乱れ 稲畑汀子
★頭痛の心痛の腰痛のコスモス 金子兜太
第1句、この句は写生句のお手本と見るだけではつまらないと思う。これは何と艶めかしい句かと思った私は俳句から余計なことばかり想像してしまう人間なのだろうか。
男女の駆け引き、あるいは再びこちらに向いてくれた相方にときめいた時は、誰しもある。
第2句、対称的な句だと思った。頭痛も心痛も腰痛もコスモスが目に入ることで、一瞬忘れる。しかも腰痛持ちは多分寝ているか、腰をかがめてコスモスを見上げる位置である。天に向かうコスモスに嫉妬している作者ではないか。
頭痛・心痛・腰痛と人間のてっぺんから下へ、痛みの種類を並べ、しかも心痛という実際の体の痛みではないものを真ん中に並べる。なかなか工夫した並べ方である。きっとかなり頭を悩まして頭痛をもたらした句ではないか、とクスっと笑えた。腰痛の作者には申し訳なかったかもしれない。
ひょっとしたらコスモスの形状を見て、「あの花は、頭が重く、風に揺らされで頭痛・腰痛が絶えないのではないか。そんな心痛に悩まされているのではないか」と我が身になぞらえて同情しているのかもしれない。それはとてもやさしい心根であろう。