正林寺御住職指導(R6.4月 第243号)
宗祖日蓮大聖人の宗旨建立会の月に、日蓮正宗では総本山客殿において教師補任式が執り行われます。
御法主日如上人猊下は「令和5年(2023)4月27日 教師補任式の砌」に、
「教師補任式は、別名を新説免許とも言い、本宗僧侶にとっては三世の大願にして、この新説免許を経て初めて高座説法が許される、まことに厳粛にして、重要な儀式であります。(中略)三世の大願たる本日の新説の式を機に、なお一層、教学の研鑚に励み、宗門の興隆発展に寄与するとともに、今日の新説免許における説法を充分に活かし、広布へ向けて、さらなる御奉公に励み、もって広大なる仏恩に報い奉るよう心から念ずるものであります。」(大日蓮 第928号 R5.6)
と御指南あそばされました。令和6年(2024)も4月26~27日に執り行われる予定です。本年、晴れてコロナ禍を乗り越え、「三世の大願」となる新説の式に登高座する若き富山の竜象(新説者)にお祝いのエールを送ります。
さて、「大願とは法華弘通なり」とは、御法主上人猊下が仰せの「三世の大願」につうじることであります。真の幸せをもたらすために、法華経文底下種の教えが多くの人々の生活に根ざし、心のより所となることで絶対的な幸福になるため、法華経を弘めることが大きな願いとなります。それが「大願とは法華弘通なり」であります。
釈尊が説かれた法華経の「法師品第十」に、
「薬王、当に知るべし。是の諸人等は、已に曽て十万億の仏を供養し、諸仏の所に於て、大願を成就して、衆生を愍れむが故に、此の人間に生ずるなり。
薬王、若し人有って、何等の衆生か未来世に於て、当に作仏することを得べきと問わば、応に示すべし。」(法華経319)
との教えから法華弘通の大願成就があります。その大願を成就するため、衆生を愍み御誕生あそばされたのが、外用は上行菩薩で内証が御本仏の宗祖日蓮大聖人です。
大聖人は大願について『御義口伝』に、
「大願とは法華弘通なり、愍衆生故とは日本国の一切衆生なり、生於悪世の人とは日蓮等の類なり、広とは南閻浮提なり、此経とは題目なり。今日蓮等の類南無妙法蓮華経と唱へ奉るものなり。」(御書1749)
と御指南であります。
この大願のもとに立宗宣言あそばされました。それから外用を払い本地を顕す発迹顕本あそばされ「はじめて法華弘通のはたじるしとして顕はし奉るなり」(御書1387)との御本尊を顕され、御本尊にむかって祈ることに絶対的幸福をもたらす信心、つまり善心を養うことができます。その善心が即身成仏につながります。大聖人は『御講聞書』に、
「善心とは法華弘通の信心なり。所謂南無妙法蓮華経是なり」(御書1845)
と仰せであります。この善心には、「広宣流布の大願」(御書642)と「願はくは我が弟子等、大願ををこせ」(御書1428)との確固たる発心が大事であります。
それはまさに「必ず四弘誓願を発すべし」(御書181)との御指南につながることが肝要です。
この大願を発して自行化他に精進することが末法のあるべき仏道修行となります。
反面、法華の宝塔とは異なる足代的存在の「阿弥陀如来の四十八願、薬師如来の十二大願」(御書690)等について、大聖人は『妙法曼陀羅供養事』に、
「此等の薬をつかはヾ病消滅せざる上、いよいよ倍増すべし。此等の末法の時のために、教主釈尊・多宝如来・十方分身(ふんじん)の諸仏を集めさせ給ふて一の仙薬をとヾめ給へり。所謂妙法蓮華経の五の文字なり。此の文字をば法慧(ほうえ)・功徳林(くどくりん)・金剛薩・(さった)・普賢(ふげん)・文殊(もんじゅ)・薬王・観音等にもあつらへさせ給はず。何(いか)に況んや迦葉・舎利弗等をや。上行菩薩等と申して四人の大菩薩まします。此の菩薩は釈迦如来、五百塵点劫(じんでんごう)よりこのかた御弟子とならせ給ひて、一念も仏をわすれずまします大菩薩を召し出だして授けさせ給へり。」
(御書690)
と、爾前諸経の「四十八願・十二大願」等は、法華弘通の大願よりも劣ることを御指南であり、末法では仙薬となる本門の本尊を信じ奉る題目の南無妙法蓮華経を唱えることを教えられています。
数十年後の未来に、日本の人口減少がささやかれるなか、信仰の寸心を改めて大願とは法華弘通なりとの信仰心を人口比率的に多くなれば、依正不二の原理により法界の絶対的な幸福は確立するとのことでもあります。一人だけでの信仰では限界があります。まさに、大願とは法華弘通なりである折伏行が必要です。折伏行が前進しなければ、謗法となる邪宗邪義が蔓延り、三災七難が起こることを大聖人は『立正安国論』に御指南であります。
御法主日如上人猊下は、「法華講連合会 第60回 総会」におかれて、
「世の中の人々が皆、正法に背き、悪法を信じていることにより、国土万民を守護すべきところの諸天善神が所を去って、悪鬼・魔神が便りを得て住み着いているためであるとし、金光明経、大集経等を引かれて、正法を信ぜず、謗法を犯すことによって三災七難が起こると仰せられているのであります。(中略)『立正』とは、末法万年の闇を照らし、弘通するところの本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法を立つることであり、正法治国・国土安穏のためには、この三大秘法の正法を立つることこそ、最も肝要であると仰せられているのであります。」(大白法 第1122号 R6.4.1)
と、『立正安国論』の大切な御書の極理を御指南あそばされました。
現在、邪宗邪義が蔓延するために、日本国の一切衆生の人口減少が加速しつつあります。戦後、一時期、昭和時代には人口が増加し憲法で信教の自由が保障されて、「今身より仏身に至るまで」(御書1843)の御授戒を受け、日蓮正宗に入信され本門の本尊を信じた題目の南無妙法蓮華経を唱える大聖人の正法に帰依する人も多くなり、仏法的な果報として経済も高度成長できたと察します。その後、平成になり本門戒壇の大御本尊から離脱した創価学会の「魂の独立」などにより正法正義から人口が減り、同時に平成には、その罪過によると考えられる日本での経済的なバブル崩壊が社会的にありました。
大聖人は『南部六郎殿御書』に、
「山家大師は『国に謗法の声有るによて万民数を減じ、家に讃教の勤めあれば七難必ず退散せん』と」(御書463)
山家大師である伝教大師最澄の言葉を引用されて、謗法の邪説を唱える声が多くなれば人口が減少することを警告あそばされております。まさに「体曲がれば影なゝめなり」(御書1469)であり、本門戒壇の大御本尊から離れ、正縁を結ばない行為は厳に慎むべき事であります。
そのためにも、御法主日如上人猊下が、
「本年『折伏前進の年』を勝利するためには、各講中ともに異体同心の団結をもって、弛まず行動を起こすことが必須であります。
すなわち、一閻浮提第一の大御本尊様ヘの絶対の確信を持って、一切衆生救済の誓願に立ち、妙法広布に挺身する断固不動の信心と実践活動、そして異体同心の団結こそ、折伏誓願達成の鍵であります。」(大日蓮 第938号 R6.4)
との御指南を異体同心して折伏前進することが非常に重要となります。
冒頭での御法主日如上人猊下の御言葉に、
「三世の大願たる本日の新説の式を機に、なお一層、教学の研鑚に励み、宗門の興隆発展に寄与」(大日蓮 第928号 R5.6)
との一説がありました。
過去の新説免許の折に、第六十七世日顕上人は、
「これからの宗門の布教ということにおきましては、とにかく御説法をする以上はなるべく聞く人に、よく理解をしてもらう、解らせるということが大切であります。したがって、四悉檀ということをよく心に掛けて、第一義の御本尊様を内容とする尊い御法門に対して、その人その人の機根における対治悉檀としての破折が必要の場合、あるいは為人悉檀としての、その人の色々な境界に応じての内容をやさしく説き明かしていくということもまた、考えなければならないのであります。
しかしながら、ともかく説者の一同が真剣に行いました。これを皮切りに、これから宗門の僧侶としてどこにおいても日蓮正宗の教義を正しく説法していくということの許可が、本日をもって与えられるわけであります。」(大日蓮 第641号 H11.7)
と、日蓮正宗の全国寺院教会の住職主管は、この御指南のもとに住持されています。拙僧も三世の大願である新説免許の高座説法を過去に許され補任状を賜りました。その後、末寺在勤から当寺の住職を拝命させていただき、毎月の指導は、御法主上人猊下仰せの「なお一層、教学の研鑚に励み、宗門の興隆発展に寄与」との御言葉を心に刻みさせていただいております。同時に、「三世の大願」である三世の過去・現在・未来にわたる、過去の出家以前にお世話になった方、出家当時から僧道を歩む過程でお世話になりご縁のあった全ての方々への恩返しでもあります。さらに、現在では当寺院に所属される法華講員の育成、そして折伏誓願目標に向けて折伏させていただいた方、またネット上でご縁を持つ方々への尊い仏縁や下種折伏と「一切衆生の恩」(四恩)を施す意味もあります。さらには未来において、末法万年尽未来際を含めた、いまだご縁のない方々への仏縁を結ぶための願いが、「三世の大願」であると存じます。
それはまさしく、広大なる仏恩に報い奉る「大願とは法華弘通なり」(御書1749)との御指南からです。そして、大聖人の『諌暁八幡抄』に仰せである、
「只妙法蓮華経の七字五字を日本国の一切衆生の口に入れんとはげむ計りなり。此即ち母の赤子の口に乳を入れんとはげむ慈悲なり。」(御書1539)
との実践行であります。その未来に「広宣流布の大願をも成就すべきなり」(御書642)との実現を確信しているからであります。『上野殿御返事』に「一時に信ずる事あるべし」(御書1123)と。
最後に、4月は宗旨建立会が奉修されます。宗旨建立は、まさに大聖人の御意「大願とは法華弘通なり」であります。
宗祖日蓮大聖人『諌暁八幡抄』に曰く、
「今(いま)日蓮は去(い)ぬる建長(けんちょう)五年(ごねん) 癸丑 四月廿八日(しがつにじゅうはちにち)より、今(いま)弘安(こうあん)三年(さんねん) 太歳庚辰 十二月(じゅうにがつ)にいたるまで二十八年(にじゅうはちねん)が間(あいだ)又(また)他事(たじ)なし。只(ただ)妙法蓮華経の七字(しちじ)五字(ごじ)を日本国(にほんごく)の一切衆生(いっさいしゅじょう)の口(くち)に入(い)れんとはげむ計(ばか)りなり。此(これ)即(すなわ)ち母(はは)の赤子(あかご)の口(くち)に乳(ちち)を入(い)れんとはげむ慈悲(じひ)なり。」(御書1539)