BOOGIEなイーブニング!

BOOGIEなイーブニング!

ベースの下手なベーシスト、ハッチのゆるーいブログです!

居酒屋でも会えるアイドル
ハッチライブ情報局‼︎‼︎


[EDDIE PUMPKIN'S HIGH]

7月22日(土)稲毛K's Dream
アベフトシ追悼公演
TMGE歌合戦
※エディパンの出演は20時20分から

8月6日(日)千葉ANGA
デカダンレトリヲレコ発
冥土インジャパン
※エディパンの出演は18時40分から

8月10日(木)三軒茶屋ヘブンズドア
詳細未定

9月30日(土)
詳細未定

12月10日(日)両国サンライズ
詳細未定



[しゃぶりなベイビーズ]

7月22日(土)稲毛K's Dream
※しゃぶりなベイビーズは19時40分から

8月5日(日)赤坂天竺
詳細未定

9月24日(日)
新松戸FIREBIRD



[the akimot's]

10月6日
稲毛K's Dream
目覚めたらすべてが燃えてしまった。
残ったのはその朝着ていたミッキーマウスのパジャマだけ。

悪夢のようだった。

色々と端折るが、要は7本あったエレキベース、全てを失ってしまった。

記憶を辿りながら所有していたベースを書き連ねていこう。

・FODERA NYC EMPIRE
・Rickenbacker 4003s
・Rickenbacker 4004L
・Rickenbacker 2050
・Musicman Stingray
・Modulus VJ-4
・GUILD B-240E

嗚呼、書き起こしただけで涙が出てくる。
もう二度と手に入らない機材ばかりではないか!

2月に予定していたしゃぶりなベイビーズのライブは断念した。申し訳ないがライブって状態ではなかった。寅さん、メンバー、関係者のみなさんごめんなさい。急遽代わりにベースを弾いてくれたスズモッツありがとう。

仮設住宅から新しい転居先が決まり、やっと音楽活動を再開する気持ちになり始めた時、とんでもない事に気がついた。

ベースがねぇ!
なんにもねぇ!

とりあえず高校時代の友人であるS先生に連絡を取り、面白いベースを組んでもらうことにした。だが、先生は忙しいのて、どうやらライブまでにベースの完成が間に合いそうにない。パテシエの彼は2月、3月は特別スペシャルデイ、国生さゆりバリに忙しいのだ。

目指すは3月21日のLarryzのライブ。それまでに新しい楽器とライブができる程度の機材を用意しなくてはならない。

ただし、お金はない。

恐らく人生最期のベースだよな。

とてもじゃないが、もう7本も買えないし。

星を見上げて、僕は考える。

終のベース。

これ一本でなんでもできるベース。

考えて考えて考えて、
考えて考えて考えて、
三日間それだけを考えて、ドキッ!丸ごと水着 女だらけの水泳大会の騎馬戦みたくポロリと出た答えは…

ジャズベだった。

なんて芸のない選択肢だろうか。

最後まで候補に残っていたのは、フェンジャパのプレベ、ヤマハのBBだった。
思えば買っちゃ売りを繰り返し、100本以上のベースが私の体を通り過ぎていった。プレベとBBはネックが扱いづらく、一度ジャズベのネックを体験してしまうと弾けなくなってしまう。

ジャズベと決めてしまったのだが、問題はここからだった。なにせジャズベと一言でくくっても色々なジャズベがあるからだ。私もジャズベは2本持っていた。モデュラスとフォデラだ。とくにフォデラは死ぬほど弾き易かった。コロナ禍でベースが弾けなくなり、ネックが反れまくっても、このモデュラスとフォデラは反れなかった。いや、モデュラスはカーボングラファイト製のネックだが、フォデラは普通に木製ネックなのだ。そんな優れてはいるが亜流も亜流、邪道も邪道なジャズベ2本を使っていたが、本家フェンダー社のジャズベを購入したことはなかったのだ。まるでAV女優としか付き合ったことがないような状態で最期に素人と純愛を貫くみたいな流れになってしまった。そうなるとフェンダー社のジャズベでも思い悩んでしまう。普通の62年製リイシューのジャズベだと普通でつまらないし、かと言ってバキバキの最新アクティブサーキットを詰んだジャズベも違う気がした。

そして私が選んだ終のベースは…

ジャズ・ベース誕生60周年を記念した2020年限定モデル、60TH ANNIVERSARY JAZZ BASSに、ROAD WORNレリック加工を施したモデル!ジャズ・ベースの誕生から60年周年を記念して発売された2020年限定モデル、60TH ANNIVERSARY JAZZ BASSに、ROAD WORNレリック加工を施したモデルをラインナップ。ネック・シェイプは60年代中期の仕様を忠実に再現したMID ʻ60S Cシェイプで指板アールは9.5インチ、ミディアム・ジャンボ・フレットを採用するなど、ヴィンテージなテイストは残しつつ、現代のプレイにも対応するプレイアビリティを実現。また、ヴィンテージ・スタイルの4サドル・ブリッジにはスレデッド・サドルを、ペグにはリバース・オープン・ギア・チューナーを採用することで、クラシックな美しさとロックな演奏性に加えて、チューニングの安定性を実現している。また、リアルな使用感を再現したROAD WORNニトロセルロース・ラッカー・フィニッシュが、本モデルの大きな特徴となる。

【Specifications】
●ボディ:アルダー
●ネック:メイプル
●指板:パーフェロー
●スケール:34インチ
●フレット数:20
●ピックアップ:60thアニバーサリー・ジャズ・ベース・シングル・コイル×2
●コントロール:ヴォリューム/トーン(2連同軸)×2
●ペグ:ピュア・ヴィンテージ・リバース・オープン・ギア
●ブリッジ:4サドル・ピュア・ヴィンテージ・スタイル・ウィズ・スレデッド・スティール・サドル
●カラー:3カラー・サンバースト

価格:¥165,000(税抜)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック


これの中古をメルカリで落札した。
空気を読まない販売者はモノで溢れかえった引越ししたての新居にツイードのハードケースで送り込んできた。

まだ、使ったことのないこのすでに年季が入った風の加工がしてあるメヒコのフェンダージャズベースなら、人生最期の一本として終われそうな気がする。

事実上もう2本目だけど。

自宅のトイレに縦横無尽に設置された、母親の転倒防止用の手すりを見ながら、俺は自問自答を繰り返していた。


本当にこのまま手すりに囲まれて安全に暮らしていればいいのか。


牙だ。

あの時、確かに持っていた、

野生の牙を俺は失っていた。


 新ババコ戦記で俺は新しい敵と出会った。

 新しい敵とは、勤めているビルの共同トイレのドアノブに水滴をつける奴らだ。ジャンボ鶴田にそっくりな3階のおっさんや若いチャラついたあんちゃん、そしてハゲたおじいさんなど、ほぼ全員がオシッコのあと手を洗い、その手をハンカチで拭かずにドアノブを握る。ドアノブにはアサヒスーパードライのような絶妙なしずる感が出るが、次に使う者は、その〝どんな成分が含まれているのか分からない水滴〟が手に付着してしまうという罰ゲームを背負わされる。

 俺はそれをあらかじめ用意したティッシュで拭いて回避していたが、おっさんが俺の目の前でドアノブを濡らした時に脳がパチンと音がして意識が変わった。


 コイツらバカは俺が教育しないと埒が明かない。


 オシッコやウンチをしたら手を洗い、濡れた手はハンカチで拭く。

 こんな幼稚園で最初に教わるようなことから教育して叱ってしてやらないとダメなのだ。ならば、店のルールをベタベタ貼っているあの口うるさいラーメン屋や居酒屋のごとく張り紙をしてやればいい。それもやつらが濡らしていたドアノブのすぐ横に。

 俺はチラシを自作し、それをドアノブに貼り付けた。最初こそこのチラシに水をかけたりと心無い抵抗にあったが、奴らも堪忍したのかいつのまにかドアノブが濡れなくなった。

 そしてついに普段は絶対にハンカチなど持たぬであろう安っいコナカのスーツを着たハゲオヤジまでもが得意げに手を洗いハンカチで手をパンパンと拭きトイレから出て行った。

 俺は感動した。飢饉に見まわれたアフリカの国に支援物資をただ送るだけではなく、現地で農業を教えた青年ボランティアのような気分だ。


 未来へ続く轍。


 明日へかける虹。


 輝ける未来へ。


 そのぐらいの清々しい気分だ。

 居酒屋のトイレのピースボートのポスターより、俺のチラシには効果があったのだ。

 だが、その効果とは裏腹に俺のチラシは確実にダメージを追っていた。想像してみてほしい。毎日、毎日、何度もザ・ベストの表紙のようにハンカチを持たない野蛮なやつらに水をかけられるのだ。

 俺のチラシは不潔なおっさん達の恨み辛みの全てを背負い込み、コンバットアーマーダグラムのように最期は燃え尽きていた。



 これだけダメージを受けるということは、それだけこのチラシが効いてる証拠である。キックボクシングのセコンドみたいに「ロー効いてるよ、効いてる、効いてるよ」としつこくアドバイスしたいほどだ。


 そろそろ新型コンバットアーマーの投入だ。だが、安心してほしい。前のデータは取ってある。

 サマリン博士!太陽の牙ダグラムは量産化に成功したのです。

 そして、これは俺からのプレゼントだ。毎度このドアノブのシズル感に悩まされている諸君らにも無償でこの商品「ドアノブシズル化防止装置しずるくん」を提供しよう。


ドアノブシズル化防止装置しずるくん

↓↓↓





 この画像をすぐさまダウンロードし、プリントアウトしてトイレ内のドアノブの横に貼ってくれたまえ。

 たちどころにドアノブのシズル感は無くなるだろう。

 しずるくんがボロボロになったらまたここに来るがいい。

 君は安っぽいラーメンは好きか?


 僕は大好きだ!

 日本の安いラーメンを追い求める旅、ラーメンチープトリップの始まりだ。ここでは普段食べられないような〝ついでにあるラーメン屋〟を求めようじゃないか。そう、あのとき海の家で食べた、あのチープなラーメンを探して。


 あれは、2013年の冬だった。

 友人の厄除けに付き合った帰り道、東武大師線西新井駅のホームに予期せずドーンとラーメン屋が展開していた。


 美味そうな麺を茹でる香りがそこらじゅうに充満している。それこそ巷に立ち食いそば屋はあれど、立ち食いラーメン屋は少ない。秋葉原駅の脇にあった「ラーメンいすず」は2000年に姿を消した。築地の「井上」も2017年に火事で焼失。ほんと思いつくのは大塚や千駄ヶ谷の「ホープ軒」、門前仲町の「らーめん弁慶」、そしてこの日であった西新井の「西新井らーめん」ぐらいしかない。ましてやシンプルな正油ラーメンを食べさせてくれるのは、この西新井らーめんぐらいであろう。それも駅のホームにあるという実に昭和なストロングスタイルだ。



 お姉さん2人で回しているのだが、おそろしく機嫌が悪そうで、注文するのもびっくびくだったと記憶している。

 しかし、厨房さばきはまるで三田英津子&下田美馬のラス・カチョーラス・オリエンタレスの老獪なタッチワークのごとく見事な連携プレイで次々とラーメンを作っていく。


 食べる場所は店をくの字に囲むホーローのカウンターのみ。奥行きのあるカウンターだが背が高く、まるで自然の摂理のように女や子どもを自動的に排除している。実に潔い。


 日能研のキッズたちよ、こいつを食べたきゃ大人になるしかねぇんだぜ。


 変な時間(16時)に入店したので比較的空いてはいたが、客が途切れることはない。券売機でラーメンと大盛券を買い、オドオドしながらラスカチョ姉さんに渡す。


 「ハッチ、こーのーやーろー!」と言われるかと思ったが、姉さんたちは猛烈に忙しいだけで怒っているわけではないようだ。むしろ優しいかもしれない。味わい深きプラスチックのコップにお冷を注ぎ待っていると、ものの3分で


 着丼!



 実にシンプルならーめんが出てきた。ホーローのカウンターにあるデカいコショーをばふばふ振りかけて、琥珀色のスープを一口すする。美味いより先に〝熱い!〟が先に来た。1月のどんよりとした曇り空に実に沁みる熱々のスープ、シンプルで普通の醤油味でシマダヤちっくだ。麺もそう。どこにも変化球のないど直球ならーめん。

 ここのらーめんの食べ方、作法はひとつだけ。

1秒でも早く食ってとっとと出ていくことだ。

そうF1のピットクルーのように。


 そして最後に飲み干すお冷が死ぬほど美味かった。





 僕のアメブロの読者はDr.マーチンというキーワードでたどり着くというデータ解析を見た。


君もそうだろう。


 テーマ:Dr Martens放浪記で数本記事があるのだが、なかなか人気が高い。かなり脱法的な内容の記事なので、マニアックな人が検索の結果たどり着くのだろう。


 えんじ色の3ホールは履き過ぎて、かかとに穴が空いてしまった。リトバルスキーばりにO脚ガニ股なので、かかとの外側だけ減っていく。穴はこのソール内部の形状に合わせて四角く空いている。ソールはすり減ってカッコ悪いのだが、外見は掠れまくっていい感じな雰囲気が出ている。


パンクスだ。

シーナ イズ パンクロッカーだ。


 しかし、ドクターマーチンはソール交換が出来ない。コアファイターとの換装システムを排除したガンダムMk-2のようだ。


 たとえソール交換出来たとしても新品一足を買うのと変わらないほどの値段になってしまう。悩ましいところだった。そうやって私はソール交換できない四角く穴の空いたDr Martensを泣く泣く捨てたり、或いは物置きにしまっておいたりしていた。


 一年ほど前に船橋のららぽーとにある東急ハンズの靴修理コーナーで、とあるポスターを見かけた。それは私にとって実に悩ましいポスターであった。





 あのDr.マーチンの

 ソール交換ができるのだ。


 ただ、当時、ソール交換したかった3ホールは新品最安値で10,800円だった。6千円も出すなら新品買うかってなるよね、ところが今は急激な円安のせいでドクターマーチンは15,800円もする。ソール交換で済ませば新品で買う金額の4割ほどで済むのだ。しかも使い古したいい感じ、あのパンクスの風合いはそのままで。


 一年悩んだ末にお願いしてみた。


 6,000円のソール交換に一年間悩むということは、月に500円悩んだということだ。なんて小さな漢だろう。このワールドクラスの器の小ささ、張飛や関羽が見ていたら呆れていたに違いない。


 2週間かかる作業を終えて、私のDr Martensは帰ってきた。ちょっと忘れかけていたぐらいだが、手元に帰ってくるとテンションは上がる。嬉しくて早速開封して、菅野美穂のがっかり写真集NUDYTYの如く、自然体のドクターマーチンを撮りまくった。






 私は現在新品の3ホール黒を2足持っているので、履いた感じのソールの変わり具合いがよーく分かる。かかとの部分は硬めだが、足の裏の部分は本物より少し柔らかめだった。このちょっとしたフィーリングの違いは、新品同士を履かないと分からないだろう。


 十分すぎる。


 慌ててリペアに出したので、汚いまんまだが、リペア職人さんが私のあのすり減った靴のソールを剥がしてくださり、さらに靴の小汚い居酒屋の焼き鳥のタレや焼酎、ビールを浴びた表面部分も綺麗に磨いてくれた。


 この先、革さえ破けなければ、もう一度コイツをソール交換したい。その時は悩まずにすっと。

君は安っぽいラーメンは好きか?

僕は大好きだ!

日本の安いラーメンを追い求める旅、ラーメンチープトリップの始まりだ。ここでは普段食べられないような〝ついでにあるラーメン屋〟を求めようじゃないか。そう、あのとき海の家で食べた、あのチープなラーメンを探して。


記念すべき第一回は船橋にある「ふなばしアンデルセン公園」内のフードコートにあるらーめんJCFだ。ふなばしアンデルセン公園とは千葉県船橋市にある総合公園である。トリップアドバイザーの「トラベラーズチョイス 世界の人気観光スポット2015」の「テーマパーク部門」にて東京ディズニーランド、東京ディズニーシーに次ぐ日本国内3位。年間来場者数は約90万人。名所として房総の魅力500選に選定されているほどの有名な公園なのである。


ここのラーメンだけを食すとなるとアンデルセン公園の入園料に大人900円、プラスラーメンが一杯650円なので、合計で1550円というとんでもなく高額なラーメンになってしまう。


連載1回目にして荻窪の名店春木屋のチャーシュー麺大盛(1500円)を超える。


すでにチープなトリップではない気がするが、仕方がないだろう。僕をチープなラーメンに開眼させたエポックメイキングな店である。


このJCFというカード会社みたいなラーメン屋にはテーブルがない。真夏の混雑期に行けば、食べる場所がなく、お盆を持ったまま狼狽(うろた)えるだろう。先に席の確保が必要である。公園なので、そこら辺の空いてるテーブル付きベンチか、もしくは、ただのベンチにタオル一枚敷いて席をキープしておけば安心だ。自分で簡易型の椅子とテーブルを用意して、その辺の原っぱに広げてもいい。


席が確保できたなら、今度はフードコート脇の自販機で水を買っておこう。この店にお冷やなどはない。あらかじめ言っておくが、ここんちのラーメンは凄く熱く、そして塩っぱい。なのでキャットタン気味の人は5分ぐらい食せないだろう。


水を用意したら、何食わぬ顔をして店のカウンターに行こう。チープラーメンを食す際には、この〝何食わぬ顔〟が重要である。わちゃわちゃと先を急いだり、気合いを入れて食べようとしてはいけない。なにせ君はついでにこのラーメンを食べに来てるのだから。





隣りのかき氷屋は混んでいるが、JCFに並ぶことはほぼ無い。一年のうち一番のピーク時の昼に行っても8人並んでいるかどうか。客の回転も早い。なにせ食う場所が無いからな。あとはカウンターで店のおババかおジジにラーメンかラーメン大盛を頼むだけである。近年、店主が色気を出し、客の要望に合わせてメニューを増やしたが、それらはお薦めしない。僕を信じて正油ラーメンだけを食べてほしい。ほどなく呼ばれるだろう。脇に置いてあるコショウはお好みで。


着丼!




安っぽい発泡スチロールの容器によそられたシンプルな正油ラーメン。まったく期待していなかったのだが、ラーメン本来のルッキングはグッドである。まったく湯気の立たないスープを一口啜ろうと口に運ぶと「あたつっ」思わずケンシロウのように叫んでしまったが、死ぬほど熱い。ラーメン寺三十五房全てを制覇したこの私が熱いのだ。野外で冷めないようにラードがスープの膜になっているのだろう、とにかく熱すぎる。

スープの醤油にそれほど奥行きは無いが、塩っぱさに振り切った塩味が、疲れた身体に沁み渡る。麺も中太縮れでコシがあり、よくスープとよく絡む。チャーシューはドライ系だがこれもスープと相性がいい。シナチク、ナルトもチープさの極み。そしてワカメ。ワカメは邪魔なのでさっさと最初に食ってしまおう。丼がふにゃふにゃしているのでバランスが取りずらい。最後の方は十分気をつけてほしい。突風やお散歩中の蟻にも注意が必要だ。


そして、この塩っぱい口を一気にキンキンに冷えたペットボトルのミネラルウォーターで洗い流すのだ。


くーーーー。


なんならラーメンより、この水のほうが美味いんじゃないかと錯覚するぐらいだ。


ついおかわりしたくなるが、我慢してお盆と食器を店の横にあるテーブルに片した。

飼い犬になりさがったのか。


 自宅のトイレットにある、すみっコぐらしのトイレットロールカバーを見ながら、自問自答を繰り返していた。俺はこの水色のファンシーなロールカバーのように、可愛さを身にまとってしまったのか。


牙だ。

あの時、確かに持っていた、

野生の牙を失っていた。



ババコ戦記1で俺の職場のビルの共同トイレットのドアノブがびちゃびちゃに濡れている話しをした。

↓↓↓

新☆ババコ戦記


あれから2年。抵抗も虚しくティッシュを片手に濡れたドアノブを拭くという荒技を駆使し、決死の覚悟で闘っていた。しかし、心がポッキリと音を立てて折れてしまった。


ジャンボ鶴田似のリーマンがあろうことか、俺が後ろにいるのに濡れた手でドアノブを握って行ったのだ。さすがの俺もびっくりした。いや、ショックでジョー・ヤブキのように真っ白になったと言っても過言ではない。


ヤツはオー!オー!オー!と腕を上げながらリンクを降り、花道を退場して行った。正確には3階までトコトコ降りていった。すぐ下の2階にも男子トイレがあるのに鶴田(仮名)はわざわざ4階まで上がってオシッコをし、あろうことかドアノブを濡らして帰ったのだ。


絶対にゆるさん!


ただ、残念なことに阿呆につける薬はファイザーやモデルナでもまだ開発されていない。ここは一旦落ち着いて、クールな対策が必要だ。俺はあばれはっちゃく(初代)のように「ひらめけーひらめけー」と逆立ちしながら作戦を練った。


トイレットにA5の貼り紙がある。掃除のおばちゃんが作った貼り紙で犬が便器に座って「みんなできれいに」と書いてあるのだ。



▲掃除のおばちゃんの作った貼り紙


もんちっちに似たおばちゃんはお人好しだから、こんな貼り紙ひとつでみんながキレイにトイレットを使うと思っているのだ。そんなんじゃ、この雑居ビルの不潔な悪党どもには、なんにも届いてないぜ。


いや、まてよ。

これは使えるな。


不意に俺の16bitの脳が閃いた。普段は釈迦の再来とも呼ばれる穏やかで慈悲に溢れた俺が、一度ダークサイドに身を堕とすととんでもなくヤバい。そんなスイッチをオマエが押したのだ。


鶴田よ震えて眠れ!


このショボいワンちゃんのキャラクターを使って貼り紙を作れば、すべて掃除のおばちゃんのせいにできるぞ。


まずはおばちゃんの作ったチラシを撮影してデータを作ろう。

しかし、思いついてから数週間が経ってしまった。そう、スマホを持ってトイレットに行く習慣がないので、撮影しようと思ってもスマホを忘れてたり、逆にスマホを持っていても撮影するのを忘れたりしていた。俺はいつもいつもトイレットのドアノブのことを考えているわけじゃないのだ。つまり、スマホを持っていて、ドアノブが濡れているとすぐに怒りで行動に移せる。そのタイミングに数週間を要したというわけだ。


あの鶴田に掟破りのジャンピングニーをかますべく、俺は掃除のおばちゃんの貼り紙を近接で撮影し、画像データを会社のパソコンに取り込み、新しい濡れノブ防止用の啓発チラシの作成に着手した。まずは、フリー素材であろうの犬キャラのトレース作業である。



通常こんなものは左右対象なので左半分作ってしまえば、あと右半分は反転して済ませるのだが、微妙に左右非対称だった。そこは強引に張り合わせた。さて、問題は手と足だ。(犬だから正確には前足と後ろ足だ)この元原稿だと手は体の前に足は便座に座っている状態になっている。立った状態(犬だから正確にはチンチンだ)で描きたいので、足を付け足し、手は両脇に広げた。そして手の回りに水滴を散りばめ、さらに水しぶきのついたドアノブとドアを描き足した。


文字はこんなダサい書体持ってないのだが、なんとか似てるやつをチョイスし


濡れた手で

ドアノブを

さわらないでね!


と優しく諭した。

我ながら完璧である。なんて素敵な貼り紙なのだろう。



ともすれば圧にもなるこの文言を犬のキャラクターに言わせることで、ほのぼのとそして的確に禁止事項を表現している。これを見たら鶴田も容易にドアノブを濡らせないはずだ。

この貼り紙をプリントアウトし、誰もいない時を見計らってドアノブの横にセロテープで貼っ付けた。



翌日、早速この可愛いワンちゃんに水しぶきをかける狼藉者もいたが、抵抗はそこまで。あれから一週間経った今もドアノブは水しぶきから守られている。



最近はTwitterでくそポエムをつぶやいてるよ。


ハッチ大阿闍梨 (@Hhb10406770Hhb) / Twitter


そして詩集も発売中!


https://bccks.jp/bcck/159174/info




#ハッチのくそポエム 


ジャンボ餃子が好きだ!

ちまちました小さい餃子になんかにゃまるで興味がない。
そう、漢として星の下に産まれたのなら、ハフハフしながら飛び上がるほど熱いジャンボ餃子にカジリつくのだ。

グレイトフルデッドのドラマー、ミッキー・ハートは自分の父親のギャラ持ち逃げ事件の責任を負って脱退するが、3年後の1974年にパワーアップし、フェアウェルコンサートでカムバックする。彼は脱退していた3年間、世界中のさまざまな打楽器を求め旅をしていたのだ。

▼ミッキー・ハートさん


 そんなミッキー・ハートのように世界中のジャンボ餃子を求めて彷徨う企画「ジャンボ餃子ミッキーハート」。今回は地元船橋にある餃子専門店「めちゃっ!餃子 餃飯軒」を訪れた。訪れたなんて言ったらまるで真剣にリサーチしているように聞こえるが、本当のことを言うと店の目の前のコインランドリーに用事があって、洗濯物を乾燥させている50分間暇だからぶらりと立ち寄っただけである。


 テレビにも取材され、行列店なのは知っていた。ただ、あまりの行列にオープンしてから1年ほど放置していたのである。いや、1年間寝かせておいたのだ。梅雨前だというのに小雨がパラつき、ジメジメした空気。昼時をとうに過ぎた辺り、テレ東ならB級映画を垂れ流しているだろう時間帯に恐る恐る入店すると店内は客0状態というラッキーなシチュエーションだった。そういや昔、近所の文房具屋で根暗なおばさん一人でやってて、店に入ると何か買わないと出られない魔王の城のダンジョンのような空気出してて、しょうがないから欲しいものが無くてもBOXYのボールペンだけ買うっていう事が数回あったな。まぁBOXYのポールペンはバネを強化して、スーパーカー消しゴムの落とし合いに使うから何本あっても損はしないんだけど。いや、違う。違う違う、そうじゃそうじゃない。この餃子屋は人気店なので客0は純粋にラッキーなのだ。

 メニューを見ると餃子、炒飯、唐揚げ、ラーメンというドラゴン藤波のような無我ストロングスタイル。ただ気になったのは餃子3個で240円、プラス1個80円という強気な値段設定とキャバクラのような追加システム。この時、俺はこの店が隠れジャンボ餃子店だということを知らないので、プラス2個の5個でもまだ不満だった。キャバで言うなら30分を2セット延長というやや腰の引けた試合展開。ワンタン麺と炒飯と唐揚げも注文してもしも不味かったら「この店に思い残すことはないです」宣言を無言でした。

まずはワンタン麺が着丼する。


 スープの上には刻みネギと白胡麻がわんさかふりかかり、パワフルなルックス。ワンタンはかなり大きく丼の中で羽を広げ、まるで水族館のマンタのように丼の表面を占拠している。琥珀色の正油スープはうっすらと生姜が香り、スッキリとしたキレのある味わい。胡麻と刻みネギもいいアクセントになっている。余計なことを一切しないシンプルなワンタン麺である。悪くない。悪くないぞ。

 そして、炒飯の盛りは多めだった。通常の1.5人前はある。これも味の素香る実に昔ながらの炒飯で、私の炒飯ランキングに軽くエントリーするような美味である。餃子がメインの店なのでサイドメニューにはまるで期待してなかったのだが、これはなかなかアベレージが高い。




 ザ・スターボウリングで解説の須田開代子が結果を見ずに選手の球が指から離れた直後にストライクを当てるように、俺もまだメインの餃子が来る前からつい言葉が出た。

ナイスカーン!

サイドメニューこれだけ美味ければ、食す前から「餃子美味い」を確信した。そして、いよいよメインの餃子が着丼した。

着皿!

三沢光晴のローリングエルボーのように
不意打ちを食らった。


 そう、ここにきてまさかのジャンボ餃子だったのだ。むっちりと分厚い皮を食いちぎると細かく擦られた餡からジューシーな肉汁が口に広がる。

菊池えりのようなムチムチ感ある皮と沙羅樹のように繊細な餡のギャップ感がたまらない。

餡は博士ラーメンの餃子に似ている。俺は博士ラーメンの餃子が世界一好きなのだ。つまりはこの餃子ど真ん中に当てはまる。

ここにきて餃子3個の意味がやっと身をもって理解できた。ジャンボだから5個だと多いのである。

まるでくまのプーさんに出てくるティガーのように白飯にワンバウンド、ツーバウンドさせて、かっ込む。スープは先ほどのワンタン麺の残り汁だ。ほどよく肉汁と醤油で汚れた白飯をすくい上げるようにしてさらに箸でかっ込む。それを幾度となく繰り返した。5つの餃子はあっという間に私の腹に収まった。

い犬になりさがったのか。


 フサフサのトイレマットに足を埋めながら、俺は自問自答を繰り返していた。このフサフサのトイレマットを使うがあまり、俺は大事な何かを失ってはいないか。


牙だ。

あの時、確かに持っていた、

野生の牙を失っていた。



明らかに他の奴らと違う、色の濃いおしっこの入った紙コップをワゴンに置いて、俺は再び受付の彼女のもとに戻ってきた。完全に指示待ち部下である。


すると彼女はスーパー銭湯に使うような腕に巻くタイプのコインロッカーの鍵をトンとこぎみ良くカウンターに置いた。今度の指令は更衣室で着替えて、ついでに血圧を測れという。


いよいよ緊張感が増す。


健康診断童貞(ヘルスチェックチェリーボーイ)な俺は、当然だが血圧を測ったことがない。こんなことなら電気量販店のセルフ血圧測定器コーナーでプラクティスしてくればよかった。ええい、ままよ。


まずはコインロッカーに行って患者スーツに着替える。こいつを身に纏えばどんな健康男児でも病人に見える。俺は腹が出ているので凄くフィットする。両端をヒモで結ぶと完全に患者スーツとのシンクロ率が綾波の数値を超えていた。そして今気がついた事なのだが、みんな我先にと競い合うように素早く着替えていた。俺以外のヤツは仕事を休んで健康診断を受けているので、早く終わらせば、その分その日のオフが長くなるのだ。


俺も吊られてバタバタと早着替えをしてしまった。その後すぐさま横にある血圧測定器に並ぶ。急ぎすぎてグループBの先頭に来てしまった。血圧測定器の測り方が分からない。なんか必要以上にドキドキする。何となく輪っかに腕を突っ込んで、起動ボタンを押すと腕がどんどん締められる。ガララアジャラの攻撃のように一気に締め上げられた後、すーっと緩まり終わった。レシートみたいな検査結果をちぎり、横にいる看護師に渡した。血圧を測ったこともないのでその数値の意味が分からないが、看護師はレシートを見るやビックリした顔をしてもう一度測ってくださいと言う。こっちは何のことか分からずにもう一度腕を突っ込む。看護師は「落ち着いてくださいね」と俺に声をかけた。そ、そんなに血圧がヤバいのか。2回目もさほど変わらなかったが、最初の数値よりは幾らか落ちた。看護師は半ば諦めた表情で俺にレシートを渡した。


患者スーツの小さなポッケにしまい、もと居た待合室に戻った。待合室の長椅子に腰掛け、周りを見渡すと先ほどのとびっきりの美人も患者スーツを着て背筋をピンと伸ばし座っていた。彼女は患者スーツを着てもその気品を保ち続けていた。


最高にエロい。


彼女の整った横顔を眺めていたら「ピロリロリン♪」という音が俺の体の中から聞こえてきた。ヤバい!これは、これは、ドラマ「毎度お騒がせします」で主人公の木村一八が興奮すると股間が痛くなるサインだ。そんな休息も束の間、また番号で呼び出された。身長、体重、胸囲などを測られ、あれよあれよと注射コーナーに連れて行かれた。


血液検査。


前回のブログでも言ったが、俺はお注射が大嫌いだ。しかし、歴戦の強者オババ看護師が血圧レシートを渡した俺の腕を返す刀でむんずと掴み、ブスッといきなり注射針を刺してきた。


痛くない。


老獪なオババのテクニックで全然痛くない。寧ろ痛くないのが気持ち悪いぐらい痛くない。注射器に俺のドロドロとしたデルモンテトマトジュースが吸い込まれていく。それを見つめているだけで記憶を失いそうになる。


最大の難関を超えた。


次は人生初のバリウムだ。レントゲン室に連れて行かれて、ラムネみたいな錠剤と例のバリウムをいきなり飲まされた。味はヨーグルト風味だったと思う。ここで患者スーツを脱ぎながら男性レントゲン技師の微妙にキャンする言葉のイントネーションを聴いて、俺のそっち系の嗅覚が炭治郎ばりに鋭く察知し、すーっと意識の白い糸が繋がる。


オカマだ。


間違いなくこのレントゲン技師はオネエ言葉なのだ。隠していても俺には分かる。そして俺はこれからこのオカマのレントゲン技師の前でパンイチになり、レントゲンを激写される。

ローリングするクレイドルに貼り付けられ、いよいよレントゲン撮影会のスタートだ。見るからに根暗そうな坊ちゃんヘアのオカマレントゲン技師にリモコンの操縦桿を握られ、冷たいローリングクレイドルが無機質に運転を開始する。


ガガッ

グイーン

バシャ


オカマのレントゲン技師は俺にポージングの指示をする。


もうちょっと身体を横にしてー。

そう、そう、いい感じ。


ガガッ

グイーン

バシャ


二人の気持ちはシャッターを重ねてともにエスカレートしてくる。


もっと身体を傾けて。

もっと、もっと限界まで。

そう、そうよー。


ガガッ

グイーン

バシャ


俺は2回ほど御法度の小さいゲップをしてしまったが、オカレンには気がつかれていなかった。辛くもレントゲンを終わらせると次のブースで待たされる。


とうとう医師による最終カウンセリングだ。いよいよ俺は入院させられるのか。Bグループ男子の先頭を維持してきた俺は、この待合室で初めて今まで一緒に戦ってきた戦友たちと顔を合わせることになる。同じ会社のサラリーマンであろうおっさんとヤンサラが椅子で並んで喋り始めた。おっさんはタレントでいうと高橋克実的な正統派おっさんルックス、ヤンサラはジャニーズくずれのホストといったところだろうか。この後の予定の話しをしているが、高橋は家でゆっくり過ごすらしく、ヤンは一旦家に帰ってから、仲間と新宿に呑みに出かけるのだ。

いや、そんな情報はどうでもいいが、気になったのはこのヤンの言葉遣いだ。完全に歳上な高橋にタメ口以下なのだ。お前は社長の息子か?


それとも世紀末覇者か?


ヤンはどんだけ偉いんだ。聞いてて段々とムカっ腹が立ってきた。年長者を敬えないヤツを俺は許せない。このヤンの遊戯王みたいなツンツンヘアを引っ叩きそうになったところで俺の名前が呼ばれた。


まるで懺悔のように、3つ並んだ診察室の真ん中の引き戸を開けて、中にいる医者の前に置かれた丸椅子に座った。喉、眼、聴診器と軽く調べ、彼はちらりと書類を見て、たった一言だけこう言った。


お酒の飲み過ぎですね。


終わりである。そもそも、俺は事前のアンケートに…


Q.この診断結果によっては、今までの生活習慣を変える意思がありますか?


と言う質問に


☑︎ない


と答えていたのだ。それなのでこの診察は終わりである。生活習慣を変えないかぎりはアドバイスもできないのだ。健康の入り口にさえ立ってない俺に彼はこう付け加えた。


血圧が異常に高いので、

そこは十分注意してください。


人生初の健康診断が終わった。

受付の看護師は、心と身体、人間の全部がボロボロに疲労した俺に8千円を奪いレシートと一緒に病院近くの喫茶店のモーニング500円のチケットを渡してきた。


なんだこんなもん!


病院を出ると俺が20年近く通勤していた事務所のビルが建て直されて、マンションになっていた。9月なのにやけに澄んだ朝の空気を吸い込んだら、お腹が鳴った。




さっきくしゃくしゃにしたモーニングチケットを広げてシワを伸ばし、晴海通りと昭和通りが交差する歌舞伎座横の喫茶店に入った。眺めのいい窓際の席に座り、おもむろに血圧が下がる水を調べ出した。




珈琲を一口啜ると、健康診断で出会ったあの横顔が飛びきり美しい女性が目の前の椅子に座った。


健康診断も悪くない。


つも行くラーメン屋が臨時休業だった。

突然休まれてもらっても困る。こっちにも都合ってのがあるからな。胃は築地やよい軒のやよい麺を受け入れるカタチにトランスフォームしているので、悩みに悩んだ末に初見のラーメン屋に行くことにした。せっかく浮気するチャンスを向こうから切り出したのだ。


ニルス・ロフグレンという稀代のギタリストがいる。その卓越したギターテクニックは「歴史上、最も偉大なギタリストランキング」に入るほどの実力の持ち主なのだが、残念ながら器用貧乏なのだ。まったく華もない。しかし、ニールヤングの名盤アフターザゴールドラッシュに参加したり、リンゴスターオールスターズバンドにも参加、あのブルース・スプリングスティーンのバックバンドThe E Street Bandのリードギタリストも勤めているのだ。誰の色にも染まるそのギタープレイはまるでラーメン屋におけるライスのようだ。そんなNils Lofgrenのようなラーメン屋のライスの食べ方を探求する企画、それが【ニルスロフグレンラーメンライス】だ。



目隠し用に茶色いフィルムがかかった志村三丁目のスナックみたいな自動ドアを開けると、おババの機械音声よりも機械的な「いらっしゃいませ」が聞こえてきた。気の強そうなおババは俺に通路正面の4人がけの席へと強制的に案内する。隣のサラリーマンも4人がけに1人、俺もソファのセンターに腰掛けてメニューを一瞥した。確認作業である。注文するメニューは決めてある。だから街の中華料理屋に入ったのだ。俺はメニューの上の方の「モヤシソバ」を頼んだ。さぁ、おジジ、俺様のもやしそばを丁寧に作りやがれ。


しかし、間髪入れずにおババはもやしそばは無いと言う。俺が見たのは夜のメニューだと言いながら暖かいおしぼりとお冷やをテーブルに置いて、最後に俺の目の前に「お昼のメニュー」を差し出した。


非常事態だ。

なにか、なにかモヤシソバの代替品を。


お昼のメニューを上から下まで見たが、モヤシソバの代替になるのは五目ソバだけだ。まぁいい。五目ソバも嫌いじゃない。真っ先にウズラを食ってやろう。


しかし、おババはやたらと味噌ラーメンを推す。「このメニューの中でモヤシが入ってるのは味噌ラーメンかしら」


おいおい!なんか俺がモヤシを欲してるみたいになってるけど、俺はモヤシが食いたくてモヤシソバを頼んでいるのではない。熱々の醤油スープと餡の織りなすハーモニー。モヤシソバにおいて寧ろモヤシは脇役だろう。なんにも分かってねぇんだな。まぁ、いいや。五目ソバでとりあえず醤油スープと餡(あん)のハーモニーを代替しよう。モヤシのシャキシャキ感は白菜が代わりに演じてくれるだろう。確かに味噌ラーメンはメニューの一番上に書いてあったから、新参者の俺におババも相当食わせたいんだろうが、今の俺にはとろみが必要なのだ。


頑なに五目ソバを注文した。 

それと半ライス。


氷が三つしか入らない小さなコップでお冷を飲むと、間髪入れずにおババがスチール製のお冷ポットをテーブルにゴンと置いた。それでいい。俺はどこのラーメン屋でもお冷2杯は飲む。


昭和な店内は70年代日本歌謡の有線が流れている。山口百恵のこれっきりこれっきりこれっきりもうこれっきりですかーが、本当にこのラーメン屋に来るのがこれっきりになりそうな暗示をかけてくる。ラーメン屋には珍しく暖かいおしぼりが出てきたが、そいつで首筋まで拭いている時に店内を見るとおババが2人いることに気がついた。ちなみに厨房にはおジジと若めのコックさんの2人。


程なくしてヤンサラが入店し、俺の左舷前方に座った。常連なのか座るなり彼はメニューも見ずに「アケボノメン」とぶっきらぼうにおババに注文した。


アケボノメン?


この店の名前を冠したそのラーメンがあったのか。値段は俺の五目ソバと同じだった。失敗した。そんなもんがあるなら一度注文してみたかった。まぁ、いい。俺は今とろみを欲している。ひとたびテーブルに五目ソバと半ライスが着丼したなら、まず先に麺を食し、残った具をライスにぶっかけて中華丼に変化させるのだ。


俺は目を閉じて空腹を堪えた。


そして着丼。



目を疑った。


目の前にあるのはタンメンではないか?いや違う。ウズラがまるで俺を嘲笑うかの如く澄まし顔で乗ってやがる。五目ソバの定義とはなんだ。ウズラなのか。それよりもツッ込むのはレモンだろう。なんでレモン乗ってるのよ。なにモヤシソバも作らないで、余計な進化させちゃってるのよ。



ガッカリしながら俺はこの透明で塩味のスープを飲んだ。もうライスとの夢のコラボレーションもない。黙々と麺をすすり、スープを飲み、ライスを口に運んだ。段々とあのおババに腹が立ってきた。ランチタイムだからモヤシソバが作れないってなんだよ!こんなにガラガラなんだから作れよ。なんて思ってると左舷のヤンサラに「アケボノメン」が着丼された。


それは間違いなくモヤシソバだった。


つづく。

い犬になりさがったのか。


 キルティングのトイレットロールカバーを見ながら、俺は自問自答を繰り返していた。この近所のオバちゃんが自作したトイレットロールカバーを使うがあまり、俺は大事な何かを失ってはいないか。


牙だ。

あの時、確かに持っていた、

野生の牙を失っていた。



健康診断当日の朝、スヌーズ機能との30分に渡る死闘を終え、オレは朝6時に目が覚めた。


緊張の2回目の検便だ。

しかし、またナガセールをセットし、ウンコをしようとしてオシッコが先に出てしまった。


オー!ファッキンシット!


今度も慌ててゼロコンマでオシッコを止めて、ナガセールを取り出して、再びオシッコをしてから、またナガセールをセットし直した。なぜこうもウンコする直前、反射的にオシッコが出るのだ…。


俺は森村ハニーか!


結局慣れることなく2度目のケンベーンを終えた。こんなにマジマジとウンコを見つめ、棒でつつくなんて小学生ぶりかもしれない。当分カレーは食えないだろう。検便のケースに日付を入れたが、水性マジックで書いてしまって滲んでいる。まぁ、ギリ読める範疇だ。


検便調査員よ、

マジマジと見るがいい。


県道沿いにあるおっかさん弁当のようにほっかほかの検便容器をカバンに入れて、俺は家を出た。いつもより1時間も早いので電車は激混みだった。俺は満員電車に乗るとお腹を壊すのだが、そんなプレッシャーよりも健康診断というプレッシャーの方が打ち勝ち、ポンポンは痛くならなかった。

予約時間より20分ほど早く病院に着いた。

雑居ビルの2階ワンフロアを使った、ほぼ健康診断専用の病院だ。そこの薄暗い階段を上がり、古くさいアルミフレームのガラス扉を開けると、右手に受付がある。俺は青色の封筒をその受付の女性に手渡し、呼ばれるまで待つように指示を受けた。

診察時間より随分と前なのにすでに5、6人が待合室の椅子に座って待っていた。

その中に飛びきり美しい女性がいた。横顔の整い方が素晴らしく、長く美しい髪を後ろに束ね、背筋はピンと張って非常に姿勢が良かった。服装も黒いワンピースと実にシンプルで何より彼女に似合っていた。恐らく銀座の高級ブランドの店員だろう。お水の品のなさはカケラもない。どこか知的で美術館の学芸員ですと言われたら信じてしまうだろう。そんな彼女も俺と同じタイミングで検便をして、その容器をあの封筒に入れたのかと思うと興奮してくる。別にウンコ趣味はないが、あの横顔の美しい彼女が、自分のウンコをスティックでこねくり回したのかと想像しただけだ。


な、興奮するだろ?


10分ほど彼女の妄想に耽っていると、受付の女性に呼び出された。

恐らく受付の女性は、毎日何百件もの人数の利用者を捌いているに違いない。人生初の診断チェリボの俺に畳み掛けるように診断の手順を話し出した。恐らく毎年来ても3年目にやっと理解できるような話の難易度だった。

最後に彼女は検尿用の紙コップをパコンとカウンターに叩きつけ、トイレに行ってこいという素振りで話を終わらせた。

俺は愕然とした。まさか検尿から始まるとは健康診断チェリボな俺は知らなかったのである。さらにこの病院のトイレがどこにあるかなど全く分からない。ドトールのトイレを探してスタッフルームに入ろうとする男だが、不自然な動きもせずになんとか見つけられた。なんと病院の扉を出た共有スペースにあった。ワンフロア貸し切りとはいえ、一度病院を出て共有トイレ風の病院のトイレで検尿するとこに違和感を覚えたが、仕方がなく1個しかない(大)用の個室に入り、便座を上げ服をたくし上げて、紙コップ向かって小便小僧のように放尿した。

尿はすぐにコップ満タン付近まで到達し、急いでブレーキングした。そんなに器用にピタ止まり出来ないので、若干のタイムラグがある。溢れそうな尿を少し便器に戻しながら、放尿を再開した。

なみなみと注いだ紙コップを持って(大)用の便所から出ると、おっさんが普通に(小)用の便器でおしっこをちんこから紙コップに注いでた。今世紀最も寂しい後ろ姿であるが、よく(小)用の便器でこの作業ができるなといたく感動した次第である。トイレを出るとワゴンの上におしっこの紙コップを置くのだが、5つほど並んだおしっこの中で、どう贔屓目に見ても俺のおしっこの色だけ異様に濃い。


オリオンビールとブラウンマイスターぐらいの色の濃さの違いである。


恥ずかしい。


あまりの恥ずかしさに水で薄めて来ようかと思ったが、これによって変な診察結果になるほうが怖い。大人しく薄いおしっこ達の隣に置いて病院の待合室に戻った。


つづく