中国de音楽4

中国在住の日本人音楽家による、日々の日記です。

そして別アーティストのライブイベント

 日曜日、上海は晴れ時々曇り。気温は 24度。

 昨夜のライブのリハーサルの時に、メンバー全員の復路の飛行機が『欠航』になった…という情報が舞い込んできて、昨夜の出演者&スタッフ一同まっ青になった。無事にライブが終了した後も欠航情報は覆らず、打ち上げの際も、ついつい「どうっやって帰りましょっか?」的な話題になってしまい、何となくイマイチ打ち上がれなかったワケだが、結論から言うと、どうしても明後日に出演しなければならない現場があるミュージシャンを最優先に、ありとあらゆる手を使って日本の別の空港(台風の影響が無かった空港)にて一旦トランジットして乗り継いで帰る…という荒技を使いつつ、全員分の調整を行った。
 しかし、まぁ情報が混乱しまくってて、昨夜の時点では国内の交通被害がどの程度出ているのかも全く判らず、また、成田も羽田もほぼ丸二日間くらい完全に封鎖状態だったので、台風が綺麗に去った後でもその 2日分の乗客全員を順番にハケなければならないので、離陸も着陸も全然追いつかないのは自明である。

 そんなワケで、本来今日のライブの担当だった一部スタッフも朝からこの対応に追われてるから完全にヒトが足りない状態である。しかし我々は『今日の』ライブの仕込みを行わなければならないんだなぁ…。天災に文句言っても仕方無いが、ホント参るわ。。。2日連続イベントは、こういったリスクがあるから注意が必要。

 本日のライブは昨日とは別のアーティストで、日本から来た某歌い手さん。実は当初予定していた昨日の飛行機は『多分飛ばないだろう』という予想のもと、一日前の飛行機に変更して前乗りして頂いていたのだ。故に今日開催できるワケ。案の定、昨日の便は全て欠航になってしまったので変更しておいてホント良かった。

 昨日と会場は同じだが、セッティングがまるで違うから 1から作り直しである。
 朝 8時過ぎにはオフィスに到着して機材を纏めて午前 9時から仕込み開始。本日、オケのポン出しはワタクシが担当するので念には念をいれて、しっかりバミりながらセッティング。
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 先週散々実験しているのでこのブログを読んでらっしゃる方は気付いたと思われるが、アプリは QLabで、マスター&スレーブを OSCにて接続。今回プロンプもあるのでプロンプの映像のマシンとは LTCを使って SMPTEにて同期させる。

 今回も大活躍のワタクシのサンクラ Ui24R。一旦、手元で 4回線(LR2回線)を纏めてA-B切り替えを行った後、メイン卓に 2mixを送るワケだ。既に全楽曲の音量は調整し終わっているので、メインのPAさんはサウンドチェックだけして頂ければ後は何もやる必要は無い筈。今日の PAさんは日本からの乗り込みではなく、ホールの中国人PAさんなので、こうやって限りなくリスクを減らすのがワタクシ流。別に中国のPAさんを信頼していないワケじゃないけど、それでも日本に比べると何が起きるか判らない怖さがあるからね。
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 最近この卓がどんどん好きになってきた。幾つかの現場を経て徐々にでは有るが大分特性が判ってきたからカモしれない。やっぱりコレ、色んな意味でアナログっぽい音がすると思う。でも決して『音が太い』ワケでは無いのだよ。
 よくオーディオ機器の形容詞として『音が太い』という言い方をするが、この卓はアナログっぽい音はするが決して音は『太く』はないと思う。『アナログ風=音が太い』と勘違いしている方がいらっしゃるが(まぁ所詮あいまいな『形容詞』なので、感じ方は人それぞれで良いとは思うが) ワタクシは違うと思うんだな。

 まぁそもそも音が『太い』とか『痩せてる』とか言う表現は、アナログシンセサイザーの『音の太さ』のハナシが始まりだったと記憶している。アナログシンセサイザーは VCOによる波形生成の際、オシレーターの数やデチューンの揺らぎ等により中低域が飽和した様な独特な『サチュレーション感』を発生させる事ができ倍音が増えるので、これを以て『太い』と形容される事が多かった。
 その昔、FM音源のデジタルシンセが出始めたばかりの頃は、アナログには出せない『キラキラ感!?』が故に一気に一世を風靡したが、シンセベース等の分厚い重低音は出せなかったので、徐々にアナログ回帰?じゃないが「やっぱりアナログの方が音が太いよね」という事実は誰もが認める真実となったワケだ。

 で、何故かオーディオの分野でも似たような動きがあって、CDが出始めたばかりの頃は、その HiFiな音質と 100dB以上あるダイナミックレンジで「音が良い!夢のオーディオソース!」とまで言われた程だったのだが、そんな時代はまぁ一瞬にして終わり、今度は音圧競争が始まるワケさ。
 確か、音圧競争の始まりは CMだったと思う。他のCMよりも『より音がデカい』方がお客さんに情報が伝わりやすい?という勘違い?を誰かがし始めて、それから『それじゃぁ音楽 CDだってプレイバック回数よりも、初めて聴いたときのインパクトの方がダイジでしょ?』『コンビニの天井スピーカーや、純正の安いカーステレオでも、ちゃんと Aメロ Bメロの音の小さい部分から安定して歌詞がきこえた方が良いでしょ?デカい部分は歪んだ様な音の方がホットで格好良いでしょ?』的な発想で、わざわざコンプで音を潰して『音の小さい部分をより大きく』『音が大きい部分は昔の安いラジカセで録った様な音にして歪ませて』CDに録音する…という馬鹿げた図式が出来上がってしまったワケだな。

 あれ?何のハナシだっけ? あ、そうそうサンクラの卓のハナシですよ。また脱線した。

 そんなワケで『太くて良い音』という形容がされる場合は、往々にして『コンプ感』によって若干の歪みが生じた際に増える『倍音の多さ』の事を差す事が多いのだが、このサンクラは音量を上げても倍音が殆ど変化しない(アナログっぽい潰れ方をしない)ので、大音量時の『熱さ』は無くて寧ろクールなのだ。逆に通常の音量域(メーター読みで半分〜7分目くらいの部分)の時から結構『濃厚』な音がするので、そういう意味でアナログっぽい…とワタクシは感じるワケですよ、ハイ。 何というかパワーアンプで例えると AB級じゃなくて A級動作しているパワーアンプみたいな感じ?
 ん〜。一体何人にこのキモチが伝わるか?かなり謎だが…まいっか(笑)独り言だものね。 

 さて、いよいよ手に汗握る本番である。『叩き(BGMの再生担当)』は何度やっても緊張するわ。今回もイヤな汗を沢山かいた。
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 特に気をつけなきゃイケナイのは、曲間の『間』である。これはホントにセンスを要求されるからね。お客様の歓声が収まった一番良いタイミングで次の曲のイントロを出さなければならない。遅すぎてもシラけるし早すぎてもシラける。実際にやってみると判ると思うが、これホントにセンスが必要なのだ。アーティストがお水を飲んでいたらその分は待たなきゃイケナイしね。
 でもコッチもやっぱり緊張してるから、ついつい早めに叩いちゃった曲が数曲…反省反省。

 本日出演の某女性アーティストは、歌が無茶苦茶上手くて驚いた。あんなに細いのに凄い声量だったし、スゲー早口言葉みたいな歌詞も綺麗にインテンポでマシンガンみたいな16分音符を噛まずに歌っていた。すげーなホント。
 お客様も凄く盛り上がって良かった(今日はずっとステージ袖だったので会場の写真は一切無いのが残念だが…)

 機材類も全くノントラブルで動作してくれてホッとしている。色々と結構面倒臭いバックアップシステムやら同期のシステムを組んではいるが、実験を重ねて経験値が上がってきているので、徐々に完成の域に達してきた感が有り、今日は寧ろ『安心感』が有った程だ。 後はヒューマンエラーだけだな。最終的には結局ココに戻る。だから気を抜けないし面白い。

 ライブ終了後は怒濤のバラしを経て、楽しい打ち上げへ。

 いやぁ…怒濤の 2日間だった。台風とか不測の事態に振り回された感は有るが、なんとか 2イベントとも無事に終われてホント良かったよ。疲れた〜。
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