先週日曜日の答練でご質問が多かったので、ここで少し補足をさせて頂きます。

 

物上代位の判例の出題がありました。

主には、抵当権に基づく物上代位を押さえておけばいいかと思いますが、

担保物権の性質上の違いという観点から理解できるところなので、

動産売買先取特権に基づく物上代位との比較をしておきたいと思います。

 

すごく簡単にまとめるとこうなります。

 

・動産売買先取特権に基づく物上代位(最判平成17年2月22日)

債権譲渡は「払渡し又は引渡し」に該当する→物上代位できない

 

・抵当権に基づく物上代位(最判平成10年1月30日)

債権譲渡は「払渡し又は引渡し」に該当しない→物上代位できる

 

両者の違いは何でしょうか?

 

そうです、公示機能の有無の違いです。

先取特権には、抵当権のような登記という公示制度が存在しないのです。

 

公示機能がないということは、譲受人等の第三者との関係では、当該債権が物上代位される可能性があることがどこからもわかりません。

そのため、動産売買先取特権に基づく物上代位の場合には、この第三者の保護も考えてあげないといけないのです。

 

そこで、「払渡し又は引渡し」前に差押えを要求することで、第三者に公示するという機能を果たしてがあげることを求めています。

そのため、動産売買先取特権に基づく物上代位の場合、「払渡し又は引渡し」とは、債権譲渡を受けたときや第三者が目的債権について転付命令を得たときを言い、この場合には先取特権者は物上代位権を行使できないことになります。

 

これに対して、抵当権に基づく物上代位の場合には、既に登記によって当該債権が物上代位される可能性のあることが第三者に公示されています。そのため、第三者の保護を考えてあげる必要はありません。

残る問題は、第三債務者(債権譲渡された目的債権の債務者)の二重払いの危険からの保護を考えてあげることです。

つまり、債権譲渡がされても、その後抵当権者が差押えをすることで、第三債務者が弁済する相手を知ることができるので、問題ないということになります。

 

そのため、抵当権に基づく物上代位の場合には、「払渡し又は引渡し」に債権譲渡は含まれず、抵当権者は物上代位権を行使することができます。

(転付命令の場合は、同命令が第三債務者に送達されると、そこで第三債務者が支払うべき債権者が確定するので、この場合には抵当権者は物上代位権を行使できなくなります。)

 

整理してみると、そんなに難しいことを言っているわけではありません。

それぞれの制度の違いから、理論的に結論を導けるようになっておくと、どんな角度から出題されても絶対に間違えません。

 

普段から、理由を思考してみるようにしましょうベル

 

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