雫井脩介「検察側の罪人」上下 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

「検察側の罪人」


2013年刊。


映画の予告を見て原作読みましたシリーズ。
だって、キムタクかっこいいんですもの。吉高さん、かわいいよね。近所に映画館があるから足を運べばいいのに、原作読んでからにしようと、あまのじゃくな選択。


検察と言えば、ゲーム「逆転裁判」に出てくる御剣検事しか思い浮かばない。現実的には縁遠い人達である。
この本では、検察の人たちが実にリアルに描かれている。
組織がどうとか、そういう外面的なものももちろんだが、それよりも、法曹人の矜持とか、法の理想と現実の葛藤など、すごく納得しながら読み進めることができる。


物語が動く前の描写がしっかりしている本は、本編に入ったあとの説得力が高いことが多い。まさにそういう期待に胸をふくらませながら読んでいった。


しかしなのである。
これだけ、精巧に組み立てられた舞台の上で、主役が雑なのである。物語の核心部分で(ネタバレにならない範囲で言いますが、くしゃっとするシーンとか)その行動は、ただのクズじゃないかと、げんなりしてしまう。検事として志も葛藤も見えてこず、描写が唐突すぎるのだ。
そこからは、もう、主人公がただのクズの印象になってしまって、なんの思い入れもできなくなった。


とはいえ、中盤、終盤と進むにつれて、ストーリーに読ませどころがあり、脇役も実にいい味を出していて、そしてラストの着地も非常に心地よいものだった。
それがゆえに、主人公のクズさと、実はもう一人の主人公の安易な設定のせいで(なんでそういうの持ち込むの?)、本当にもったいないなと思う。


ラストの、正義とはなにか、という問いかけも、もっと常識的な倫理観を突き動かしてもいい内容なのに、何も心をえぐってこない。
上下巻の2冊も読んだのに。叫びたいのはこっちだよ、という読後感である。


まあでも、小説の内容と、映画の予告シーンは全然イメージがつながらないので、映画用に相当脚色があるのだと思い、映画もほとんど吉高さん目当てに行ってみるのもいいかなと思ったが、近所の映画館ではもうやっていなかった。


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