King Gnu『Sympa』感想&レビュー | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



●クールだが、人間が見えてこない

男性4人組バンド「King Gnu(キングヌー)」の2枚目のニューアルバム。

かっこいい。とにかく、かっこいい。Suchmos以降の日本のクールな音楽だ。ヒップホップやR&Bのフィーリングも取り混ぜ、新世代のロックを聴かせてくれる。

楽器隊の演奏がテクニカルで完璧すぎて、本作を聴いて自分もバンドを始めてみようという人は皆無だろう。自分でもできると思える不恰好な演奏が本作には一つもない。だが、後続のバンドに影響を与えるオリジナリティとクールさが本作にはある。

ストリングスの使い方がこれまでの邦楽ロックと違う。バックで歌を引き立てるのではなく、楽器隊のうちの一つの楽器としてあるストリングス。

クールにキメる曲では、人の体温の温もりを感じられない。そうだと思っていたら、「Hitman」という曲では熱い歌唱を聴かせるし、「Don't Stop the Clocks」ではストリングスと共にウィスパーボイスで「泣かないで/愛しい人よ」と優しく歌う。「Prayer X」では虚無の感情から溢れ出す涙という歌詞のモチーフに沿う、エモーショナルなボーカルが聴こえる。

おすすめはリード曲の「Slumberland」。歌唱も楽器隊もアタックが強くて、意思の強さを感じさせる。

彼らのシンパ(共鳴者)は本作で増えていくだろう。だが、僕は人となりが見えてくるロックが好きなのだ。神聖かまってちゃんやうみのてなど、人間の光の側面も闇の側面も見えてくるデコボコしたロックが好きだ。本作では意思の強さは伝わってきても、人間そのものは見えてこない。

評価★★★(星5つが満点)