空調が効いていないのでもないのに、今日は午前の診察が終わった頃には汗を掻いて着替えがしたいほどだった。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
パク先生は暑い顔もしていないし汗も掻いていなかった。
「先生は暑くないのですか?」
「暑いわよ。入院していた妊婦と、救急搬送されてきた妊婦が数分後に出産をしたのだから。」
当直じゃなかったパク先生と私は、出勤をして来てすぐに着替えて分娩室に入った。

「今週は出産が続きましたよね。産科に来てから数か月なのに、今週だけでそれまで生まれた赤ちゃんの人数を超えてしまいました。」
「そうね。」
産科に来て最初の出産は、ただただ驚いて他の看護師の足を引っ張っていた。
命のぬくもり・・・を感じたのは慣れてきた最近になってから。
「だいぶ慣れたようね。」
「そう見えますか?」
パク医師は無邪気な子供みたいに喜んでいるハニをいつも温かい目で見ていた。
「ええ・・見えますよ。生まれたばかりの赤ちゃんを初めての頃は、肩に・・こう力が入って上がっていて、顔が強張っていたから。」
肩を上に少し上げてその時のハニの様子を真似て見せたパク医師も、結構ハニのように無邪気なのかもしれない。

「待ち合いにいる午後診察の患者さんを確認して来て。」
受付が済んでいる患者のリストをパク医師から受け取ると、ハニは仕事の顔に戻って待ち合いの方に向かった。
今日はヘラが診察に来る予定。
診察日になると、ヘラのお腹の子供が誰の子供か聞きたいと思う気持ちが大きくなる。
スンジョと結婚する前のヘラの気持ちを知っているから、スンジョを信じていても気になって仕方がなかった。
「356番の方、378番の方・・・・401番の方・・・」
受付番号を読み上げると、自分の番号表を見ながら手を上げる。
でも、ヘラだけは番号を呼ばれても手を上げる事はなかった。

そんな時、高校生くらいの女の子とその母親が受付にいる看護師に何かを話していた。
「なんだかもめているみたいね。」
無関心層にヘラがハニにそう言うと、受付にいた看護師がハニを手招いた。
「パク先生に、新看をお願いできるか聞いてくれますか?」
何があったのか分からないが、看護師もそこにいる母娘も差し迫った顔をしていた。




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