寝室を出てダイニングに行くと、声を出さないでしゃくり上げて泣いているヘスと温められた牛乳を飲んでいるスウォンがいた。
「パパ・・・ママは?」
「もう大丈夫だよ・・・・おばあちゃんに作ってもらったのか?」
「うん・・・・」
パタパタとスリッパの音を立てながら、ランドリーバスケットを抱えたグミがダイニングルームの前を一度通り過ぎ、バスケットを置いてすぐにダイニングに戻って来た。

「事務所の人がいたから大丈夫だと思って、買い物に出かけていたの・・・二人を連れて出かければよかったと反省しているわ。」
「いや・・・二人を連れて出かけたら、またお袋にあたるだろう。何が切っ掛けで気持ちが不安定になるのか・・・・・」
ヘラが不安定になる原因はスンジョもグミもお互いに自分だと思っていたが、幼い子供の前でそれを口にする事はなかった。

「健診でヘスの成長の遅れを言われたらしいから、それも一つの原因かもしれない。」
「個人差があるからって、そう言ってあげればいいじゃない。」
「ヘラにはそれは通じない。同年齢の子供たちは歩けるのに、ヘスは立つことすらできない。なんでも計画通りにならない事をヘラは認められない。それを受け入れるにはまだ時間が掛かる。」
「そうね・・・・あなたとヘラなら、きっとヘスのためにいい方法を見つけるわね・・・」
湯気の立つマグカップをトレイに乗せると、ヘスとスウォンの頭をなぜてほほ笑んだ。
「おばあちゃんがいなくてもスウォンはヘスのお世話ができるわよね?パパもそばにいるから心配ないわよ。」

妹の手をしっかりと握っているスウォンは、父と祖母が自分のそばにいてくれる事に安心したような表情に変わった。
「スンジョ・・・ヘラは起きているのかしら・・」
「目を閉じているが声を掛ければ起きると思う。それは?」
「ホットヨーグルトにショウガパウダーを入れたの。きっと今は身体よりも心が緊張していると思うわ。私だっていつまでも意地悪な姑でいるわけじゃないから。」
分かっていた。
グミはヘラが幼い時から仕えていた家政婦を実家に帰した後、ヘスが産まれてからほとんど毎日息子夫婦の家に来ては手伝っていたのだから。
昔はいつも勝手な事ばかりをして問題を起こす困った母だと思っていたが、孫のため息子のために認めたくないと言っていた嫁のヘラに尽くしていた。
スンジョだけじゃなくグミもハニの事は、心の中にまだいる事を隠していた。


 
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