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 昨日は、池袋の「あうるすぽっと」で、こんにゃく座の新作劇「イワンのばか」(最終回)を見てきました。イワンというのは、ロシアの伝統的なキャラクターのようですが、トルストイが書いた兄弟の話が日本では有名です。私も小学生のころに、子供向けの本で読んだ覚えがあるし、父親から話として聞かされた記憶もあります。これを、萩京子さんの作曲で、こんにゃく座らしく作り上げたのが今回の新作公演でした。
 イワンの長兄は権力者として出世し、強い軍隊で国を治めます。次兄は商才があって、財力で国を支配します。弟のイワンは、愚直に働くことしか知りません。それぞれに国の王になるのですが、それをねたむ悪魔は、兄弟の争いの種になるようにと、小悪魔を送り込んできました。そのおかげで、兄たちは無用な戦争を起こしたり、財産の奪い合いなどで人民を苦しめる結果になります。しかしイワンの国の民だけは誘惑にも動じません。軍隊が来ても友だちのようにもてなすだけだし、金貨にも飾り物以上の価値は感じません。手を使って働いた者が先に食べる、働かない者は後で残り物を食べると決めているからです。
 小悪魔の知恵では歯が立たないことを知った大悪魔は、ついに自らイワンの国に乗り込んで来ます。人のよいイワンは、大悪魔をも賓客としてもてなし、その望みの通りに高殿を作って、その上から国民に向けて演説をさせることにしました。大悪魔は言葉を尽して「頭を使え」と述べるのですが、何かよいことがあるかと聞いていた民も、いくら待ってもしゃべるだけなのを知って誰もいなくなります。絶望した悪魔は、原作では「逆立ちして頭で階段を下りる」ことになるのでどうなるかと見ていたら、コンコンと頭をぶつけ、血を流して逆さに滑り落ちる仕掛けになっていました。
 この新作、学校公演などにぴったりの、こんにゃく座の定番になるだろうと思いました。私も久しぶりに、裏方で働いていた太田まりさんに会えて満足でした。それと、場内で大木晴子さんに会ったのにも、びっくりしました。この人の取材力と行動力には、脱帽するしかありません。