3月3日になると、思い出すことがある。大学に在学中のことだが、同級生のある人に、この一句(その人の 名を思いけり ひなまつり)だけを書いたはがきを送ったことがある。「ひな」という読みの漢字を含む名を持っている人だった。どうなることかと緊張して待っていたら、間もなく返信の手紙が来たが、その中身は、なんと英語で書いてあった。
内容は、「ひなまつり」のはがきへの礼状だが、通り一遍の返信でも、英語で書くと、なんとなくサマになるような気がしたのだろう。その気分は、私にもすぐわかった。手紙の続きには、少しでも勉強に役立つように英語にしてみましたと書いてあり、そして手紙の定型として、”Yours sincerely"(あなたのものなる、心から)として末尾を結んでいた。私はこのときほど、この定型文を直訳したいと思ったことはない。
彼女は、卒業と同時に日本航空に入り、当時は時代の最先端と思われていたスチュワーデスになった。学習院大学で同期生だった皇太子、つまり今の上皇さまが日航機でアメリカ訪問に出た際には、同期の親友と組んで担当者になり、その記事が「週刊女性」に載った際には、彼女の写真が表紙になっていた。その制服姿が、本当によく似合う美人だった。
彼女とは、長い電話で話したこともある。相手が公衆電話だと、当時は10円で時間が無制限だった。二時間も話していて深夜になり、彼女の帰り道が心配になって、すぐにも飛んで行きたい気持ちだった。
私が結婚した後では、一度だけ何かの集まりで会ったことがある。私の妻の手を握って、「昔のことだから、もう時効よね。女同士で仲良くしましょ」と言ってくれた。彼女も結婚はしたが、子供を授かることなく、その夫も亡くしたと聞いている。そしてきょう、久しぶりにかけてみた電話は、もう取り外されていた。
彼女は、私よりも二歳年上になる。同窓会名簿の彼女の欄の最後に、私は「もういない」と書いて、きょうの日付を記入した。
(注・関連記事を2017年3月21日に書いています。)
http://blog.livedoor.jp/shimuratakeyo/archives/55727080.html
(注2・上記記事の「囲む会」のときに、温和なご夫婦にお会いしましたが、名刺交換をしなかったので連絡の方法がわかりません。もしこの記事をごらんになることがありましたら、このコメント欄にお知らせ頂けると幸いです。彼女についての情報を、なるべく多く知りたいのです。なお、彼女の実名は「田村比奈子(旧姓・高藤)」さんです。)
内容は、「ひなまつり」のはがきへの礼状だが、通り一遍の返信でも、英語で書くと、なんとなくサマになるような気がしたのだろう。その気分は、私にもすぐわかった。手紙の続きには、少しでも勉強に役立つように英語にしてみましたと書いてあり、そして手紙の定型として、”Yours sincerely"(あなたのものなる、心から)として末尾を結んでいた。私はこのときほど、この定型文を直訳したいと思ったことはない。
彼女は、卒業と同時に日本航空に入り、当時は時代の最先端と思われていたスチュワーデスになった。学習院大学で同期生だった皇太子、つまり今の上皇さまが日航機でアメリカ訪問に出た際には、同期の親友と組んで担当者になり、その記事が「週刊女性」に載った際には、彼女の写真が表紙になっていた。その制服姿が、本当によく似合う美人だった。
彼女とは、長い電話で話したこともある。相手が公衆電話だと、当時は10円で時間が無制限だった。二時間も話していて深夜になり、彼女の帰り道が心配になって、すぐにも飛んで行きたい気持ちだった。
私が結婚した後では、一度だけ何かの集まりで会ったことがある。私の妻の手を握って、「昔のことだから、もう時効よね。女同士で仲良くしましょ」と言ってくれた。彼女も結婚はしたが、子供を授かることなく、その夫も亡くしたと聞いている。そしてきょう、久しぶりにかけてみた電話は、もう取り外されていた。
彼女は、私よりも二歳年上になる。同窓会名簿の彼女の欄の最後に、私は「もういない」と書いて、きょうの日付を記入した。
(注・関連記事を2017年3月21日に書いています。)
http://blog.livedoor.jp/shimuratakeyo/archives/55727080.html
(注2・上記記事の「囲む会」のときに、温和なご夫婦にお会いしましたが、名刺交換をしなかったので連絡の方法がわかりません。もしこの記事をごらんになることがありましたら、このコメント欄にお知らせ頂けると幸いです。彼女についての情報を、なるべく多く知りたいのです。なお、彼女の実名は「田村比奈子(旧姓・高藤)」さんです。)
とにかく存在感のある、忘れられない人でした。比奈子さんご自身は、ご自分の生涯について、ある種の「諦観」を確立しておられたように感じています。まだ過去形で書いていいのかどうかわかりませんが、もしも今年の「いとこ会」で何かわかったことがありましたら、差支えない範囲でお知らせ頂けましたら幸いに存じます。
このコメント欄でも、あるいは個人宛メール(プロフィールの下に表示してあり、非公開になります)でも結構です。