キプリングの『海山物語』 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム

本日は、バケツリレー様の寄稿コラムです!

バケツリレー様が次に目をつけたのはキプリングでございます。私(ヤン)もはじめて知りました。

このキプリングの翻訳をして皆様にご紹介ということで、読者の皆様は「まだ日本で読まれていないキプリングの物語」を読むことにっ!

すごく楽しみなのでございます。じっくりとお楽しみくださいませ!!

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キプリングの『海山物語』~バケツリレー様

おかげさまで、長らく連載しました『ジョジョの忠義な哲学』が完結しましたので、今回から新連載スタートです。

 

『ジャングル・ブック』『少年キム』などで有名な、イギリスの作家ラドヤード・キプリングの『Land and Sea Tales for Scouts and Guides』(『海山物語』 1923年、本邦未訳)の全訳です。

 

1892年のキプリング↑

 

ラドヤード・キプリング論: 公的発言者として

 

キプリングについては、ウィキのほか、上記リンク先の論文が詳しいのですが、ごく簡単に紹介すると、

 

19世紀終わりから20世紀初め、第一次グローバリズム/帝国主義の時代のイギリスの国民的詩人・作家。インドで生まれ、イギリスで育ち、青年時代をインドで過ごす。ノーベル文学賞を受賞したが、桂冠詩人は辞退している。

極めて愛国的・保守的な思想の持主で、当時のイギリス帝国の拡大には賛成する一方、本国において楽々とグローバリズムの果実を手にする者(ジェントリ階級)や現場で汗を流さない口先だけの軟弱者(リベラル派)には批判的だった。

彼が愛し、描こうとしたのは、あくまでも「前線」「現場」において国家のために働く者たちでした。

すなわち、彼は歴史や伝統を愛しつつ、「庶民の忠義」を描き、それによって国家の栄光・隆盛を願った作家だったと私は思います。

 

で、『Land and Sea Tales for Scouts and Guides』ですが……

邦題の『海山物語』は、私がこの本を知るきっかけとなった河村幹雄教授の『日米不戦論』において、そう訳されていたのに倣ったものです。

 

『日米不戦論 その13』

 

直訳すると『スカウトとガイドのための陸と海の物語』。スカウトは、いわゆるボーイスカウトで、ガイドはその女子バージョンのガールズガイドです。(今はガールスカウトになってるようですが) 

そんなわけで内容としては、少年少女向けに、勇気と成長をテーマに書いた作品集。エッセイ、小説、詩が収録されています。

 

まず今回は、ごく短いですがその前書きを掲載したいと思います。

 

『海山物語』

(ラドヤード・キプリング著 マクミラン発行 1923年初版 1951年再編集版)

底本 Land and Sea Tales for Scouts and Guides
by Rudyard Kipling  MACMILLAN AND CO.,LIMITED  1951
(First Edition November 1923)

 

 この本を手にされた皆さんへ――

 

 皆さんとその愛する方々が健康で、世間にあっても家庭にあっても幸福でありますよう、そして大いなる神秘が皆さんの内に響きますように。

 

 // かつて多くの国々が滅び去った……跡形もなく。
歴史を見れば、その原因は明らかだ。
どの国の場合でも、それは単純なたった一つの理由。
国民が調っていなかったのだ。//

 

たとえ身体が鈍麻で、体力や技能に欠けるところがあったとしても……
人はその精神を修養し、己が弱き身体を意のままに動くよう練ることができます。
実際、それをやり遂げた人は多くいるし、その偉業は輝いている……質素なランプの中で光る灯火のように。

それゆえ、障碍ある人、弱き人、病める人……
皆さんどうか、まず精神を「調えて」ください。

 

精神の方が粘土のように鈍く重く、あるいは逆に砂のように軽く移り気だったとしても、身体を強く鍛えてください。

そうすると身体の方が、精神を強く育て上げてくれるものです。

勇敢な騎手が高い障壁の前に馬を進め、観客が固唾を飲む間に掛け声・拍車・手綱さばきで見事跳び越えるように。
「調えよ」――調えるのです、身体をも!

 

地上の何ものにもまして―― 技量、才能、恩寵――
名声、財産―― そんなものよりずっと必要なこと
これこそが、あらゆる法則に通ずる原理なのだ。
「調えよ」――調えよ、精神を、身体を!

 

ほとんどリズムを乱さぬ強い心臓――
心が欲するところを思料する冷静な頭脳――
手足を導くべく距離を測る眼――
身体が疲れ果てた時にもへこたれぬ根性――
こういったことが、このひどい世界においては必要なのです。
機知に富むことよりもはるかに、です。
だからどうか少年少女の皆さん、
「調えよ」――調えよ! 名誉のために調えるのです。

 

時代と場所を問わず通ずる一つの教訓――
あらゆる事柄、移りゆく世の法の上に不変の真理。
少年少女、男性女性、すべての国家、すべての人種にとっての真理。
調えよ――調えよ! さらにもう一度、調えよ!

 

(以上)

 

「使い古しの根性論・精神論だ!」 

「所詮、子供向けの文章であって、大人のオレには関係ない!」

というような感想を持つ人もいるかもしれませんが……

 

国民の体力、精神力こそが国家としての経済、生産、文化、軍事の元であることは確かですし、これらを養うことなしには、世界中が自らの利益を追求して成長を目指している中で、生き残っていくことはできません。どうあっても、「古今を通じて間違いのないこと」です。

 

また、大人として、将来の子供たちにこうしたことを伝えていくにはどうすればよいか、考えるというのも大事でしょう。

 

さらに、これを「子供と揶揄される日本という国家に向けた文章」として考えるという視点もアリだと思います。その視点で言えば……

 

体力は経済力、軍事力。精神力は文化力、学術力とも言えるでしょう。

これらは国家の両輪であり、どちらか片方だけ伸ばそうとしても、伸び悩んで空回りする。

 

とはいえ、それぞれの国民は自らの仕事や役割において、日々ごく狭い範囲でしか、上記の力を伸長させることはできません。企業の営利追求や利便性向上のために、伝統的文化が毀損されること、逆に文化保護のために経済性が犠牲にされることもあり得ます。

 

そこをうまくバランスを取り、両輪が回って前進できるようにする、それが政治だと思います。

すなわち、調和させること、「調える」ことですね。

 

ということで、上記「前書き」にある「調えよ」ですが……

 

原文では「Be fit」となっています。「fit」は「(仕事や状況に)適した」「(人が)適任の」「調子のよい、元気だ」「用意ができている」。また、動詞として使う場合は「適合させる」「備える」「調和する」

 

「前書き」における意味としては、「困難な状況にも適応、対応できるよう、己を鍛え、常に備えておく」、そのような努力を続けるということだと思います。

 

現在、ほとんどの国民が自らの持ち場で、それぞれ懸命に、そのような努力を続けています。しかしながら、世界で唯一、ほとんど経済成長していない。学術力も軍事力も伸び悩んでいる。

 

これは国家全体としての「調え」方、つまり政治が誤っているからだと思います。大企業、グローバル投資家・株主等の「短期的利益」に偏ったものになっているからでしょう。

 

うち続く天災、公共インフラの劣化、中国の軍事的台頭、グローバルな人の移動などに対応・対抗し、アメリカの半植民地状態を脱していくには、正しく状況を把握し、政策を調えていかねばなりません。

 

具体的には、積極財政、消費税廃止、国土強靭化、国防力強化、外国人労働者(移民)制限、原発再稼働などが考えられます。(現状、まるっきり停滞もしくは逆噴射ですが…)

 

そしてそのためには、私たち国民が「大衆」ではなく、責任ある「庶民」としての感覚を取り戻し、それに基づいて、誤った政治を大いに批判し、正しく調えていくしかない。その感覚を共有し得ない政治家には、権力の座からの退場を迫るのみ。

 

それこそが、「国民誰もが豊かに仲良く暮らせて、外国にへーこらせずにすむ祖国」を目指す、「真の忠義」、それを見た海外諸国にも手本として広がっていき、世に「忠義の善」を増すものです。

 

そんな「庶民の忠義」のエッセンスが感じられる、キプリングの作品集の翻訳を連載いたします。

政治ブログである「進撃の庶民」ではちょっと毛色が違う感じかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

次回、マルタ十字は勇気の徴(しるし)! 階級、、家柄、人種を問わず、然るべき者のみがそれを得ることができるッッッ

 

第一話「ヴィクトリア十字勲章」!

 

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