デヤング美術館 (de Young Museum) は、ゴールデンゲートパーク (Golden Gate Park) にあるサンフランシスコを代表する人気のミュージアムです。長い歴史を誇るデヤング美術館ですが、最近建てられたばかりの洗練された美しい建築の建物がとても印象的です。アメリカアートとコンテンポラリーアートが中心の構成となっており、その他、アフリカや、オセアニアなど世界各地の歴史的な遺品なども展示されている、美しい建築の空間に見どころの作品がいっぱいある美術館です。
2015年に完成したばかりの個性的な美しい建築のデヤング美術館 (de Young Museum) では、オブジェに飾られた中庭を通り抜けて、ゆったりとした作りの美術館の入口へと入っていきます。
デヤング美術館 (de Young Museum) は、ゴールデンゲートパーク内にあり、美術館の前の広場を挟んだ向かい側には、カリフォルニア科学アカデミー があります。
デヤング美術館は、1894年にサンフランシスコのゴールデンゲートパークで開催された国際博覧会 (California Midwinter International Exposition) 終了後の1895年に創設された歴史ある美術館です。
アメリカアートとコンテンポラリーアートを中心とする、デヤング美術館 (de Young Museum) と、ヨーロッパ古典アートを中心とする レジョンオブオナー (Legion of Honor)、この二つの美術館を合わせて、サンフランシスコ美術館 (Fine Arts Museums of San Francisco) となります。サンフランシスコ美術館に属するこの二つの美術館の場所は少し離れているのですが、チケットは共通券となっています。
デヤング美術館の館内に入ると、広々とした憩いのスペースには人々が集まり、周囲の演出により、一際目を引く巨大スクリーンを前に、不思議な映像アート作品が上映されています。
階段を上り、デヤング美術館の一番の見どころ、2階のアメリカンアートセクションに向かいます。17世紀以降のアメリカの肖像画、アメリカの大自然を描いた風景画、ネイティブアメリカンの工芸品などアメリカらしい作品が数多く展示されています。
アメリカを代表する景観の一つ、ナイアガラの滝 を描いた作品は、全体像が、二つに分かれて描かれている面白い作品です。
アメリカの原住民、ホピ族の彫刻。
アメリカ初期に中心となったのが、現在の写真のような役目を担っていた肖像画です。絵画作品と一緒に、箪笥や食器など美しい豪華なインテリアも展示されています。
美しい真っ白な女性の彫刻と、背景には、幻想的な美しい虹の風景画、Frederic Edwin Church の “Rainy Season in the Tropics” があります。
ユニークなドレスの彫刻もあります。メトロポリタン美術館では、トーマスコール展 が行われていたことがありますが、そのトーマス・コール (Thomas Cole) や Asher Brown Durand らハドソンリバー派の美しい風景画の作品などが並んでいます。
すがすがしい緑の広がる中庭での休憩は涼しく気持ちよさそうでした。
アメリカ西部開拓時代のアート作品。Frederic Remington の作品などが展示されています。
不気味な美しさがある黒いガラスのアート作品。
こちらも存在感がある、思わず注目してしまう彫刻作品。デヤング美術館では、彫刻やその他の工芸品が、周囲の絵画と調和するようにバランスよく展示されています。
アメリカの著名なアーティストである、女性の人物像をよく描いたサージェントや、アメリカ国立公園など西部の絶景を描いた Thomas Moran などの作品もあります。
この他、モダンアーティストたちの作品も展示されています。スペイン出身のアーティストで、アメリカでも大活躍したサルバドール・ダリ。フロリダのセントピーターズバーグには、アメリカ最大の ダリ美術館 があり、ダリ好きにおすすめです。
イタリア出身のモディリアーニ。昨年、ニューヨークで モディリアーニの特別展 が開催されていました。
ニューヨークで活動した知られざる女性アーティスト、Florine Stettheimer。こちらも、昨年、ニューヨークで ステットハイマー展 が開催されていましたが、デヤング美術館ではこのように著名なアーティストの作品が次々に登場します。
この他、2階には、アフリカ、オセアニア、ニューギニアをテーマとした常設展があります。
それぞれの原住民の文化を伝える存在感のある遺品が数多く展示されていて、圧巻です。
現在、デヤング美術館の2階では、”Weapons of Mass Seduction: The Art of Propaganda” という特別展が開催中ですが、戦争の時代などに、人々を統率誘導するために使用されたプロパガンダの方法が紹介されています。
マスメディアやインターネットの存在しない時代に、人々の注目を集めるために使用されたのが、ビジュアルに工夫が凝らされたアートポスターです。軍のリクルーティングに使用されていた有名なアンクルサムをはじめ、様々な意図を持った当時のポスターが展示されている珍しいテーマの特別展です。
1階の一番の見どころは、ガラスや竹細工など様々な分野を網羅したコンテンポラリーアートセクションです。アップステートニューヨークにある コーニングガラス美術館 のような美しいガラスアートコーナーも素敵でした。
有名なガラスアーティストであるチフーリの作品も展示されています。シアトルや フロリダのセントピーターズバーグ には、チフーリ専門の美術館がありますが、本当に色々なミュージアムにチフーリの作品が存在します。
メトロポリタン美術館の日本アートコーナーで開催されていた 竹細工展 で見たような美しい竹細工作品。
彩り鮮やかなビー玉による面白い作品。
この他、1階には、北米原住民の歴史的な遺品が展示されているコーナーがあります。
地下へ下りていくと、特別展スペースとなっています。
現在は、終了してしまいましたが、この時行われていたのが、”Cult of the Machine” と題された特別展です。1920-30年代にかけての急速な経済発展を遂げたアメリカの産業革命時代のアートがテーマとなっていました。
1920年代は、機械化によりアメリカの産業が画期的に発展した時代で、アールデコの雰囲気の中、機械、工場、高層ビル、巨大建造物などが数多く描かれました。
そんな時代に広く普及していったのが、大量生産された車ですが、中には、こちらのようなスーパーラグジュアリーな車 (1937 Cord 812 SC Phaeton) もありました。
オキーフ (Georgia O’Keeffe) により描かれたニューヨークのイーストリバーの光景です。オキーフと言うと、ニューメキシコの原風景やハワイの花が思い浮かびますが、このような作品も描いていました。ちなみに、現在、ニューヨーク植物園では、オキーフとハワイをテーマとして特別展 が開催されています。
当時、隆盛していたのが、プレシジョニズム (Precisionism) と呼ばれる人工的な都市部の景観を写真のように精密に描くスタイルです。そんな流派の第一人者である、Charles Sheeler が描いた、 American Landscape です。ニューヨークの MOMA からやって来ている作品です。
こちらは、イタリア出身でアメリカで活躍した Joseph Stella のブルックリンブリッジを描いた作品。アメリカの産業革命時を描いた作品は、ホイットニー美術館でも多くみることができます。
サンフランシスコのTシャツやトートバッグなどサンフランシスコのお土産なども、デヤング美術館のギフトショップでは売っているので、最後にふらっと立ち寄ってみます。
デヤング美術館の見学所要時間は、大体2-3時間程で一通り見て回ることができます。美しい空間の美術館で、アート好きならだれでも楽しめると思いますが、特に、アメリカンアートと様々な媒体を利用したコンテンポラリーアートに興味がある人におすすめの美術館です。クラシカルなヨーロッパ古典アートは、デヤング美術館にはなく、サンフランシスコ美術館のもう一つのミュージアム、レジョンオブオナー (Legion of Honor) の方になります。どちらも個性的な素晴らしいミュージアムで、同日であれば、共通チケットで両方に入場できるので合わせて訪れてみるといいと思います。ちなみに、仏像などアジアのアートは、サンフランシスコ美術館とは別になりますが、Asian Art Museum で見学することができます。
もし、時間があるならば、デヤング美術館には、周囲を見渡せる Hamon Tower があり、無料で上ることができます。
デヤング美術館 (de Young Museum)
50 Hagiwara Tea Garden Dr, San Francisco, CA 94118 地図
サンフランシスコ美術館(Fine Arts Museums of San Francisco)のヨーロッパ部門である、リージョンオブオナーは、同日であれば、共通チケットで入場でき、一緒に訪れてみるのがおすすめです。
サンフランシスコの中心部、SOMA にある SFMOMA もアート好きにおすすめの見どころの多い美術館です。
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