『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1432

2018-12-11 04:23:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスが起ちあがる、会所から浜一帯を見回す、目線を巡らせる。
 初秋の陽光が明るい、建造の場の活性が目に入る、活性を増幅して身に感じる、彼はそこに輝きを感じる、視野にオーラの発現を覚える。
 彼は言葉にしない、イリオネスと目を合わせる、アエネアスは『自前の欲目かな』とふと思う。
 イリオネスに声をかける。
 『おう、イリオネス』
 アエネアスは続けようとする言葉を止める。
 『オットット、これはいかん!ここは仕事の場だ』場を認識する、言葉を変える。
 『軍団長、今月も月半ばに到っている、業務全体の進捗を診て、状況の把握を頼む。仕事に懸命な彼らは、森の中にいる、木を見ているが森が見えていないかもしれない。調整すべきをしてやってほしい』
 アエネアスが注意すべき点を指示する。
 『解りました。クレタの地は集散所の暦で日々が動いています。私らの暦とは2日のずれがあります。私らの暦のほうが先行しています。対外的な情勢にも気を配って状態を把握します』
 『おう、よろしく頼む。彼らは、作業の渦中にあって見落としもする、それを拾ってやってくれ』
 『統領の彼らに対する思いやりといったところですな。承知しました』
 『なあ~、イリオネス』
 『今度はイリオネスですね。はい、何でしょう?』
 イリオネスが頭をかしげ、耳を傾ける。
 『俺たちのことだが、一歩先を見つめ、時には遠い未来を見つめて歩を進め前へと進んでいく。前が見えることもあれば、前が見えないこともある。前方に見える穴、見えない穴もある。見えない穴に気づかずにその穴に足を踏み入れるかもしれない。少しばかりの注意を怠ったばかりにな』
 アエネアスとイリオネスが目を合わせてうなずく。
 『少しばかりの注意でその穴を避けて通過したかもしれない。いや、飛び越えたかもしれない。また、歩運びを変えて、穴を避けて通り抜けるかもしれない』
 『そうですね』
 『脚下照顧しての歩運びは、難を避ける人智の及ぶ範囲である。彼らによろしく道を教え、歩運びを導く。それが俺らの存在であると考えている』
 『統領の言われることにうなづけます。その通りです。そのことを怠ることなくやっていきます。とは言うものの、私ら自身も目アキの盲者で道を歩いていくかもしれません』
 『その時はどうなる、状況に耐える、一歩の後退、二歩の前進で最悪を避ける、それに徹する。諦めない、停まらない!それが未来へと進む処方だと考えている。抗して停まらずだ。事態に打ち克つまではだ!と考えている』
 『解りました。民族を率いて君臨する者の意思であり思考です。肝に銘じて事にあたります』
 『ヘタな講釈をしたな。噴飯ものだな!トラは死して皮を残す、俺は死して何を残す何になるかだ?ハッハッハ!』
 アエネアスは大声をあげて笑う、イリオネスは、うなずきはするが、笑おうか笑おうまいかと迷う、そのあげく、微笑み返すことにした。


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