まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

イギリスおっさんずゲス不倫!

2018-11-15 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVドラマ「英国スキャンダル セックスと陰謀のソープ事件」を観ました~。
 60年代のイギリス。議員のジェレミー・ソープは、厩舎で出会った青年ノーマンを愛人として囲う。情緒不安定が悪化し、それに辟易したソープに捨てられたノーマンは、ソープの母親や警察に二人の同性愛関係を暴露しようとするが…
 ヒュー・グラントとベン・ウィショー共演のイギリス版おっさんずラブです。同じおっさん同士の同性愛でも、ピュアな日本のオリジナルと違い、こっちはゲス不倫。男たちが繰り広げる欲望、打算、保身、恨みつらみ、といった人間の醜さが、イギリスらしいブラックでシニカルな笑いで描かれてました。

 日本でもちょっと前に、政界でゲス不倫が流行?しましたが、こっちは男女ではなく男同士ですからね~。スキャンダル度は格段に上です。実話というのにも驚かされます。殺人計画や裁判沙汰など、みんなまるでネタを提供するために騒いでるとしか思えませんでした。みんな大真面目で必死なところが、皮肉な笑いを誘います。ソープとノーマンのキャラ立ちした強烈な個性と言動が、とにかく驚異で愉快です。とにかく二人が、まるで競ってるかのようなゲスっぷり!どっちもゲスなんだけど、塩と砂糖ぐらい種類が違うゲス、というのが面白かったです。

 まずは塩ゲスのソープ。これぞ英国のエリート!な、スノッブで裏表がありすぎる政治家。常に他人をなめくさってる不遜な言動と思考回路、何でも自分の思う通りになって当然、自分に従うのは当然と思ってる傲慢さや、邪魔者や必要でなくなった者は虫けら同然扱いな薄情さ非情さなど、まさに人でなしの鬼畜。こんな政治家ぜったいイヤ!なんだけど、不思議と不愉快さとか怒りはほとんど感じません。常にひょうひょうとしてて軽やかなので、悪人には全然見えません。それはもう、ソープ役のヒュー・グラントがいつも通りの演技をしてるからでしょう。

 ズルくてスケベで軽薄なんだけど憎めない男役、はグラント氏の専売特許ですもんね。アメリカ人俳優だと演技が巧くても不快になるだろう役を、こんなにも笑える楽しいヒールにしてしまうなんて、グラント氏にしかできない芸当かも。困惑顔で毒を吐く、というグラント氏ならではの演技が今回も冴えてました。軽薄だけど教養ある育ちの良さそうな雰囲気、慇懃無礼な物腰も、ハリウッドのコメディスターにはないグラント氏の武器でしょうか。でもグラント氏も、すっかり爺さんになったな~。顔はもうシワクチャ。「モーリス」の美青年が、年月を経て再びBL、でもおっさんずゲス不倫なんて。自己軽視なセルフパロディ演技で、往年のファンをおちょくってるかのようなグラント氏の皮肉な人柄が、これまた極めてイギリス的ですね。

 そして、砂糖ゲスのノーマン。こいつがね~。ほんまソープじゃなくても始末したくなりますよ。底抜けのアホ?いや、実はズル賢い?どっちの面もクルクル見せて、ソープも視聴者も翻弄、困惑させまくり。悪人ではないけど、悪人よりもっとタチが悪いんです。ピュアすぎて融通がきかず、自意識が過剰で常に悲観的で精神不安定。虚言と被害妄想がはなはだしく、自分が不運で不幸なのは全部ソープや社会のせい、と思い込んでウジウジメソメソ、だけならいいけど、イヤ~な方法で意趣返しをしてくる攻撃性も発揮しまくるなど、弱々しい見た目に猛毒を秘めた害虫みたいな男なんですよ。多くの人に嫌われる反面、愛してくれる人も同じぐらいたくさん現れて、彼らの親切や情につけこみながら迷惑やトラブルを撒き散らして生きてる調子のよさに呆れます。

 そんなノーマンを、ゲイ役をやらせれば世界一のベン・ウィショーが大熱演!これほどまでにガラス細工でギザギザハートなオカマ心を表現できる役者、ベン子さんしかいません。ナヨナヨとクネクネしたキャマキャマしい仕草や歩き方が、堂に入りすぎ。目つきや喋り方がメンヘラすぎて怖い、けど、かなり笑えます。ビクビクおびえてるくせに、自分の身だしなみやいい男の目を常に意識してるところとか、国民カードへの固執など、かなりズレてて滑稽。ラストの法廷シーンでの、赤裸々すぎるセックス暴露や、女優かよ!なドヤ顔&ポーズも、ノリノリなベン子さんに喝采!少年のような肢体のベン子さんが着こなす、60年代の英国ファッションも目に楽しいです。とにもかくにも、メンヘラのオカマほどヤバい生物はないと思わせるベン子さんの怪演に瞠目!ヤバいメンヘラおかま役ながらも、その可愛らしく痛々しい風情で、ユーミンじゃないけど守ってあげたい~♪なベン子さん、魔性っぷりもハンパじゃないです。
 
 グラント氏とベン子は、冒頭に濃厚なイチャイチャシーン(ソープがノーマンをウサギちゃん♡と呼んで可愛がるのがキモ笑!)はあるものの、すぐに決裂しちゃうので一緒のシーンは少ないです。これが実話だということ以上に、これをテレビで放送できるイギリスという国に驚嘆です。露骨なゲイセックスシーンこそないものの、内容がエグすぎる。日本では絶対に制作不可能。同性愛が法律で禁じられていた、というのも今となっては信じがたい史実です。LGBTが犯罪か病気扱いされていた当時のイギリスでのゲイの生き辛さは深刻で、ゲスであると同時に哀れでもあったソープとノーマンです。

 あと、ゲス恋愛中にラブレター(現代だとメールや写メ)を送るのは軽率で危険。そして、恋愛後のアフターケアも怠ってはいけません。ソープがノーマンの国民カードを何とかしてあげてたら、あんな面倒なことにならなかったでしょうし。きれいに別れるのが肝要、でも難しい、とソープの不注意や手ぬかりを見ていて痛感しました。

 ↑ベン子さんの新作は、名作の続編「メリー・ポピンズ リターンズ」です

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2 コメント

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塩ゲス vs 砂糖ゲス (amore)
2018-11-16 17:25:06
たけ子さんのレビューは最高、特に2人のキャラ説明(塩と砂糖の対決)が絶妙で、TVドラマより面白いです。塩ゲスのほうには、唐辛子が忍ばせてあるから、ロシアンルーレットみたいに、運が悪いと塩辛いだけじゃ済まない。ホント、ヒュー様は得なキャラの持ち主ですよね。ノリノリのベン子さんも可愛かったなァ。当然演技なんですが、2人とも自然体で、いい感じ。ロケ現場の雰囲気が、とっても良かったというのも頷けます。全く違うジャンルの作品で、またこの2人が共演してくれないかなぁ。
GESUGESUさせてよ~♪ (松たけ子)
2018-11-17 13:43:54
amoreさん、こんにちは!
ほんと、甘くてしょっぱいゲスどもでしたよね~。どっちとも関わるのは御免こうむりたい連中ですが、ヌルくてユルい生活をしてる私からすると、ある意味人生を謳歌してた彼らが羨ましくも。
ヒューおじさん&ベン子、どっちも持ち味を遺憾なく発揮してましたね!そーいやこの二人といえば「パディントン2」!また共演してほしいものですね。
このドラマをモチーフに、日本でも新おっさんずラブを作ってほしいわ~。さしずめ理想は、ソープ⇒吉田剛太郎、ノーマン⇒岡田将生、かな(^^♪

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