それはある日、僕が電車に乗っている時に起きた。

 

もうそろそろ女子アナの愛称に「パン」を付けるのをやめにしてくれないか？

 

え？

 

僕は耳を疑った。
僕の隣に座っていた知らない男性が突然僕にそんなことを言い始めたのだ。

 

あ、あの・・・何か？

 

いや、だから、もうそろそろ女子アナの愛称に「パン」を付けるのをやめてほしいって言っているんだよ。

 

いや、何のことなのか・・・

 

いい加減、君も嫌になってきてるんじゃないのか？
アヤパンはまだ良しとしても、カトパンで既に世間は違和感を感じ始めた。
しかしその後も君はミオパン、ミタパンなどパンを量産し続けているじゃないか。
一体いつまで続ける気なんだ？

 

いや、僕は何も知らないんですが・・・

 

何も知らないって・・・君しかいないだろう。
いいか、次の女子アナの愛称には絶対パンはつけるなよ！わかったな？！

 

そう言って、その男性は電車を降りて行った。

 

一体何だったんだ・・・

 

僕は唖然としていた。すると

 

えらい言われようでしたなぁ。

 

突然、横に座っていたおじいさんが僕に話しかけてきた。

 

え、ええ・・まぁ・・・

 

きっとあなたはおかしな人に絡まれてしまったと思っているのでしょう？

 

ええ、そうですね。

 

しかし、あの人が言うことは当たっているのですよ。

 

え？どういうことなのですか？

 

女子アナの愛称にパンを付けて、量産し続けているのはあなた自身だということです。

 

は？そんな訳ないでしょう？
僕はただのサラリーマンです。フジテレビの社員でも何でもありませんし。

 

いやいや、私が言っているのは、そういうことではありません。
あなたはこういう話は聞いたことがありますか？
この世界で自分以外を見ることはできない、と。

 

あ、あぁ、何となくですが・・。

 

あなたが目にするもの、聴くもの、すべて自分と何らかの波長が一致したから
あなたはその出来事やその人と出合うということです。
ということは、女子アナの愛称パンの量産もまたあなたの何らかの要素を反映しているということです。

 

まさか、僕にそんな影響力があるとは思えません。

 

まぁ、最初は信じられなくてもかまいません。
でも、仮定として一度採用してみてください。
ところであなたは、女子アナの愛称にパンばかりが使われていることは知っていましたか？

 

え、ええ。

 

そこに何を感じていましたか？

 

まぁ、ワンパターンというか、またか・・・というか。
僕も多少なりとも、もうやめてくれないかという思いはありました。

 

つまり、マンネリ化をそこに感じていたということですね。

 

ええ。

 

ということは、それはあなたが仕事や何かにおいて同じパターンを繰り返し、マンネリ感を他者に感じさせているということです。

 

そんな・・・それが女子アナの愛称と関係があるのですか？

 

信じられないかもしれませんが、そういうことです。
マンネリを感じる現象と出合ったということは、あなたもまたマンネリ感放っているということなのですよ。
何か思い当たることはないですか？

 

そう言われると一つあります。
実は私、レコード会社に勤めていまして、昔リンドバーグというバンドの担当だったのですが、
そのバンドのアルバム名でマンネリを連発していました。

 

どういうアルバム名だったのですか？

 

１枚目が「リンドバーグ１」、

２枚目が「リンドバーグ２」、

３枚目が「リンドバーグ３」

 

という具合に、
バンド名にただ数字をくっつけただけのもので、

最終的に「リンドバーグ15」

 

まで出しました。

 

15枚も？な、何という大胆なマンネリを・・・。
それはきっと多くの方に「もういい加減にしてほしい」という思いを感じさせたことでしょう。

 

それだけではないんです。
ケツメイシというバンドでもそれをやってしまいまして・・・。
ケツメイシの1枚目のアルバムが

 

「ケツノポリス」、

2枚目が「ケツノポリス２」、

3枚目が「ケツノポリス３」、

4枚目が「ケツノポリス４」、

5枚目が

 

もうやめてくれ！
「ケツノポリス」という意味不明な言葉の整合性を何とか数字で取ろうとするんじゃないよ。

 

はい・・・調子に乗ってしまいました。
そう考えると確かに、女子アナの愛称のパンと、僕のアルバムの命名のパターンは似ているような気がします。

 

その通りです。
あなたはどこかで「ま、何となく浸透してきてるし、これでいいでしょ」と手を抜いている側面が、
女子アナの愛称のパンの量産という現象を招いてしまったというわけなのです。

 

そこまでの影響力が私にあったのですか・・・

 

（つづく）

 

 

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