映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

プロヴァンス物語 マルセルの夏/プロヴァンス物語 マルセルのお城(1990年)

2018-08-20 | 【ふ】



 以下、公式HPよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 お針子と教師の間に生まれたマルセルは、幼いうちから読み書きに秀でた少年。やがて弟、そして妹も誕生したパニョル一家は、夏のヴァカンスを過ごすため、ローズ伯母とその夫ジュール伯父が借りている丘陵の緑とセミの声に包まれた別荘に向かう。狩猟の名人である伯父は初心者の父ジョゼフを狩猟に誘う。マルセルが初めて目にする頼りない万能の父…。(『プロヴァンス物語 マルセルの夏』)

 再び休暇が訪れ、友が待つ夢にまで見た丘陵に戻ったマルセルは、そこで初めての恋を体験する。やがてパニョル一家は、母の計らいで毎週末を別荘で過ごし始める。ただそこは、多くの荷物を抱えて歩いていくには駅からとてつもなく遠く、父の教え子の助けもあって、いくつかの大きな邸宅の庭先を抜けて近道をしていた。が、ある日、頑固で容赦ない邸宅の管理人に見つかり、母は卒倒してしまう…。 (『プロヴァンス物語 マルセルのお城』)

=====ここまで。

 マルセルの夏、マルセルのお城は、それぞれ独立した作品ですが、連作として制作されたものです。「夏」→「お城」の順に両方見るのが一応オススメ。


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 夏休みスペシャル企画、、、かどうかは分からないけど、同時期に開催中の「ベルイマン特集」はスルーして、現在、恵比寿ガーデンシネマで公開中の2作品を見て来ました。DVDにもなっているみたいだけど、こちらは4Kリマスター版。しかも、こういう自然を舞台にした作品は、スクリーンで見るに越したことはないし、他にも同じガーデンプレイスにある東京都写真美術館で公開していた、ベルドリッチの『暗殺のオペラ』も見たかったので、酷暑の中を行ってまいりました。『暗殺のオペラ』の感想はまたいずれ、、、。


◆南仏プロヴァンスの日々、、、。

 子どものころの、本当に幸せな時間を切り取って生き生きと描いた2作品。見る者も束の間幸せな時間を共有できる。

 19世紀末フランス、、、ということで、中産階級にとっては良い時期だった様子。もう少し時間が経つと第一次大戦の時代に突入していくのだからね。

 マルセルの父・ジョゼフは教師で厳しくも優しい人。母親のオーギュスティーヌも美しく、夫を支える良妻賢母。このお母さんは、自分が町に買い物に行くときは、幼いマルセルをジョゼフの教室の後ろに置いて行くので、マルセルは読み書きの授業を子守り代わりに聞くうちに、きちんと教えられもしないうちに、読み書きができてしまうようになる。ジョゼフは驚くが、オーギュスティーヌは、マルセルの「脳味噌が爆発してしまう」と本気で心配し、マルセルに読書を禁じてしまう。

 ……という、何とものどかな描写が続く。そうして、マルセルに弟が生まれ、オーギュスティーヌの姉・ローズもマルセルを連れて公園を散歩していて出会ったジュールと結婚し、皆で夏の間を別荘で過ごす。この「夏」は、特に何が起きるわけでもなく、ほのぼのとした夏休みではあるが、マルセルにとって忘れがたい子ども時代の1ページとなっていく様子がキラキラした映像で描かれる。

 「お城」の方は、さらにその後のクリスマス休暇や、日常の休暇ごとに別荘に通うことになったマルセルたちの様子を描写したもので、こちらは小さい出来事がちょこっと起きるものの、やはり概ね平和でほのぼのである。出来事と行っても、別荘までの遠い道のりが、思わぬショートカットによって、一家にとっては大変な冒険になる、というものだが、子どものマルセルにとっては、これは大事件だったに違いない。

 ただ、「お城」の終盤で、一気にこの2作品は切なさを帯びる。美しく優しい母・オーギュスティーヌはこの5年後に病気で亡くなり、弟も30歳で夭折する。「夏」で、山で出会い無二の親友となった少年リリは、その後第一次世界大戦で銃弾を受けて亡くなる。こんな哀しい未来が、この2作品に描かれているマルセルたちに待っているなど、登場人物の誰も想像だにしていない。そして、マルセルのナレーションはこう語る。

「それが人の世だ。喜びはたちまち悲しみに変わる。幼き者が知る必要はない……」

 そう、そのとおり。この先に何が待っているのかなど、幸せな時間を過ごす子どもが知ることも考えることも、必要のないこと。でも、後から振り返って見ると、その幸せな時間が、どれほど輝いた大切な時間だったか、、、大人になって初めて知るのである。

 だから「夏」→「お城」の順に見た方が良いと思うんだけど、「お城」を先に見れば、「夏」のキラキラが、ますます眩しく切なく胸に響くのかも知れない。それもいいかも、、、。


◆父・ジョゼフ

 ジョゼフが、なかなか面白い人である。

 教師だから、それなりに厳しい一面もあるのだが、幼いマルセルにとって、父はとにかく偉大な人なのだ。何でも知っていて、頼りがいがあって、とにかく“おっきな人”なんである、マルセルにとっては。

 でも、実際はジョゼフも人の子。平凡な一オジサンだ。

 ある日、ジョゼフの友人が、大物を釣り上げて、得意のあまりにその大きな魚と一緒に記念写真を撮った。その写真をジョゼフに自慢げに見せると、ジョゼフは「わざわざ写真撮ったのか? 魚とポーズとったのか? 大物を釣って喜ぶのは良いが、写真まで撮るなんて誇りがないんだ。悪徳の中では、最も虚栄心が愚かしい」などとマルセルに言うのだ。

 しかし、後日、別荘で過ごしているある日、大物のウズラを仕留めたジョゼフは、そのウズラを腰にこれ見よがしに下げて、マルセルと並んで、神父に写真を撮ってもらうのである。

 そんな父の姿を見て、しかし、マルセルは、父を軽蔑するではなく、むしろ意気に感じてますます好きになるのである。

 また、マルセルは、「夏」の終盤で、別荘から自宅に帰りたくなくなって、親友リリとともに山で暮らす決心をし、自分のベッドの枕に両親に宛てた置手紙をして別荘から“家出”をする。しかし、そこは子どものすること、すぐに怖気づいて、慌てて別荘に戻ってくるマルセル。枕にそのままになっている置手紙を見てホッとするマルセルは、その置手紙を処分する。

 ……しかし、実はどうやらその手紙は両親には読まれていたらしいことが、その後の描写で暗示される。でも、ジョゼフはそれを露骨にマルセルに言ったりはしない。

 父も息子も、互いに互いを思いやり、愛情を抱いていることがよく分かる。

 「お城」では、別荘までのショートカットをするのに、他人の敷地を無断で通ることに家族でただ一人抵抗するのもジョゼフ。それは、不法侵入だから、というのもあるけど、それがバレたら教師をクビになってしまうから、という、極めて俗な理由が第一。でも、失業したら家族を養うことも出来なくなるし、現実的な理由で、こういうところでヘンにカッコつけて建前論を言わないところも好感の持てるお人。

 結果的に、意地の悪い管理人に見つかるけれど、かつての教え子に助けられる。ショートカットを教えてくれたのもこの元教え子。ジョゼフは良い先生だったからこそ、元教え子に何かと助けられるのよね。

 こんな父親を、マルセルが大好きなのは、当たり前だろう。


◆山の友・リリ

 このリリ君が、可愛かった! マルセルを演じたジュリアン・シアマーカもキリッとしたなかなかの美少年だが、リリを演じたジュリ・モリナスは、なんともはや可愛らしい。ちょっと特徴のある顔立ちだけど、リリのキャラとぴったりで、気に入ってしまった! 「お城」では出番が少なかったのがちょっと残念だけど。

 「夏」で、マルセルが山道で迷子になりかけた際に助けてくれたのがリリ。もう、山のことなら目をつぶっていても歩けるくらいに、何でも知っている少年だ。何というか、こういう子のことを“純粋”というのだろうなぁ、、、と、スクリーンを見ながら思っていた。

 嵐になりそうになって、岩場にマルセルと一緒に隠れると、後ろから視線を感じるリリ。マルセルも気付いて、リリはマルセルに「そっと振り向いて……」と言うと、マルセルは怖々「吸血鬼?」と聞く。「違う、“大公”だよ。大ミミズクだ」とリリが答えて、映ったのは、ホントに大きいミミズク。怖くなった2人は「濡れた方がマシ」と、雷雨の中を、マルセルの別荘に一目散に駆けて行く。

 そうして、連れ立って帰ってきた2人は、もうすっかり仲良しになっていて、びしょ濡れになった2人は素っ裸でマルセルの部屋に駆け込み、リリはマルセルの服に着替える。その服が、セーラー服で、リリが着るとまた実に似合っていて可愛らしい。リリはすごく嬉しそうで「これもらって良いですか?」、、、もちろん、マルセルはリリにあげる。

 「夏」のラストシーン、マルセルとリリの別れのシーン、リリが見送りに来るんだけど、そのときリリが着ているのがこのセーラー服。これを着て、寂しそうにマルセル達を見送るリリが、なんとも切ないのよね、、、。

 でも、「お城」の序盤で、久しぶりにマルセルと再会したリリがまた可愛い。本当はマルセル達が来るのを待っていたのに、「他の人のことを待っていたんだけどいなかった」と嘘を言う。もちろん、マルセルにはそれが嘘だと分かっているんだけど。何か、いいなぁ、、、こういうの、、、と見ながらしみじみしてしまったよ。

 そんなリリも、「お城」の終盤で、その後の哀しい最期が明かされる。あんなにキラキラしていた時代があったのが嘘のような、、、。


◆その他もろもろ

 お母さんのオーギュスティーヌを演じたナタリー・ルーセルが美しかった。彼女、あの『コックと泥棒、~』のプロデューサーの娘さんだとか、、、、。へぇー。

 あと、音楽が印象的だなぁ、と思って聞いていたのだけど、音楽を担当したのはあの『ディーバ』のウラジーミル・コスマだった! 『ディーバ』、、、あんまし好きじゃないんだけどね。

 とにかく、自然や景色が本当に美しく、これはスクリーンで見る価値があるというもの。4K画像だから、すごくクリアでキレイだった。

 “ここでは幸せが泉のようにあふれていた”
 “人生で最も美しい夏の日々”


 ……もうこの予告編のナレーションに全てが凝縮されていると言っても良いかも。良い映画を見ることができて、幸せでした、私も。









こんな子ども時代の思い出がある人は幸せだ。





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