ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

延命処置は主治医でも中止できない?

2020-07-28 05:49:18 | 世相
 先週は、延命処置について考えさせられた出来事が二つありました。

 ひとつは、介護を受けている人が日頃、「延命処置は望まない、緩和ケアでいきたい」と言っていたのに、「新型コロナにかかったら人工呼吸器を着けてもらいたい」と言ったという話。

 これは、20日(月)のNHK報道番組(『クローズアップ現代プラス』?)で、ある介護関係者から伝え聞いた話ですが、私は
「さもありなん! 決して、あさましい無定見だの、ダブルスタンダードだのと嗤ってはいけない」と思いました。

 新型コロナは肺炎が重症化するのが特徴で、その呼吸困難の苦しさは水に溺れてアップアップするような苦しさだそうです。こんな場合の延命処置は緊急避難的であって、がん末期や脳死状態のそれとは別だと考えてのことでしょう。

 もう一つは、23日(木)に報道された嘱託殺人事件。2人の医者が、ALS(筋萎縮性側索硬化症)で苦しむ女性患者を安楽死させた容疑で逮捕されたという事件です。

 ALSは、頭はハッキリしているのに身体の自由が利かなくなる進行性の病気です。病気の本人にしてみたら、延命処置を受け続けることはまさに生殺しにあっているようなものでしょう。脳機能がまともであるだけに悲惨です。

 ところで、人工呼吸器の装着や胃瘻で知られる延命処置、一旦受けることを選択したら途中で中止が利かないこと、皆さんご存じでしょうか? 中止が殺人になるからだそうです。

 このことを私は、ブログ記事『どこまでいきる』を読んで初めて知りました。今回の事件は、患者本人が強く希望しても主治医に延命処置の中止が許されない法律に誘因があったのでしょう。

 身体の自由が利かなくなったり、認知症が進んだりしたら、回復の見込みがないのですから私も延命処置を望みません。物を食べられなくなった場合もお迎えが近いそうですから、下手にジタバタしないつもりです。

 痛みに苦しみ、ジタバタするのも意識がある間のこと、意識がなくなったら苦痛もそれまでです。まぁ、家族の都合もあって、人はそれぞれですが・・・。

 私がそのつもりでも、いざとなったら気の動転した家族は医者の言いなりになるかもしれません。これを機会に家族には、安易に延命処置に同意しないよう伝えて置くつもりです。

 聞くところによると、延命一辺倒だった医学会も、遅まきながら尊厳死について議論を進めているようです。

 さすがに、安楽死を認めるまでは行かないでしょうが、せめて本人や家族の希望があったら主治医に延命処置の中止ができるようにすべきです。

 今回の事件を奇貨に、医学会はガイドラインの策定により前向きであってほしいものです。法律の方も、きっと学会の後を追っかけると思います。

         *   *   *   *   *
 今回のALS患者嘱託殺人事件、メディアは東海大病院での末期がん患者安楽死事件(1991年4月)に絡めて報道していました。そのお陰で、横浜地裁(1995年3月28日)で下された司法判断について調べてみる気になりました。
 参考までに、その判例で出された重要な項目と要点を挙げておきます。 

【安楽死を3つに分類】
(1)消極的安楽死:苦しむのを長引かせないため、延命治療を中止して死期を
  早めること
(2)間接的安楽死:苦痛を除去・緩和するための措置をとるが、それが同時に
  死を早めること
(3)積極的安楽死:苦痛から免れさせるため、意図的積極的に死を招く措置を
  とること

【末期患者の治療中止が許容される3つの要件】
(1)患者が不治の病を患い、回復の見込みもなく、死が避けられない状況を
  迎えていること
(2)治療を中止する時点で、それを望む患者の意思表示があること
(3)中止の対象は、疾病治療、対症療法、生命維持などすべての措置が含ま
  れるが、どれをいつ中止するかの決定は自然死を迎えさせる目的のもとに
  中止されなければならないこと

【積極的安楽死が許容される4つの要件】
(1)患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること
(2)患者の死が避けられず死期が迫っていること
(3)患者の肉体的苦痛を除去、緩和するために方法を尽くし他に代替手段が
  ないこと
(4)患者本人が安楽死を望む意思を明らかにしていること

 今回の嘱託殺人事件は、上記判例に沿って司法判断が下されると思います。
 ただしALS患者の場合、必ずしも肉体的苦痛が伴うわけではなく、精神的に苦痛だろうと推察できるだけです。
 この点で、肉体的苦痛が容易に診断できる末期のがん患者とは異なります。ただ単に、肉体的苦痛を精神的苦痛に読み替えるのか、新たに基準を設けて “耐えがたい” 精神的苦痛を認定するのか、新しい司法判断が待たれます。




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