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Jはジャンク経済学のJ by マイケル・ハドソン

2019-06-20 23:30:00 | 太平洋情勢乱雑怪奇

イラン、北朝鮮の問題は軍事が絡むから何かと気ぜわしいことになるけど、全体状況からした場合、現在「1%」とでもいうべき寡頭集団が立ち向かってる問題はどうしたらこのシステムを維持できるか、絶対してやる、というそういう話だと思う。

だから、そこから考えると目先の派手な立ち回りは、単なる脅しあいの一局面かもしれない、という視点も重要かなとも思う。

で、西側国民はそれにつられて、どうあれ、嘘、嘘、嘘の嘘だらけの発表を頭っから信じるようにさせられ、西側国民のプライドの唯一の源泉だった、我々は経済的に繁栄しているのだという話もなんだか怪しいことになってる。少なくとも多くの人は安心してない。

他方、そもそも、現在経済という語で語られていることは経済なの、それ?という疑念は結構いろんな人がいってるが、それを本格的に語り合う土台は構成できない。

なぜなら、メインストリームに存在するメディアとアカデミズムが結託して、この騙しの構造を支えているから。現代の神学部と司祭階級みたいなもの。

 

そんな中、その階級から放逐されることを良しとしていたエコノミスト、そりゃやっぱりマイケル・ハドソンは面白いわね、とならざるを得ない。

ポール・クレーグ・ロバーツなんかが、最も重要なエコノミストと呼び続けているおじいさん。

この人が2年前に出した本のタイトルが、まさしく今だなぁって感じがしている今日この頃。

Jはジャンク経済学のJ:詐欺の時代にリアリティに至るためのガイドブック

とでもいったものでしょうか。

J Is for Junk Economics: A Guide to Reality in an Age of Deception
Michael Hudson
Islet

 

この本の面白さは、この人がずーーーーっと語ってる借金/債権の歴史的な問題もさることながら、世の中の経済学というのは用語を使いまわして人を騙しているということを、A~Zで解説しているところ。そんな意味だと誰も思ってない、ということもあれば、時代によって文脈によって巧妙に使い分けたまま嘘でもまかり通してしまうというものもある。

‘J is for Junk Economics’: Michael Hudson on TRNN (4/5)

 

ネット上にたくさんの動画があるのでもわかる通り、80代となっても精力的に話す、話す。しかし私はこのおじいさんは80代というより、100歳ぐらいの感じがする。

どうしてかというと、1930年代あたりにアメリカで起こったことを活写してエピソードに盛り込む知的力量があるからでもあり、実体験的に親やその周辺の人たちもまた政治経済に非常に興味関心、体験のある人たちだったらしいので、なにかとっても、リアルにものを見てきて、それをしっかりと説明できているから、だと思う。

 

1930年代のアメリカは、現在からは信じられないほど、いわゆる赤い人がたくさんいた。特に、マルキシズムの中でも、とりわけトロキスト集団がこれでもかといたらしい。それはつまりロシアから追い出されたご本尊のせいでもあるわけだけど、そういう対外的な問題ではなくて、純粋にアメリカ国内の経済政策的に、こうでないやり方があるはずだという焦点があった。

いうまでもなく大恐慌があったわけだから、巨大資本家群を庶民が信じたり、好感するいわれはなく、このままではダメだ、新しい考えを、といったムードがあるのは不思議でなかった。反・巨大資本家の動き、特に労働組合の大規模スト、あるいはスト変じて暴動みたいなものもかなりあった。

そこらへんは、左派が言ってるだけではなく、むしろシティ御用達の歴史家のファーガソンも、アメリカ歴史学会の重鎮たちもみんな認めてる話。

前にも書いたけど、2008年9月にいわゆるリーマンショックが起こったその時、まさに直後から年末にかけて、ファーガソンの本とそれを元にしたテレビドラマとその動画がじゃんじゃん流れていた。

The Ascent of Money: A Financial History of the World [並行輸入品]
 
Penguin Books


どう考えても、来るな、と思って作ってあったというシリーズだったと思う。

で、これはつまり、一般人に対するある種の緩衝材だったんだろうと思う。かなり正直なことも書いてあるし、ロスチャイルドも出てくるし、ご本人のインタビューも入ってた。また、国債こそ英米覇権のキーだったことも(理解できる人は)理解できるように書かれていた。

だからこそ、The Ascent of Money、マネーの勃興だったわけですね。つまり、金を刷る奴らがのし上がったという含みであり、交易の沈没かもしれない含みがあったなと、今なら思う。

別の言い方をするのなら、交易を主体とした経済が今でも経済の本流みたいな顔をして様々なものが書かれているけど、もうずっと前からそんなんじゃないからとゲロッたみたいな話ではあった。

しかし、だからといって、ではこれらの寡頭勢力がおとなしくなるかというとそれは違っていて、緩衝材としてこういう本を出してみたり、偽の救世主オバマを出してみたりとか、いろんなことをしつつ、どうやって復活するのかを狙ってましたし、今もいるという話だと思う。

肝の肝は、絶対このシステムを守って俺らはいつまでも千代に八千代に影の大立者でいてやるぜ、といった話でしょうね。あはははは。

 

金融危機への対処方法として、前回は、大戦争作って、全世界の生産キャパの65%がアメリカにあるという状態を作ることによって、このシステムのステークホルダーは圧倒的な優位性を持つことに成功した。

今回は、大戦争しようとするとアメリカ大陸も吹っ飛ぶんだぜ、という状況なので、できなかった。そこで、QEが来たってところでしょう。

言うまでもこれは実体経済の回復を意図していない。数字上、1秒間に何十回だか何百回だかのトレードを繰り返して収益をこさえるというだけの話。

その前に一時的に中国に金をこさえさせてバブル化させて、しかるべき時が来たら潰してやれと思ってたんだろうが、成功してない。中国はバブルを潰すというより、こなしながら、その間に自己の市場を拡大し、さらにはユーラシア内部への投資にも振り向けた。エリティンのような木偶の棒を送り込んで内側から鍵を開けさせようと必死なんだが、中国は負けてなかった。そして、エリティンを送り込まれた当のロシアがずっと傍についているというのも思えば皮肉な話。

(ロシアの方は外資が送り込んでくるヤバい資金こそ問題なんだと知っているから、制裁はむしろ効果的に使えば武器になったとも言えるでしょう。結果的に、国内産業が活性化して、貿易黒字、経常収支黒字、財政黒字の三冠達成。ドルは売り払って金(ゴールド)を貯め込んでる)。

さてしかし、それでもQEの結果は残る。西側各国はこれをどうするわけ?各国で適当な言い訳作って国民を騙くらかしてるけど、要するにシステムへのお布施でしょ?

お布施を無からひねり出しているのに、どうしてそれを国家が債務にしないとならないんだよ、という話になって、そうなら借金なんか返す必要ないだろう、という話にもなる。

しかし、それならここまでのストーリーは一体なんだったの?

ジャンクエコノミーをメインストリームだと言い張ってたそれはどうなるの?

そして、現在のような知的枠組みでは、国家が借金してインフラ作って収益は全体で共有するという恰好が作れないから、大量に札を刷っても、それはウォールストリートなどの金融資本家に行って、そこが収益のネタにするわけだから、国家債務など返さなくてもいいという話も金融資本家の儲け話の変容にしかならない。

 

とかとかいろいろ考えると、現在置かれている状況は、実のところパラダイム問題だと思うわけですよ。ものの考え方の通説を変えないと多分多くの人にとっての安定路線にはならないだろう、って話。通貨を刷って、刷った通貨を取引して膨らませてもそれは経済じゃないだろう、って話。

しかし、ここに既に行き詰まりがあって、100年ぐらい前の人はそれで納得する部分があったんだが、現在の人たちは、自分が儲かるか否か以外に本質的に興味がない。

これももちろん、個人をプチな資本家というか、プチの資産持ちにすることで目先の利益で吊り上げようとした作戦があたったともまぁいえる。

ここらへんは、そういえば、まったく左派ではない西邊邁さんのお友だち、伊藤貫さんも同じようなことを言っていた。キャピタルゲインとかいったって、普通の人が会えるお金持ちってせいぜい年間数十万もいけばいい方のキャピタルゲインでしょ?そんなのキャピタルゲインのうちに入らない、と。にもかかわらず、「その気」にさせてこのシステムを繋ぎとめるための漆喰の一部にしていった、といったところ。

いや、私にしても別に何か大きな構造変化を望んでいる方ではないのだが、しかし、QEの不始末はどうつけるわけ?という問題は残る。

今更だけど、何も付加価値を生み出してない金融でいくら大きくしたってそのGDPは空洞でしょうが、といっていた人たちの声を無視してきたことも大きいし、こんな簡単なことが一般に理解されていないという劣化状況も困った話。

 

ということで何のまとめもないけど、一朝一夕に解決しそうな状況でないことは確か。いやしかし、ほんと、ジャンクな話、知的にジャンクな100年だったなとしみじみ思う。

 


 


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