京都市交響楽団・第632回定期演奏会

連続投稿になります。先週末は読響・日フィル・京響と三日間連続でオーケストラを聴きましたが、最後は態々京都まで遠征してのマーラー1曲プロ。内容はこんな具合でした。

マーラー/交響曲第7番ホ短調「夜の歌」
 指揮/広上淳一
 コンサートマスター/泉原隆志

この定期、当初は三日連続は厳しいと考えてパスする積りでしたが、広上のマーラー7番は珍しく(氏にとっては二度目だそうですが、前回のアマチュア・オケとの演奏、実は私は聴いていたのです!!)、この機会を逃せば一生の悔いになろうかと考え直し、ギリギリで決めた京都行でもありました。正に、「そうだ、京都に行こう」という心境。
京都に行くとなれば、中々一日では済まないのが我が家の行動パターンで、今回は演奏会の後一泊、翌日曜日は家内に付き合って撮影旅行兼観光といういつものスタイル。そちらの結果は家内のブログやアルバムを見てくださいな。梅の末期、桜開花前の京都がどんなであったか、興味ある方はご覧ください。それにしても京都、寒かったですよ。日曜の午前中はほぼ雨で、傘とカメラの二刀流には結構苦労しました。思わぬアクシデントも。

余計なことはさて置き、京響はシーズン最後の3月定期。このところ3月は常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上氏が振るのが恒例のようです。いつものように指揮者によるプレトーク、今回はもちろんマーラー「先生」についてのトークで、前半は第7交響曲が比較的演奏されないことを紹介し、そこにはマーラー自身が付けたのではない「夜の歌」というタイトル故に暗い音楽ではないかと印象操作されたことなどを、テノールホルン奏者(ごめんなさい、お名前を失念しました)を交えて紹介。後半は今回使用される版が、京響の常任首席客演指揮者の一人でもある高関健「先生」の補筆版であることを強調されていました。
プログラム誌でも高関・広上両氏の「第632回定期演奏会に寄せて」というエッセイが載せられ、単にマーラー第7が久し振りに演奏される(前回は若杉弘指揮の京都会館での定期だったそうな)だけではなく、特別なスコアとパート譜が用いられるのが聴き所、というコンサートでしょう。

その版について概略すると、第7交響曲の「新全集版」は2010年に出版されましたが、これはあくまでも作曲家が最後に残した状態を再現することが目的。実際の演奏現場ではマーラー自身の書き込みや訂正が不十分と考えられる個所が少なからず存在する由。その疑問点に関し、高関氏は自身の解決法の提案も含めて編集者のラインホルト・クビーク博士とメールでやり取りし、博士からも適切な指導を頂いたとのこと。
そこで高関氏は敢えて新全集版に補足を書き込んだスコアとパート譜を作成し、今回演奏される高関補筆版を完成。2018年11月に藝大フィルハーモニアで高関指揮によって初公開された版が、今回は広上氏の要望で京都で再演される運びになったのです。この補筆版は今年5月、高関氏によって群馬交響楽団の定期でも取り上げられるそうですから、関東圏のファンは是非高崎にお出かけください。

ということで京響コンビが実現させたマーラーの新版。もしや客席に高関氏がおられるのではと探したところ、何と京響のもう一人の常任首席客演指揮者である下野竜也氏の姿を発見。京響を率いるトロイカが結集した定期、他にも京都以外から来られた顔見知りも多く、これだけは聴き逃せない、と考えたオーケストラ・ファンが多かったことが証明されるでしょう。
ということで高関版にも大注目のマーラーでしたが、正直なところ、私には何処に高関氏の補足が加えられているのかまでは聴きとれませんでした。それ以上に、マーラーの第7交響曲が流石は「マーラーは大天才だった」という広上氏の実感が伝わる素晴らしい演奏だったことを報告しておきましょう。

ピカソの眼を通して描いたような二つの夜曲、サングラスを掛けて見たようなウインナ・ワルツの第3楽章。そして唐突のようにも思われていた明るいフィナーレが、決して先立つ4つの楽章とは無縁でないことを体験させてくれた第5楽章。
マエストロ曰く、今や西欧諸国のオーケストラの水準に並び、時には凌駕した日本のオーケストラの実力を見せつけた定期と言えるでしょう。

感想は短くなりましたが、態々京都まで出掛けて聴くに値する、コントパフォーマンス充分の定期でした。オケ・メンバーの一人一人を丁寧に労った広上氏、最後はマイクを手に登場し、オーケストラの二人の卒業を紹介します。
一人は、同オケの名物チューバ奏者の武貞茂夫氏。マエストロとは同じテッチャン仲間だそうで、僕もいずれ引退するから、それまで先に鉄道三昧していてネ、というエール。
そしてもう一人は、福楽団長としてオケを支えてきた平竹耕三氏。他のオケでは事務方の退任にまで舞台上での紹介まではしないと思われますが、そこは快進撃を続けるオーケストラと、広上氏の人柄でしょうか。二人には花束と、客席からの熱い拍手が贈られました。これに応えて卒業二氏への感謝の1曲。エルガーのエニグマ変奏曲からニムロッド楽章が暖かく奏されます。この定期には珍しいアンコール、私共は先週の名古屋でもジックリと味合わせて頂きましたっけ。

快い疲労感に大満足の京都。翌日は初体験となる京都の南部、城南宮で休日の午後を楽しみ、夕方の新幹線で帰京。明けて今日、パソコンに向かっているところです。今日はこれから鶴見でクァルテットじゃ。

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