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『幻想の超大国』 - 6 ( 真珠湾攻撃前の日本 )

2020-01-21 08:34:03 | 徒然の記

 真珠湾攻撃前の日本について、氏がどのように捉えていたのか、興味深い叙述があります。一人のアメリカ人記者の意見に過ぎませんが、現在の反日左翼の人々の意見とそのまま重なります。

 「日本は封建的で前近代的な社会構造と、若い狂信的な軍人たちとの途方もない野望の間で、引き裂かれていた。政局は混乱しており、文官たちに力はなく、政治機構は崩壊寸前だった。」

 おそらく氏は、満州事変 (  昭和6年 )や、5・15事件 (  昭和7年 )当時の日本を語っているのだと思います。

 「大東亜共栄圏のビジョンと、武士道精神の勝利を信じる軍の若手将校たちは、軍部の方針に賛成しない政治指導者たちを、片っ端から暗殺したが、彼らはテロリストとしてでなく、真の大和魂を体現した英雄として扱われた。」「当時の日本は、西欧から民主主義の形だけは借りていたものの、民主主義の本質は無視され、背後へと押しやられていた。」

 ここに書かれている日本は、一面の事実です。氏の意見は、戦後の日本で出版された反日左翼の書からの知識だと思います。当時の日本で盛んに本を書いていたのは、反日左翼の学者たちです。保守系の学者の著作は、GHQが焼却処分していましたから、日本の歴史とご先祖を否定し、GHQに迎合する変節学者の本しかありませんでした。

 欧米列強の侵略から国を守るため、大東亜戦争が始まったことを当然氏は知りません。政局が混乱しても、天皇陛下がおられる限り日本の政治機構が崩壊しないことも、反日の学者たちの書では説明されません。

 まして昭和天皇が2・26事件に際し、自ら兵を率い、反徒の征伐をすると言われたことなど、知るはずもありません。反日左翼の学者たちは、戦後の若者たちを惑わせただけでなく、国際社会にも間違った発信をしたのですから、「獅子身中の虫」でした。

 「真珠湾攻撃」という一度の事件で、アメリカの指導者たちは、際限のない軍拡競争に陥ったと氏が説明しています。当時の世界では、西欧の列強が武力にものを言わせ、アジアを侵略し植民地にしていました。小国である日本が国を挙げ、祖国防衛に突き進んで何がおかしいのでしょう。二つの海に守られたアメリカと違い、日本の危機は目の前にあったのです。

 こういう歴史を知らないから、氏は「若い狂信的な軍人たち」、「途方もない野望」などと言葉を乱用します。反日左翼の学者から知識を得れば、こような意見となるのは当然です。

 「軍部は、ヨーロッパ諸国がアジアを切り分けて、植民地化したのに習い、新たな帝国を建設しようと目論んだ。」「帝国を建設する目的の一つは、かって西欧諸国がしたように、弱小国を征服することで、日本の力を認めさせることであった。」

 ここでも氏は、間違いをしています。日清・日露の戦争で、日本が戦った国は果たして弱小国であったのか。それらの戦争は、「日本の力を認めさせる」というより、国運を賭けた戦争だったのです。反日左翼の学者たちのせいで、日本の若者たちが、国の歴史を否定するようになったことを思えば、氏の間違いを責められません。日本人ですら間違う、ましてアメリカ人においておや、です。

 「不幸なことに青年将校たちは、世界の情勢に全く無知だった。彼らの目はいつも内側を向いており、大和魂の神話を盲信し、日本人の優越性を信じて疑わなかった。」

 次の叙述を読んだとき絶句し、次の瞬間に笑いました。

 「日本と先進国との間の緊張が高まると、軍人たちは、自分たちの主張を強化するのに国際情勢を利用した。日本の帝国主義的野望に対し、先進諸国が警告を発するたびに、それは諸外国が日本を軽視している証拠だと言い、日本の実力を見せてやらねばならないと、声高な主張がなされた。」

 世界情勢に全く無知な軍人が、どうして国際情勢を利用できるのでしょう。無知でないから、そういうことができると考えなかったのでしょうか。無意識なのでしょうが、氏は自分たちのことを「先進諸国」と呼んでいます。尊大な白人の衣が、少し顔を覗かせています。

 もっとおかしな点は、戦前の日本に関する氏の無知です。「日本の実力を見せてやらねばならない」と声高に叫んでいたのは、誰だったのか。戦争を賛美し戦意を高揚させていたのは、ニューヨーク・タイムズが提携している朝日新聞だったことを、知らないのでしょうか。無知であることは幸いなりです。知っていればこのような恥ずかしい意見を、著作で述べる勇気は出なかったはずです。

 書評は現在50ページです。読んでいるとうんざりしますが、息子たちには参考になる意見です。少し割愛できないかと、次回は工夫してみます。

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