女装子愛好クラブ

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私には、そうやって自分でメイクをして、自由に外出をしていく女装さんたちがとても羨ま しく思えた。

2019年01月22日 | ★女装の本・雑誌
『総務部長はトランスジェンダー』から引用です。
岡部鈴さんは渋谷で初女装して、なんと新宿まで電車で移動するという大胆な行動にでました。
そして、女装のことばかり考えるようになったのです。


 BEATUPIの女装体験から、私はいつも女装することばかり考えるようになっていた。

どうしたら綺麗になれるのか、そのためにメイクはどうするのか。他人にやってもらうのでは
なく、せめて自分で出来るようになりたい。

 四月も終わりに近づいた日曜日、私は以前メイクをしてもらった渋谷の女装サロンSに再度
向かった。今度は、お金を払ってメイクをしてもらうのではなく、自分で出来るように一から
メイクを教えてもらおうと思った。

 必要な化粧品をネットで調べ、百円ショップで購入、ユーチューブで化粧方法の動画を参考
にしながら、ある程度の予習はしておいた。

 昼過ぎにサロンの扉を開けると、以前メイクをしてくれたMさんが優しく迎え入れてくれた。
 「あら、いらっしゃい」
 「あの時は、大変お世話になりました。お陰でとても楽しい一夜になりました」
 そう私が答えると、
 「初めて化粧して、電車に乗って外出するなんて、凄い度胸だって情感心していたわよ」
 とMさんは笑った。

 確かにそうかも知れない。普通はもっと控えめに、慎重にステップを重ねて行動していくも
のなのだろう。今思うと、あの日の無鉄砲なパワーは一体何だったのだろう。
 「他の会員さん達は、今日は?」
 と私が開くと、
 「今日は天気も良いから、皆お出かけしているのよ。夕方頃には皆帰ってきて、ここで色々と
お話ししたりするの」
 Mさんは、穏やかな口調でそう答えた。

 私には、そうやって自分でメイクをして、自由に外出をしていく女装さんたちがとても羨ま
しく思えた。
 「今日は、ここで少しメイクを勉強しようと思って来たんです。色々と教えてもらえますか?」
 と私が開くと、
 「化粧台も鏡も化粧品も自由に使って良いからね。とりあえず自分でやってみて、わからなか
ったら何でも開いてね」
 と、Mさんは答えた。


渋谷の女装サロンSは、道玄坂にあったあのお店かな?と想像しています。

総務部長はトランスジェンダー 父として、女として
岡部 鈴
文藝春秋
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