フィレンツェの無料で見られる「最後の晩餐」~アンドレア・デル・サルト作、サン・サルヴィ編

フィレンツェはまさに芸術の宝庫、世界的に有名なウフィッツィ美術館、ドゥオモなど、有名どころだけでも数多くありますが、ガイドにも載っていないような小さなものまで含めると、数えきれない施設で美術鑑賞ができます。そんなミュージアムや教会、しかも無料で見学ができるところをサイトでも記事としてまとめましたが(ミュージアム編教会&ヴィッラ編)、私自身も行ったことない場所が多かったので、時間があるたびにちょこちょこと訪問しています。まずは、「1人最後の晩餐ツアー」(笑)、1つ目は、旧市街外にある「サン・サルヴィの最後の晩餐」から。マンマの家や友人でもあるハイヤー運転手・ジョヴァンニの家からも近かったりするので、私には身近な場所だったのですが、中に入ったのは初めてでした。

サン・サルヴィ教会のある広場から1本入った、サン・サルヴィ通りに、このようにぽっつりとある質素な建物。フィレンツェ郊外にあるヴァッロンブローザ修道院下のサン・サルヴィ修道院の建物の1つにあります。公開されているのは1階部分で、メインである「最後の晩餐」がある食堂をはじめ、入ってすぐの廊下、台所、手洗い所などにも1500年代フィレンツェの芸出作品が残っており、小さな美術館となっています。その開館はなんと1845年にさかのぼり、旧市街外にありながら、1529年フィレンツェ包囲の際に被害を受けずに残った貴重な名画が隠されています。

そしてこちらが、アンドレア・デル・サルト作の「最後の晩餐」。修道院から依頼を受けたのは1511年ですが、最初にアーチ部分の4人の聖人+三位一体を仕上げた後はフィレンツェを離れ、最後の晩餐が描かれたのは1527年になってから。1300年代~1500年代に多く描かれたこの題材の作品では、その頂点の1つと言われる作品で、スカルツォの回廊にある「洗礼者ヨハネの生涯」とともに、アンドレア・デル・サルトの傑作の1つとされています。

ルネサンスの絵画も円熟を迎え、アンドレア・デル・サルト自身も成熟した時期の作品とあり、遠近法や人物、そしてヒダなどの描写は実際にその場にいるようなリアル感を持って表現されています。全体的な雰囲気はとても柔らかく、劇的なインパクトはなくともすっと心に入ってくるような、いつまでも眺めていたくなるような落ち着いた絵。真ん前にイスが並べられているので、じっくり鑑賞してしまいます。面白いのが、アーチ上部にあるテラスで、そのシーンを見てしまった?2人の男性が描かれていること。一説にはどちらかがアンドレア・デル・サルトの自画像だといわれていますが、その真相は定かではありません。

「最後の晩餐」向かって左側には、アンドレア・デル・サルトの弟子でもあるポントルモの作品もあります。当時はあまり評価されなかったそうですが、1900年代にマニエリスムの一翼を担ったということで注目され、現在はウフィッツィ美術館などにも常設コーナーがあり、数年前にはストロッツィ宮殿でも同年代の画家とともに特別展が開かれたほど。そんな画家の作品が、ひょこっとこんな小さな無料美術館にあるとは、本当にびっくりです。

「最後の晩餐」がある食堂の手前にあるのは、手洗い場。修道僧たちが食事の前に手を洗う場所ですが、ただ衛生的に手を洗うだけでなく、浄化するという意図も大きいそうです。石の手洗い場は装飾が施され、その上には「井戸のサマリア人」が飾られており、ただの手洗い以上の意味合いもあったのだな、と想像できます。

手洗い場を挟んで食堂の反対側に行くと、大きな暖炉のある台所だった部屋があります。こちらも1500年代の作品なのですが、気になったのが半円形の3つの作品。これらは修道女でもあり、フィレンツェで最初の女流画家とされるピラウティッラ修道女の作品。別の教会にあったものが、2009年からこのサンサルヴィ美術館に展示されていますが、彼女の描いた現存する作品は7枚の板絵と1枚のキャンバス画のみという貴重なものですので、こちらもぜひお見逃しなく。

一方、廊下の一番奥にあるのは「彫刻の間」。16世紀の彫刻家、ベネディクト・ダ・ロヴェッツァーノによる墓碑なのですが、こちらは1529年のフィレンツェ包囲の際に大きな被害を受け、現在は残った作品が整理され、この部屋に展示されています。

旧市街外にある美術館なので、イタリア旅行1回目、特にフィレンツェ滞在が短い方にはやや生きにくいかもしれません。それでも観光客はほとんどいない住宅街で、旧市街の喧騒から出て味わう芸術は、その時代にタイムスリップしたかのような特別な体験が味わえますよ。

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

Cenacolo di San Salvi
Via di S. Salvi, 16, 50135 Firenze FI
Tel : +39-055-0649489

火~日の 8:15–13:50
毎週月曜、12月25日、1月1日は休館
入場無料(入口で来館名簿にサインしてください)

【行き方】
フィレンツェSMN駅前より6番のバス、またはサンマルコ広場から6、20番のバスで、Lungo L’Affrico下車。帰りはその向かいのDe Amics Torretta より、同じく6番か20番で旧市街へ戻りましょう。そのほかの無料で見られる最後の晩餐を見学するには、サンマルコ広場で下車し、、「フォリーニョの最後の晩餐」、とめぐるのも良いですよ。日にちによってはサンアッポローニアの最後の晩餐の前に、同じく無料の「スカルツォの回廊」を見学して4か所制覇も!バスの乗り方などについては、こちらを参照ください

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