渡瀬裕哉『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』 | (元)無気力東大院生の不労生活

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勤労意欲がなく、東京大学の大学院に逃げ込んだ無気力な人間の記録。
学費を捻出するために、不労所得を確保することに奮闘中。
でした。

 渡瀬裕哉『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』を読了。

 

 研究業績が欲しい研究者がアイデンティティの差を「発見」する。人の目を引きたいマスメディアがその「発見」を取り上げて「増幅」させる。その「増幅」を選挙活動に結びつけて得票につなげようとする政治家。それぞれは合理的な活動かもしれないが、結果としてアイデンティティによる分断が作り出され固定化される。
 特にアメリカから世界に向かって拡散されるアイデンティティの分断を鮮やかに描き出して見せた好著。
 後半はFacebookの「リブラ」や中国の「デジタル人民元」といった仮想通貨に話題は転じていくが、これが新たなアイデンティティの分断あるいは統合をもたらすものとして位置付けられている。
 現在起きていることから今後起きそうなことまで、類書にはない独自の視点から読み解く景気を与えてくれる。