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自室に他者が侵入をしていると言う事実を、前回の記事にて「完璧に」忘れたと記させて頂きましたが、、

当然そんなことは有り得ず、どこか頭の片隅にあったことは確かなことです。


もし完璧に忘れていたならば、この時おそらく私は殺されていたことでしょう。





午前零時半過ぎ頃のことだったと思います。

それより先は無人の空き地・ゴルフ場、そして山。手前は公園そして閑静な住宅街。

この時間帯になると、そこは人っ子一人いなくなるのでした。



いつもの様に運動をしようと(子供用)野球場に立っていた私は、自分の右側面から男がこちらに歩んで来たことに気付きました。

こんな時間帯にわざわざ無人の山方向からやって来るのはおかしい、と横睨みしつつ男に注視を続けました。

自室潜入の件がなかったならば、きっと気にも留めなかったに違いありません。




突然男は右腕を素早く振り上げると、、「即座に」(振り被りもせずに)肘から先のみを使い野球ボールを投げて来ました。

互いの距離は十mを切っていました。


殆ど無意識的に球を避けるしか余裕がなく、頭をのけぞると顔面すれすれを飛んで行くボールが音を立てていることに驚きました。


「どうか軟球であってくれ。」、、そう祈りつつ球を目で追うと、それは鈍い音を暗い地面に立てつつ消えて行きました。



背中に冷たいものが走る中、私の前を男は通って行こうとしていました。

歩調はゆっくりとして居り、背筋を伸ばし、こちらには見向きもしません。

全く落ち着き払い、悠然たるものがありました。



背はやや低く頭には野球帽。工員風の軽めのジャンパーを上着に羽織り、ズボンは若干運動用風のものを履いていました。




    「繰り返し自室に入って来る謎の組織。今の殺人者。
   
     ── 一体何が自分に起ころうとしているのだろうか?」


暗い公園を抜け住宅街の方に行こうとするその後ろ姿を見ながら、私は考え続けていました。




今にして思えば、、これは彼らからの警告、強い警告だったのでした。