梅干しは青谷の黒焼きに限る・その梅は梅の黒焼きに加工されて百薬の長黒梅「青谷の薬梅」となった。紀州の南高梅・伏見稲荷大社の物語 43話

 

★…街中のオブジェ 梅小路公園

 梅小路公園には鉄製のオブジェが20~数個あるが、その中で一番人気はこの「カメ」さん。もう亀の頭は老若男女に触られて地金が見えています。その触る動機は人それぞれだと思うが、ワタシはかつての元気にあやかりたいと…ホホホ…なんてことを朝から言えるワタシはまだまだ若い~ホホホ

★…画像は、亀さん、蒸気機関車、イルカ、これ以外にも約20体あるが、広い公園だからすべて探すのは難しい。4枚目は梅苑、2月10日の撮影だが、もう5分咲きで見ごたえがあります。

 

 

 

 

街中のオブジェシリーズ…③白衣の天使(うさぎ)に看護されて無事家に帰る(カエル)。②本を読む兄妹①石の急須。

 

梅干しは青谷の黒焼きに限る・その梅は梅の黒焼きに加工されて百薬の長黒梅「青谷の薬梅」となった。紀州の南高梅 43話

 京の都に集まる年貢は米だけではなく米の価格に換算したすべての農産品と絹糸、絹織物、塩、砂糖、塩干物、工業製品、獣の皮にまで及んでいた。これとは別に全国の名産品を朝廷に献上するということもあった。これは天皇や高級貴族が食して「これは美味である!」という言質を取ることによってその商品が天皇、もしくは皇室に認められたいという証拠になってこれを宣伝したものです。

 したがって朝廷には全国からの献上品が届くが、ただ届けたというだけで「皇室献上の品」というインチキ商売も出てきた。これら全国から届けられた商品は従五位以上しか入れない大内裏の献上の間に集められて貴族が思い思いの品物を屋敷に持ち帰っていた。当然ながら人気のある商品は取り合いになるが人気のない商品は破棄処分になっている。

 天皇の口に入るのはほんの一部で調理部が厳重にチェックした上に毒見の検査まで行われている。このところの天皇は医師の診断では過労だが、食欲もなく顔色もさえなかった。その天皇がなんか旨いおかゆと紀州の梅干しが食べたいという。医師の玄庵は調理部に朝廷の食料倉庫にある梅干しをと命令したが、その食料倉庫には梅干しはもうなかった。そこで玄庵は稲荷神社のお供え物の中にあると信じて馬を走らせていた。

 稲荷神社二代目宮司の生成(いなり)は医師の玄庵が馬に乗って来たことで天皇の容態を察していた。そして玄庵に、
「天皇は…具合がそなんに悪いのか?」
「はい、もうここ一週間は何も食べたくないとおっしゃっています」
「そか、それなら神社にある梅干しだが、あることはあるがこれは紀州の梅干しではなく奈良に近い青谷の百姓が作った梅干しになる」

 といって生成が出してきた梅干しは貧弱な小ぶりの梅干しで紀州の梅干し半分ぐらいしかなかった。そこで玄庵はこれを細かく刻んでおかゆに入れれば天皇も気がつかないかもということで生成も玄庵と同じように馬を飛ばして神泉苑離宮に向かった。

 玄庵は弟子らにこの梅干しを炭でこんがり真っ黒になるまで焼かしている。その梅干しの黒焼きの実の部分だけをすり鉢で粉にしているが、これは食べ物というより漢方薬の黒い炭の粉末状でとても食欲をそそるものではなかった。弟子がこの梅干しの黒焼きを作っているまに玄庵は天皇にこの梅干しの効能をレクチャーしていた。

 「天皇、これからお出しする梅干しは残念ながら紀州の梅干しではありません。しかし、この梅干しには天皇の病気でもある胃のただれ、または腫瘍、これが悪化しますと胃ガンになりますが、この原因の多くは胃の中にいるピロリ菌だといわれています。そのピロリ菌と戦い殺してしまうという強い殺菌効果がこの梅干しにはあります。さらに天皇の持病でもある高血圧、糖尿病、脂質異常、動脈硬化、うつ病にもよく効きます。さらに抗菌、解熱、疲労回復、生活習慣病、そして加齢による耳、眼の病気にも効果があります」
「ほか、しかし…玄庵、それでは世の中にある病気のすべてに効くというのか?」
「はい、天皇は世の中のすべての病気をお持ちですから、この梅干しの黒焼きだけですべての病気が退治できます」
「ほか、予の身体は病気のデパートか?しかし、玄庵がそんな万能薬を発明したとなるとお主はノーベル賞ものだな」

 そうこうしている間に「梅干しの黒焼きおかゆ」ができてこれを天皇は食べている。
「ふむ、見かけは悪いがいい塩梅の塩加減だ!それに胃がなぜか軽くなった」
「天皇、体の奥深くから気力が沸いてはきませんか?」
「ふむ、気力というか、体中が熱くなってきた」
「はい、それは胃の中で梅干しの黒焼きとピロリ菌が戦っているからです」
「そか、それなら玄庵も生成もこれを食べよ!」

 こうして天皇、玄庵、生成の3人でこのおかゆを食べていたが、天皇は、
「久しぶりに生成とも会えた、ついでだから酒を飲もう」
生成は、
「いゃ~病気のデパートの天皇と酒を飲んでも…ね~」
「いや、予はもう玄庵の薬で全快じゃ~」
「それなら天皇、この梅で作った梅酒をお持ちしました」
「おう、それはいい、それとこの梅の梅干しはないのか?」

 こうして出された梅干しは小ぶりで貧弱であったが、それを酒のアテにして梅づくしの宴会が始まっていた。天皇は生成に、
「ところでこの梅はどこの梅なのか?」
「この梅は奈良の近くの城陽青谷村の梅林の梅ですが、紀州の梅より少し小ぶりの種類になっています」
「そか、紀州の梅は食べるものじゃ~この青谷の梅は百薬の長の梅として「薬梅」と命名する」

 このころの青谷の梅園といっても百姓の梅吉が荒れた土地では梅の木ぐらいしか育たないと梅を十数本植えただけだった。ところがこの天皇命名の「薬梅」の話が青谷の村に伝わると我先にと梅の栽培がおこなわれていた。その梅は梅の黒焼きに加工されて百薬の長黒梅「青谷の薬梅」として全国の薬問屋から注文が殺到していた。

 後日、生成は医師の玄庵に、
「あの梅の黒焼きの効能は本当なのか?」
「いや、そのすべてが本当ではないが、弱っている天皇の脳に活力を入れただけだ…」
「ほう、それは催眠術か」
「そういわれれば催眠術にもなるが、生成さん、医師というのは時には詐欺師にも魔術師、催眠術師にもならなければならない。患者から信頼されていればのことだが…」
「そか、私もあの時は玄庵さんの催眠術にかかっていたのか?」
「そら~集団催眠のほうがより効果はあるわいな~ハハハ」


★…画像は青谷の梅園

 

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