「と」と「および」の話〈3〉 辞書 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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mixi日記2018年09月09日から 

 下記の続き。 
【「と」と「および」の話〈1〉】 
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12402679255.html 
【「と」と「および」の話〈2〉】 
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12402923259.html 

 〈2〉を某所に投稿したけど、やはり伝わらなかったようだ。そうだろうな。自分でもあれでは伝わらないと思う。 
 ということで、気をとり直してネチネチと書く。 
 トにはたくさんの働きがあり、話題になっているトも3つの可能性(並列ト、比較ト、対象ト)がある……ってとこまではいい。もうすこし細かく見る。 

 大前提として、2つのことを考えていた。 
 前提1:「AトBトは~」という形で、後トを省略可能なのは、並列ト 
 前提2:「および」「ならびに」「、」に置換できるの並列ト 

 いろいろ考えると、どうも「前提1」は違う気がする。辞書にも明記されているけど、ヘンなものはヘン。 
  太郎ト次郎(ト)が話す 
 トが2回出てくる。説明の都合上、こういう場合は「前ト」「後ト」と呼ぶことにする。 
 前トは並列トだろう。後トも並列ト。後トが省略可能なのは前提どおり。 
  三郎が、太郎ト次郎ト話す 
 この場合、後トは対象トで、省略不可。前トは対象トとも考えられる気がする(「太郎トも次郎トも話す」という考え方)。でも、並列トと考えるのが素直だろう。「および」「ならびに」「、」に置換できるのは前提どおり。 
 ここまではヨシとしてほしい。ここから先がメンヨーな話になる。 

 と(引用のト)いうことで、チミチミと書いていく。ちょっと関係があるので、ついでにハに関しても見ている。(←オイ!) 
 個人的にいつもは「今」ではなく「いま」と書いているんだけど、今回は「昔」との対比で「今」と書く。 
1)昔ト違う 
 これは辞書にある例文で、比較ト。ここから始めて少しずつかえていく。 
2)昔トハ違う 
 これも比較トだろう。ハは「強調」にしておこうか。 
【これならわかる!? 助詞の「ハ」の使い方  教えてgoo】 
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12285486151.html 
2)’今ハ○○だけど、昔ハ違った 
 番外編。これは「対比」のハ。「対比」と「比較」がどう違うのかは知らない。同じようなものだと思うが、偉い先生がみんな使い分けてんだから違うんだろう。 
3)今ト昔トハ違う 
4)今ト昔ハ違う 
 3)は、後トは2)と同じなので比較ト。対象トって気もするが、辞書には逆らわない。前トに関してはちょっと保留する。 
 4)がわからない。比較トだと思うんだけど……。 
 3)と4)を見比べると、妙なことに気づく。 
 パッと見た感じは、3)は2つとも並立トで、後トを省略したのが4)に見えなくはない。 
 でも1)2)を見てほしい。「1)昔ト違う」が比較ト。「2)昔トハ違う」もおそらく比較ト。これが前に「今ト」がついただけで並立トになるのはおかしくないか? 3)の後トは比較トだろう。で、何と比較しているかと言うと、言うまでもなく「今」だろう。そうなると、前トも比較トでは。 
 もし3)前トが並列トだとすると、後トを省略して4)にした途端に、比較トにかわることになる。 
 たとえば、1キログラムは約2.2ポンド。「1キログラムと1ポンドとを比べると、1キログラムのほうが重い」なんて、どちらも比較トだろう。 
「今ト昔トヲ比べると~」の前トは比較で、「今ト昔トハ違う」の前トは並列トっておかしくない?  
 そう考えて、〈2〉では下記のように書いた。 
===========引用開始 
 話の順番として、下記の例文で考える。 
  1)AとB(と)は違う 
  2)AとB(と)は同じ 

 1)のトは「比較」だろう。 
 じゃあ2)はなんなのか。これがわからなかった。 
 2)は2つの解釈ができる。1)と同じように「比較」と考えるのが素直だろう。しかし、比較するものが同様であれば、〝結果的に〟「並列」と同じになるのでは。 
 2)のトは「並列」と同様だから、「および」「ならびに」のかえられるが、1)はかえにくい。 

「AとB(と)の間」も、これと同じように考えることができるのでは。 
  3)AとB(と)の間には大きな違いがある 
  4)AとB(と)の間には違いはない 
 4)なら「並列」と同様だから「および」「ならびに」のかえられる。3)だとかえにくい。 
===========引用終了 

 後ろに「違う」「同じ」など比べる要素が来るときには、前トも後トも比較トになる。 
 ただ、こう考えると〈前提1:「AトBトは~」という形で、後トを省略可能なのは、並列ト〉がくずれる。 
 比較の場合も〈比較する語ごとに「と」を用いるのが本来の用法であるが、現代語ではいちばんあとにくる「と」を省略するのが普通となっている〉のでは。 

「AとB(と)の間」も、これと同じように考えることができるのでは。 
  太郎ト次郎(ト)の間には大きな違いがある 
  太郎ト次郎(ト)の間には違いはない 
 どれもこれも比較ト。 
 ただし、後者の前トは〝結果的に〟並列と考えてもおかしくない。 
  空と君との間には…… 
 だと比較の要素がまったくないから、並列トだろう。この場合は「および」「ならびに」「、」に置換できる。

 

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