サーキットを走らせているボクスターGTSのタイヤ交換の間、2時間ほど自由に試乗したマカンの走りにすっかり魅了され、欲しくなってしまいました。

 

そもそも私はスピードが好きで、スタイルの綺麗なスポーツカーファンなんで、真反対の存在であるSUVには、良い感情を持ってなかった。

整備された路面で、軽快な運動性能を楽しむのがスポーツカー。

運動性能を上げる為、重心は低く、高速時の空気抵抗を抑える為、どこまでも車高は低く、よって室内は狭く、特に私の好きなミッドシップカーの場合、二人分のシートは付いていても、二人乗ったらバック一つ置く場所もないので、実質一人乗り。

高回転で性能を発揮するエンジンは官能的ではあるモノの轟音を立て、コーナリングの限界を上げる為にサスペンションは硬く、乗り心地は良いとは言えない。

 

対してSUVは、道なき道を行けるクルマ。

よって荒地でも乗り越えられるように車高は高く、エンジンは低速トルク型で、官能性とは無縁。

実用一点張りで、激悪な環境下では頼りになっても、高速で走る喜びはないだろう。

 

クルマを傾向順に並べてみると、スポーツカーを一方の極にすれば、SUVはまったく反対方向に位置して、間に2ボックスハッチバックとかセダンが入る。

そして２ボックスハッチにはホット・ハッチと呼ばれるスポーツバージョンがあり、セダンにもスポーツセダンがあるけど、SUVにはない・・・というかなかった。

悪路でスポーツって訳には行かないものね。

 

それが近年変わって来て、私も路上に溢れる多種多様なSUVを見せつけられるにつけ、これも良いなって思いだして、それでも駐車とか苦手だから小さいのねと思っていた処で、BMW１の車検でX2を一週間借りられた。

X2は候補の一つだったので借りている間、暇を見て2時間ほど続けてドライブしたら、なんとクルマ酔いをしてしまい、これでSUVはなくなったと思ったのですが、いざマカンに乗ったら、豪華なインテリアとか高品質な走行感覚が素晴らしく、何よりちょっとだけ曲がりくねった道を、多少スピードを出して走った時の精緻ともいえるハンドリンには心底驚いた、というか感動した。

こんな車高の高いクルマが、これほど見事に走るというのは、完全に私の想定を超えていた。

マカンの記事に、これはSUVの911だ、と書かれていたのは読んでいたけれど、また大げさな、と思っていたんだよね。

でもマカンの走りは完全にスポーツカーのそれだった。

しかも居住性は完璧。

室内は広々。

人を乗せてもミッドシップスポーツと違って喜ばれそうだし、荷物とか幾らでも乗せられそうだ。

エンジン音も控えめなんだけど、悪くない。

これはある種、夢のようなスポーツカーなんじゃないか。

その後自分のボクスターに乗った時は、スポーツシャシーの堅い乗り心地と、盛大なエグゾーストノートに、なんと野蛮な乗り物かと思ったからね。

 

BMWファンには申し訳ないんだけど、（私も都合4台乗っているので勘弁して欲しい）X２から自分の118iに乗り換えた時、確かに低く座るので、偉くなった感じはなくなるし、豪華なインテリアもないけど、運転感覚の品質感は変わらない気がした。

X２に比べれば、118i、色々コストも削られている上、設計も古いんだろうけど、車高の低さがカバーしていて、走りの質感は負けてないな、としか思えなかったんだ。

それが今回、自宅に帰って118iに乗り換えたら、

「あ、オレ、安物のクルマに乗っているんだな」感、ありありだったからね。

ステアリングの精緻さから、サスの動き、エンジンの感覚まで、質感が全然違う。

ああ、マカン、欲しいな、マカン欲しい。

新型出たけど、選択肢としては

１）BMの1、車検取ったばかりなので、時間が掛かっても新型マカンにする

２）旧型の今、まさに海を越えてくる最終型を値引きで買う

３）さっき試乗したマカンが試乗車の役目を終えたら購入

の3パターンがある訳だけど、まず２）は外れる

安い新車にはなっても、下取りで安くなるからね。

では１）か３）かだけどどうするか？

カーコンフィギュレーターやるか？

セールスになんて言おうか、なんて考えているウチに、毎日毎日、細々した用事で街中をチマチマ走る日常を暮らすうちに、マカンを買ったら、まず所有欲は満たされるだろうし、走りも良いだろうけど、信号待ちの長い場所での抜け道は狭いから、走れなくなるな、とか、右折車がいてスペースがない時は、待ってないとダメだな、とか、駐車場が狭かったり、混んでいる時はストレスだな、とか思い出し、しょせん今のBMWの代わりだと、混んだ市街地走行90％なんで、延々たる信号待ちから信号待ちの間、せいぜい40キロから50キロのスピードが瞬間的にでる短距離走行を繰り返すだけ。(残りの9.9％が少しスピードの出せる幹線国道で、高速は0.1％位)

今回、一番感動したワインディングでの走りってないよね、とか思いだして、用事を済ませて118iに戻る時、オレ、やっぱりこのスタイル好きだな、と思ってしまうのだ。

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マカン買っても、頻繁に遭遇する路地裏の狭い道での行き違いとかね。

混みあった駐車場での取り回しとかさ。

所有欲と走行感覚の素晴らしさを楽しめる反面、192ｃｍの全幅にウンザリさせられる事も増えるんだろうな、と思うと、やっぱりクルマって、趣味のモノであると同時に道具であって、適材適所はあるよね。

 

という訳で、マカン購入熱は冷めつつあります。

でも週末は別荘通いとか、ゴルフ場通いとかしている人にはホント、素晴らしいクルマなんでおススメしたい。

私は両方とも縁がないんでね。

ボクスターGTSもサーキット走って、サーキット行くまでの高速も走らせて感じるのは、タフで高品質で、音まで良くて、ともかく良いクルマだと思うのだ。

でも天下のスポーツカーメーカーのポルシェなんだから、それは当たり前の話。

 

ただスポーツカーメーカーだったポルシェがSUVで、これほどのクルマを造り出したってのには驚かざる得ない。

マカンは本当に素晴らしいクルマです。

車高が高く、乗り降りは楽ちんで、室内も広くて快適極まりなく、荷物だって充分積めるのに走りはスポーツカーの快楽が詰まっているんだよ。

マカンにはポルシェの底力を見た気分で、かなり驚きつつ、今回は見送りかなという結論に、それなら次もBMの1なのかと思うと4台目になる訳だし、複雑な気分でもあるのでした。