①寛骨臼回転骨切り術
変形性股関節症の治療本で、たいてい最初に載っている手術法で
一般的には「RAO(ラオ)」と呼ばれています。
RAOの対象病期は、変形の程度が比較的軽い
前股関節症期~初期の股関節症で良い結果が得られます。
病院によっては、進行期でも勧める場合がありますが
基本的には大腿骨骨頭の形が、きれいな球体を保っていることが重要です。
臼蓋部分の骨を丸くくり抜いて(①)、大転子を切り離し(②)
外側の方向にくり抜いた骨を引き出します(③)
引き出した時に、腸骨との間に隙間ができてしまう場合は
腸骨の上部から骨を切り(★)、引き出した骨の上部に
下図のように移植します。
全工程が終了となります。
臼蓋のくり抜き方はいろいろあって、以下のように恥骨部分まで
大きくくり抜く方法もあるようです。
RAOの最大の利点は、関節面に残った軟骨ごと回転させられることです。
そういう意味からも、初期であるほど結果が良くなります。
また、外側に引き出すために、産道への影響も少なく
出産を控える若い世代にも勧められる手術方法です。
反対にリスクとして
球状ではない骨頭なのにこの手術をして
適合性が良くなく、残っていた軟骨がすり減ってしまい
かえって股関節症が進行してしまう場合もあります。
中には不幸にして、移植した腸骨が壊死していまい、かえって悪い状態に
なってしまったという方も居られます。
高度な技術や豊富な経験を要するため、手術件数の多い病院や
医師をチョイスすることが肝心です。
②キアリ骨盤骨切り術
RAOと違って、全病期に対応できる手術法です。
Aのように内側へずらして、臼蓋部分の面積を大きくします(④)
この手術は初期~末期まで対応可能ですが
進行期~末期の方は、大腿骨外反骨切り術や
内反骨切り術を併用することが多いです。
屋根の部分の面積を広げて、大腿骨が屋根の下に収まるように
骨頭の傾きを変えるわけです。
図は、外反骨切り術を示しているので、大転子の下部を
くさび状に切除して(③)、骨頭の角度を変えています。
RAOと同様に、骨切り部分と大転子をピンやビスで留めて(B,C)
全工程が終了となります。
キアリの場合は、関節包と呼ばれる部分を挟み込む形にします。
この挟み込まれた関節包が、繊維軟骨というものに変わります。
通常の関節軟骨とは少し違うものですが
クッションの役割は果たすので、
痛みの軽減や進行を食い止められます。
リスクとしては、骨盤を内側にずらすために、両側を手術した場合
産道が狭くなってしまうため、自然分娩に差し支える場合があります。
キアリの場合も、臼蓋の変形に合わせて
大腿骨外反骨切りの方法が微妙に変わってきますので
経験豊富な医師をチョイスすることが重要です。
いずれの手術も治療期間は長いものになります。
しかし、うまくいけば一生このままもたせることが可能です。
また、決して脱臼の心配はありませんから
術前と同じ生活を続けることが出来ます。
完全な除痛ができない場合もありますが、
股関節をいたわって生活するのは人工置換した場合も同じです。
50代以前の年代で経済的、家庭環境的に可能なら、
関節温存術を第一選択にする方がベストではないかと
個人的には思っています。