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自ら進んで無能力なロシアと中国の政府

ロシア

2018年8月15日 (水)

自ら進んで無能力なロシアと中国の政府

2018年8月12日
Paul Craig Roberts

 ロシアと中国の政府は当惑している。両国は制裁戦争の切り札を全部持っているのに、それをどう活用するか全く何の知恵もないまま座視している。

 国民から欧米製消費財をロシア政府が奪いたくないことを強調して、問題を覆い隠す欧米マスコミからロシアは何の助力も得られないが、まさにそれがワシントン経済制裁がしようとしていることなのだ。

 ロシアと中国は、資本主義が勝利したと考え、アメリカ権益のためにのみ役立つプロパガンダ装置であるアメリカ新自由主義経済学を早速採用したため、ロシアと中国の政府は、ワシントンの掌中にある。

 NASAは、長年、ロシア製ロケット・エンジン無しでは機能することができない状態だ。あらゆる経済制裁や侮辱や軍事的挑発にもかかわらず、ロシア政府は、いまだに、NASAにロケット・エンジンを供給している。一体なぜだろう? ロシア人経済学者が、政府に、ロシアの発展には外貨が必要不可欠だと言うためだ。

 ヨーロッパは工場を稼働し、冬季には暖房するためにロシア・エネルギーに依存している。ところが、ロシア人経済学者が、政府に、ロシアの発展には外貨が必要不可欠だと言うために、ロシアは、ワシントンによる経済制裁に、ヨーロッパが参加したことに対して、エネルギー供給を止めない。

 マイケル・ハドソンと私が何度もご説明している通り、これはたわごとだ。ロシアの発展は、外貨取得には、全く依存していない。

 ロシア経済から利益を流出されるのにしか役立たない外国投資が必要だとロシアは思い込んでもいる。

 ロシアは、自国通貨を自由に取り引きすべきだとも思い込んでいて、ルーブルを外国為替市場での操作対象にしている。もし、ワシントンが、ロシアで通貨危機を引き起こしたいと思った場合、連邦準備金制度理事会、その傀儡の日本とEUとイギリス中央銀行が実行するのことは、ルーブルを空売りするだけで良いのだ。ヘッジ・ファンドと投機家連中も、利益を求めて参加する。

 新自由主義経済など、でっちあげなのに、ロシア人は、それにだまされている。

 中国もそうだ。

 ロシアに対する、こうしたあらゆる非難、例えば、スクリパリ親子攻撃とされるものが始まった際、プーチンが立ち上がり、こう言ったと仮定しよう。“イギリス政府は白々しいうそをついており、このウソをおうむ返しにしているワシントン政府を含むあらゆる政府もそうだ。ロシアは、このウソは極めて挑発的で、欧米諸国民を対ロシア軍事攻撃に備えさせるための宣伝攻勢の一環だと見なす。いわれのないウソの絶えざる流れや、我々の国境での軍事演習で、ロシアは、欧米が戦争を意図していると確信した。アメリカ合州国と、その傀儡の全面破壊が、その帰結だ。”

 それで、いわれのない挑発と軍事演習と経済制裁は終わるはずなのだ。

 ところが、我々が耳にするのは我々の“アメリカ・パートナー”の“誤解”というばかりで、それが更なるウソと、更なる挑発を勢いづかせるのだ。

 あるいは、より穏健な対応として、プーチンは、こう発表できたはずなのだ。“ワシントンと、その卑屈なヨーロッパ傀儡が、我々を制裁したので、我々は、ロケット・エンジンや、ヨーロッパ向けのあらゆるエネルギーや、アメリカの飛行機製造会社用チタン輸出を停止し、アメリカの貨物機と旅客機の上空通過を禁止し、ロシアで活動しているあらゆるアメリカ企業に制裁措置を行う。”

 ロシアがこれをしない理由の一つは、おそらくロシアには欧米の資金と善意が必要だというロシアの誤った考え方に加え、ロシアのヨーロッパ・エネルギー市場と、天然ガスのヨーロッパ向け輸出を、ワシントンが横取りすると、ロシアが誤って考えていることだ。そのようなインフラは存在しない。インフラ開発には数年かかるはずだ。それまでに、ヨーロッパは大量失業になり、何回かの冬に、凍えるはずなのだ。

 中国はどうだろう? 中国は、世界最大の資本を持つ企業Appleを含め多数のアメリカ主要企業を受け入れている。南アフリカが欧米のいかなる抗議も無しに、白人の南アフリカ農民に対して、しているように、中国で活動しているあらゆるグローバル企業を補償なしに、中国は国有化できるのだ。ワシントンは、中国に対するあらゆる制裁解除と、ワシントンの中国政府への完全服従を要求するグローバル企業に圧倒されるはずなのだ。

 あるいは、更に、中国は保有する1.2兆ドルのアメリカ国債全てを投げ売りできるはずだ。連邦準備金制度理事会は、国債価格が崩壊しないよう、国債を購入するためを早速印刷するはずだ。そこで、中国は国債を償還するための連邦準備金制度理事会が印刷したドルを投げ売りできるはずだ。連邦準備金制度理事会は、FED、ドルを購入するための外国通貨は印刷できない。ワシントンが、傀儡の日本とイギリスとEUの外国中央銀行に、ドルを購入するため、彼らのお札を印刷するよう命令しない限り、ドルは急落し、ベネズエラ・ボリバールほどの価値も無くなるはずなのだ。これは、たとえ各国が応じても、“欧米同盟”と呼ばれる、実はワシントン帝国であるものの内部で、大変なストレスが生じるはずだ。

 ロシアと中国は、一体なぜ、楽勝できる手を使わないのだろう? どちらの政府にも新自由主義に洗脳されていない顧問が誰もいないのが、その理由だ。エリツィン時代に、アメリカがロシアに施した洗脳が、ロシア諸機関内部で慣習化しているのだ。この箱の中に閉じ込められている限り、ロシアはワシントンにとって、いいカモだ。

 トルコは、ロシアと中国にとって、援助を申し出て、NATOから引き離す絶好の機会だ。両国は、トルコにBRICS加盟や貿易協定や相互安全保障条約を申し出ることが可能なはずだ。中国はトルコ通貨を、外国為替市場で容易に買い占められるはずだ。同じことを、イランにもできるだろう。ところが、ロシアも中国も、決然とした行動が出来ないように見える。二国いずれもトルコ同様、ワシントンから攻撃されながら、座視して指しゃぶりしている。https://www.zerohedge.com/news/2018-08-11/us-risks-completely-losing-turkey-erdogan-vows-defy-us-threats-over-pastor-brunson

 Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/08/12/the-self-imposed-impotence-of-the-russian-and-chinese-governments/

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2018年8月14日 (火)

ロシアを戦争に追いやるアメリカ経済制裁

Finian CUNNINGHAM
2018年8月11日

 今週、アメリカ合州国がロシアにしかけた新たな経済制裁の意味は一つしかない。アメリカ支配者が、ロシア経済を粉砕したがっているのだ。あらゆる定義からして、事実上、ワシントンはロシアに宣戦布告しているのだ。

 実施された経済措置は、みかけは抽象的だったり、さほど実効性がなかったりするように見える。エレクトロニクス製品の対ロシア輸出禁止、金融市場の混乱、株価下落。だが重要な結果は、アメリカ当局が、ロシア社会とロシア国民に物的損害を与えることが狙いだ。

 プロシアの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツなら確実に称賛する、軍事戦争へと変動する経済戦争だ。

 これは、今週アメリカ・インターネット・サービスが反戦ウェブサイトに対する大規模弾圧を開始したことで一層重要と思え、権力者が自分たちの無謀な戦争商売に対する、あらゆる批判や国民の認識を停止させたがっていることを示唆している。

 おまけに、最新のアメリカ経済制裁は - 2014年の、でっち上げのウクライナ紛争以来、これまで何度もあったのだが  - 手に負えない滑稽な憶測しか根拠がないのだ。全くの踏んだり蹴ったりだ。

 新たに提案した経済制裁は、イギリスに暮らす元二重スパイに対する今年初めの化学兵器攻撃とされるものでロシアに責任があると“決定”したためだとワシントンは言う。

 ロシア人工作員が致死的神経ガスを使い、セルゲイ・スクリパリと娘のユリアが毒ガス攻撃されたとされるいわゆるスクリパリ事件は、まだ証明されていないなぞだ。“茶番”だとまで言うむきもある。

 モスクワに対するイギリス政府の人騒がせな主張を立証するいかなる証拠も提示されていない。スクリパリ親子に対する毒ガス攻撃はロシアに責任があるというイギリスの主張はもっぱら、うさんくさい主張とほのめかしが根拠だ。

 今、ワシントンは、全く証明されていないイギリスの“決定”を根拠とする経済制裁を提案している -  ロシア経済を破壊することを意図した経済制裁。提案されている制裁措置は、いつもの個人が保有する資産凍結を遥かに超えている。ワシントンがしようとしているのは、ロシア経済中核の金融業務に対する攻撃だ。

 ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相が、最新のアメリカ経済制裁に対して重要な対応をしたのを不思議ではない。彼は、この制裁は“経済戦争”に匹敵すると述べた。メドモスクワは、“政治的か、経済的にか、他の方法で”報復せざるを得ないとメドベージェフは警告した。メドベージェフの調子は、情け容赦のない、いわれのない、理不尽なアメリカの行動の本性に対する紛れもない警告だった。

 ワシントンの行為を巡って、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官も、信じられない思いと不安を表明した。先月ヘルシンキでのアメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との一見して建設的なサミット後の、ワシントンによるこの最新の挑発で、アメリカは全く、あてにできなくなったと彼は述べた。

 これから発効する最初の経済制裁は、アメリカ製エレクトロニクスの対ロシア輸出に限定されている。だが、その後に来るものが厄介だ。もしロシアが化学兵器の将来の使用を止める“保障”をしなければ、そして、もしモスクワが国内で化学兵器とされるものを監視するための国際査察を受け入れなければ - 90日以内に、経済制裁の第二波が適用されると、ワシントンは言っている。

 次段階の経済制裁には、ロシア国営航空会社アエロフロートの対アメリカ飛行禁止が含まれている。ワシントンのばかげた要求をロシアが満たすことが不可能なことで、更なる経済制裁適用が不可避になる。

 国際取り引きを阻止することを狙って、ロシア金融システムを攻撃する計画の別の法案が、議会で成立しつつある。

 法案を提出した上院議員連中は、それに“地獄の経済制裁法案”と名付けた。提案されている法案の名前が全てを物語っている。“アメリカ社会をロシアの攻撃から守る法律”。この法案を推進しているロシア嫌い連中の中でも、ジョン・マケイン、リンジー・グラハム、ロバート・メネンデスやベン・カーディンらの上院議員は、その狙いに関して率直だ。彼らは施策が導入されれば“クレムリンを粉砕する”だろうと言っている。

 不幸なことに、アメリカ国民は、無知か、正気でないか、戦争での儲けのため身を売った政治家連中によって、破滅の淵に引きずりこまれつつある。三つが全部あてはまるかも知れない。邪悪にも、こうした政治家連中や、その子分のマスコミは“選挙干渉”に関する途方もない主張を巡り、ロシアを“戦争行為”で非難しているが、現実は、ロシアに対する戦争行為をしているのは連中なのだ。

 間近に迫る経済制裁を阻止するため、トランプ大統領が彼の行政権力を行使する可能性はごくわずかだ。アメリカにおける、諜報機関、議員や主流マスコミの政治状況は、反ロシア・ヒステリーで飽和している。アメリカは、国民に対する民主的責任を超えて、狂気の真っただ中にある、巨大な力を持ったひと握りの集団が支配する国なのだ。

 今週のロシアに対する、より激しい経済攻撃の発表で、既にロシア経済は急落している。ルーブルも債権も株も全て急落した。これはロシアの極めて重要な国益に対する攻撃だ。経済的バルバロッサ作戦だ。

 アメリカの計算に、社会不満やプーチン政権に対する不和の醸成があるのは確実だ。これは、アメリカが、その経済が今週、過酷な経済制裁に見舞われているイランに対し使っているのと全く同じ違法な戦略だ。

 ロシア経済が、最近発表された経済制裁を巡り、既に混乱に陥っていることからして、ロシア金融制度の基盤や世界の他の国々と貿易する自由に対して、更なるアメリカ攻撃が仕掛けられた際に与えられる損害は容易に想像がつく。

 ワシントンにとって、今や経済制裁解禁期のようだ。制裁の矢面に立っているのは、ロシアやイランだけではない。中国やカナダや欧州連合やトルコやベネズエラや北朝鮮も、“経済制裁”という名目や、間接的に“関税”という言説によって、アメリカ経済戦争でめった打ちにされている。

 ロシア側は、これまでワシントンの挑発や、実際は、無数の口実による攻撃を耐える上で、計り知れない忍耐を示している。ウクライナ内での紛争から、クリミア併合とされるものや、“独裁者を支持している”と中傷されているモスクワの道義に基づくシリア支援や“アメリカ選挙への干渉”とされるものや、他にも多々あるが、アメリカによるいわれのない攻撃としか言いようがないものに耐える上で、ロシアは途方もない量の冷静さと自制を示してきた。

 アメリカによる嘲りや不条理さに直面して、ロシアは常に、威厳ある冷静な姿勢を保ってきた。モスクワは、おそらくトランプ大統領が二国間関係に何らかの正常さをもたらせるだろうと考えたのだ。それはまぼろしだったことが明らかになった。

 ところが、今一体何が起きているだろう? ワシントンは実際行き過ぎている。ロシアの極めて重要な国益に対し、徹底的な経済戦争をしかける準備をすることで、アメリカは、その野卑な行為を全く新しい危険なレベルに進めてしまったのだ。

 狂ったアメリカ支配者は、けんか腰の態度で、世界を瀬戸際に追いやりつつある。

 これまでワシントンは、外交や対話や交渉に興味が無いことを通告してきている。ワシントンの行動様式は一つしかない - 戦争、戦争、戦争。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/08/11/us-sanctions-pushing-russia-war.html

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