ロンドンで日本人出演のミュージカル、王様と私を観てきた。渡辺謙編

＊ネタバレを含むレビューなのでご注意ください。あと、ミュージカル愛が強すぎてたまに毒吐きますのでそれもご了承ください笑＊

この夏、ロンドンで2人の日本人が大舞台に立ちました。

アメリカで上演されていた王様と私がウエストエンドで再演されたのです。

その主演を務めるのがシャム(現在のタイ)の王様役を演じる世界のナベケンこと渡辺謙さん、そして今回から側近のクララホム首相に抜擢されたのが大沢たかおさんです。

二人とも日本では知らない人はいないだろう大スターさんですが、ここロンドンではまだ新人扱い。

客席の反応や彼らの熱演を観に早速劇場へ向かいました。

初日間近に一回、公演終了間際に渡辺謙バージョン、そして週に一度しかない激レアな大沢たかおバージョンの両方を観てきました。

今日は世界のナベケン氏バージョンについて。

ロンドンの劇場のいいところは、見切れ席であれば前列でもかなりチケットが安いこと！

前から4列目なのにたったの30ポンドで買えました。

すでに舞台全体は観ているので今回はキャストを間近で見ることに集中します。

ナベケン氏演じる王様は、とにかく怖可愛いんです！

ユル・ブリンナー系スキンヘッドの強面からは想像つかない子どもっぽさ、アナから英語や聖書の事を教わってはしゃぐところなどすごいかわいいんです。

でも、2幕のシャルウィーダンスのシーンで王様がアナの腰に手を回して踊る所ではぞくっとする色気が出ます。それもまたいいギャップです。

ファンの方には失礼かもしれませんが、ナベケンさんは英語が完璧なわけではないです(もちろん普通に英語でコミュニケーションが取れるレベルに上手な方ですが)。ちょっとセリフの聞き取りが難しい部分もありました。

しかし、この役に英語のうまさは要らないなと思いました。だって、シャムの王様の母語が英語なわけないですから。だからアナに英語を教わって、気に入ったフレーズを繰り返し使うのです。エトセトラ、エトセトラなど。

英語が達者だとかえって魅力が半減するので訛ってなんぼです。

なんだろう、ナベケン氏演じる王様はその存在があればいいんです。

あのキャラクターと雰囲気はナベケン氏しか出せないです。彼のはまり役の１つと断言してもいいと思います。トニー賞にノミネートされたのは伊達じゃないです。

アナ役のケリー・オハラさんは既にトニー賞受賞しているだけあり、歌がダントツでじょうずでした。3回見ましたが常に安定感があり安心して見ていられます。透明感あるソプラノで、一聴の価値ありです。

もう1人注目したキャストはタプティム役のジョン・ナヨンさん。オランダで生まれ育った韓国系の女優さんです。

彼女が演じるのはビルマ(今のミャンマー)からシャムに贈り物として寄こされた悲劇のお姫様です。同じくビルマから派遣された学者ルンタと禁断の恋仲で、駆け落ちしようとして処刑されます。

彼女は、過去にレ・ミゼラブルのファンティーヌの役をしたことがあって1度だけ見たことがありました。その他にもミスサイゴンのキム役やノートルダムの鐘のエスメラルダ役など、イギリス、オランダそして韓国で主役級の役柄にバンバン出演しているウエストエンドの若手ホープです。

そして、海外でのミュージカル出演なんてこれまで想像もつかなかったクララホム役の大沢たかおさん。歌はなかったものの、演技がとてもよかったです。超真面目な首相役がハマっていて、英語でもその魅力は充分伝わりました。

ちなみにこの役はほとんど半裸で上着を着ているだけの衣装なので、大沢さんのセクシーな胸元が見放題でした。きっと役作りのために鍛えられたんでしょうね。眼福でした^_^

この作品は曲がいいです。ロジャース＆ハマースタインコンビによる"Shall we dance?"や "Getting know you "など、観劇後に口ずさみたくなるナンバー満載です。

そしてこれらの有名な曲以外でこの作品でさらに注目したいのは、映画版では差別的とカットされこの舞台版から追加された曲、2幕目1番最初の"Western people funny"という曲です。

これは、イギリスから来た特命大使にシャムは野蛮な国ではないことをアピールするためにヨーロッパ流のパーティーを企画した際、シャムの王妃達が西洋の輪っかドレスに四苦八苦するナンバーです。

ミュージカルやオペラ作品の中では人種間のいじりやちょっと間違った描写がありますが(蝶々夫人の東アジア圏をひとまとめにしたような勘違い着物やThe Book Of Mormonの黒人中国人いじりなんて最たるものです)、このナンバーは珍しくアジア人がヨーロッパ人をディスっています。だからなのか、映画版ではカットされたのです。

でもこの歌が復活したことである意味、人種間のディスに公平感が出ましたね笑

その観点だと人によっては好みが分かれる作品かもしれませんが私個人はそこまで気にならなかったです。

ともあれ今回舞台版は初めて観ましたが、全体的には曲もよく、笑いありロマンスあり感動ありでお気に入りの作品になりました。

大沢たかおバージョンについて、出待ちについてはまた後日！

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