感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

蟯虫 - 臨床家向け  治療

2018-02-15 | 感染症

前回に引き続きまして蟯虫に関して。今回は治療編です。日本では蟯虫に適応のある薬はコンバントリンのみである。治療は基本は2回投与法である。感染反復のときどうするか。など

 

治療

・痒み、刺激、および脱毛は対症療法で

・掻爬による肛門周辺の病変は、黄色水銀酸化物やホウ素化ゼリーなどの緩和軟膏で治療されている

 

・蟯虫にはピランテルが有効である(B).海外ではアルベンダゾールやメベンダゾールもよく使用されている (JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015

・それらの作用様式は、成体虫における微小管機能の阻害およびグリコーゲン枯渇を含む。

・肛門周囲皮膚に付着した卵からの再度の自己感染の可能性が最も高いため、治療を繰り返すことが推奨される

 

・2歳未満の患者には、これらの薬物の健康上のリスクと便益を評価する必要がある

・これら薬剤の安全性は、妊娠中の女性のために検討されていない

・感染が妊婦の負担(すなわち、体重減少、不眠症)になっている場合、治療を考慮することができるが、もし可能であれば胎児へのリスクが軽減される第3妊娠まで保留されるべき

・メベンダゾール療法中に母乳を控えなくてもよい。母乳中に排泄される薬物の量は検出レベル以下であり、臨床的に有意ではない。蟯虫に用いられる他の薬剤については母乳中排泄は分かっていない。

 

・欧米でよく使用されているアルベンダゾール あるいはメベンダゾールの 2 回投与による蟯虫症に対する治癒率は、諸文献からそれぞれ 90~100% とされている  [Expert Opin Pharmacother. 2001 Feb;2(2):267-75.]

 

・イベルメクチン50,100,150および200μg/ kgの単回経口用量で蟯虫症の90人の患者においてを試験を行い、イベルメクチンも本症に有効で,85% の治癒率であったと報告されている。  [Am J Trop Med Hyg. 1989 Mar;40(3):304-9.]

 

・日本で蟯虫に適応のある薬はコンバントリン (ピランテルパモ酸塩)のみである。  アルベンダゾール,メベンダゾール およびイベルメクチンは,蟯虫症に対して保険診療では適用はない。

・ピランテルは消化管から吸収されにくく、腸管全域の蟯虫、回虫、鉤虫(ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫)、東洋毛様線虫のいずれに対しても高濃度に効果的に作用し優れた駆虫効果を示す。

・ピランテル開発時や販売後3年間の調査にて副作用は3%程度、主なものは腹痛、頭痛、悪心・嘔吐等

 

・パモ酸ピランテルが使用されており,本薬の2回投与による蟯虫症に対する治癒率は 90~100% と報告されている

・成人は1回量5錠(50mg)、 小児は10mg/kg換算

・ピランテル経口 1 回 10mg/kgで、2 週間後にも同量を投与。 第二選択薬はアルベンダゾールかメベンダゾール  (JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015

・一般的には、コンバントリンを3回投与が勧められる。各回の投与間隔は2から3週間の間隔を置くこと(日本寄生虫学会

・ピランテルは成虫に対しては非常に有効であるが、虫卵や幼虫に対しては効果が期待できない

 

・幼虫は薬物に対して耐性である可能性がある。16日未満の発病段階の若い虫は、メベンダゾールとピランテルの両方にかなり抵抗性であることが推測。  [Kisaengchunghak Chapchi. 1985 Jun;23(1):7-17.]

・症状が2週間以上持続する場合、または細菌の重複感染の徴候が生じた場合は、フォローアップを

・駆虫治療が完了した後の再感染を評価するためフォローアップ検査を受ける必要がある。最初の一回の検査では虫卵は陰性であるかもしれない、肛門周囲の痒みや痛みが持続する場合はフォローアップの肛門部検査が必要。

 

・反復感染時は、最初の感染と同じ方法で治療する

・再発する場合は同居人も含めた同時服薬を考慮する

・2人以上のメンバーが感染した家庭で、または症状が重複している感染症が発生している家庭では、すべての世帯メンバーを同時に治療することをお勧めする

・感染が継続して起こる場合は、感染源を探して治療する必要がある。例えば家族以外に、遊び相手、学校の仲間、家の外での緊密な接触者。

・日本でもパモ酸ピランテルで難治性と判断される蟯虫症に対し,アルベンダゾールは使用する価値の高い薬剤。[Kansenshogaku Zasshi. 2011 Sep;85(5):520-2.]

 

・いくつかの症例では、蟯虫感染症に続発する若年女性の尿漏れは、蟯虫の特定の治療によって緩和されている

 

参考文献

Kansenshogaku Zasshi. 2011 Sep;85(5):520-2.

Am Fam Physician. 2004 Mar 1;69(5):1161-8.

Expert Opin Pharmacother. 2001 Feb;2(2):267-75.

Gastroenterol Clin North Am. 1996 Sep;25(3):579-97.

 

 


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